JRRCマガジンNo.348 日本複製権センター(JRRC)の新しいお仕事の紹介(クリッピング利用に関する非一任型管理の実施)

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JRRCマガジン  No.348 2023/12/7
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※マガジンは読者登録の方と契約者、関係者の方にお送りしています

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◆今回の内容
【1】川瀬先生の著作権よもやま話
【2】【12/15開催】JRRC無料オンライン著作権セミナー開催のご案内(受付中!)
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皆さま、こんにちは。

今年もとうとうあとひと月となりました。
いかがお過ごしでしょうか。

さて、今回の川瀬先生の著作権よもやま話は、
「日本複製権センター(JRRC)の新しいお仕事の紹介」です。

川瀬先生の記事は下記からご覧いただけます。
https://jrrc.or.jp/category/kawase/

◆◇◆━【1】川瀬先生の著作権よもやま話━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・日本複製権センター(JRRC)の新しいお仕事の紹介(クリッピング利用に関する非一任型管理の実施)
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1 はじめに
 JRRCでは11月開催の理事会で来年の2月から「新聞のクリッピング利用に関する非一任型管理」を実施することを決めました。メルマガの読者の中にはJRRCにおける著作権の管理方法や著作権法・著作権等管理事業法に精通している方も少ないと思います。また、前回掲載したメルマガの記事でも新たな管理方法に関する説明をしていますが簡単な記述だけにその内容を十分理解できなかった方もおられると思います。
 そこで、この場を借りまして新しい管理方法を詳しく説明させていただきます。

2 「新聞のクリッピング利用」とは
 本センターは新聞、雑誌、書籍等の言語の著作物や写真・美術の著作物の複製権等の管理を行っており、企業、団体、官公庁等における主として内部利用のための複製等に対し利用許諾を与えています。
 許諾の範囲は、権利者が行う出版等の一次利用への影響を考慮し、原則として著作物の小部分(出版物全体の30%以内又は60頁のいずれか少ない方)、少部数(1回あたり20部までの複写)又は小規模(電磁的複製された著作物の利用者が30名以内の共有)の複製等に制限しています(管理委託契約約款2条(8))。
 この場合、新聞社は、以前から企業等における新聞記事のクリッピング利用については、新聞社自身が本センターを通じてではなく新聞社が直接利用者と契約を結んでいたという経緯を踏まえ、本センターの委託の範囲から除外することができることになっています(同約款3条2項)。
 現在新聞著作権協議会加盟社及び日本経済新聞社は、この除外措置を行っており、権利者である新聞社自身が直接管理をすることになっています。
 クリッピング利用については、本センターでは、本センターの許諾範囲との競合を避けるため、「組織的・継続的・反復的に複製し、情報共有等のために組織内で利用する場合であって、一媒体の記事を同一組織又は同一部署の中でおおむね月5記事以上利用すること」と定義しています。
 具体的には、例えば広報課の職員が、自分が所属する企業等に関連する分野の記事を毎日チェックし、必要に応じて複製をして、同社の幹部や他の部署に配布又は共有する場合が該当します。同一新聞社の記事の利用頻度がかなり高いというのが利用形態の特徴です。また、一般的には複製をする部署を限定すること、複製を行う職員を限定することが要件になっているようです。
 本センターの一任型管理における許諾範囲は、企業等の非正規の職員も含めた全従業員の複製行為が許諾の対象であり、同一新聞の記事の利用頻度が高くないような利用を対象としています(参考:本センターが管理委託を受けている他の出版物(雑誌、書籍、専門新聞等)はこのような除外措置を行ってはおりませんので、利用頻度に拘らず、上述の小部分・少部数・小規模の範囲で複製が可能です)。
 したがって、本センターが定めている一律の統一的な使用料体系には馴染まず、許諾の範囲等の条件、使用料の計算方法等は各社が独自に定めることになっています。

3 「非一任型管理とは」
 著作権等の管理事業を規制している法律は著作権等管理事業法といい、同法2条では規制対象である「著作権等管理事業」について定義されています。その内容ですが、要約して言いますと、「管理委託契約」に基づき信託、取次ぎ又は代理の方法によって、利用の許諾等の管理を行う業務のことをいいます。管理方法には「媒介」による管理という方法もありますが、管理事業法の前身の法律であった仲介業務法は規制対象でしたが、媒介者は当事者間の契約交渉の助言をするだけであって、最終的には当事者間が合意した条件で契約を行うので、そこに不正行為等が行われる余地はほとんどなく規制の必要がないことから規制対象から外されています。また、同法上「管理委託契約」の定義規定の中で、利用の許諾に当たって、委託者自身が使用料を決定する内容の契約は除外されています。除外されているということは、規制対象にならないということですので、同法による登録、届出は不要ということになります。
 この形式の管理を一般に「非一任型管理」と呼んでいます。非一任型管理がなぜ規制対象から外されているのかといいますと、一般に著作権者と利用者が著作物の利用契約を行う際に最も重要なのは使用料の額を決めることです。一任型管理はこの使用料の額の決定権を管理事業者に一切任せることになりますので、管理事業者がこの立場を利用して不当な使用料の設定を行う等の可能性があるところから規制対象にしています。一方、非一任型管理の場合、使用料の額は当事者間の話し合いの中で決まるところから、媒介による管理の場合と同様、問題が生じる可能性は低いことから規制の対象外となっています。
 非一任型管理の実例として、例えば、管理事業者である日本音楽著作権協会(JASRAC) では、音楽の映画録音に関する指値取引という契約形態があります。音楽の実務の世界では、音楽の録音権は、メカニカル・ライツ(レコード録音権)とシンクロナイゼーション・ライツ(映画録音権)の2種類に分かれています。レコード録音権についてはどの国においても原則として一任型管理が行われていますが、映画録音権については音楽の持つイメージと映画の持つイメージのマッチングが必要なため、わが国以外の国では権利行使を管理事業者に委ねることはありません。このような実態を踏まえ、JASRACでは、音楽を映画等の動画の挿入曲にする場合や既存の映画をパッケージソフトにする場合等については、特に外国曲を中心に、JASRACが利用の許諾を出す際に、あらかじめ利用者と著作権者である音楽出版者が協議を行い、そこで合意を得た使用料額をJASRACが利用者から徴収し分配するという形式の管理が行われています。

3 本センターが新聞のクリッピング利用について契約代行を実施する理由
 本センターが、契約代行を実施する理由には2つあります。
 最初の理由は、1つの窓口で複数の権利者との契約ができるいわゆるワン・ストップ・ショップ制度を実現することにより利用者の利便性を向上させることです。
 ワン・ストップ・ショップ制度については、コンテンツの利用促進との関係で政府の知的財産推進計画でもその充実と拡大を推奨しています。本センターには、契約相談が多数寄せられますが、その中にはクリッピング利用に関するものも少なくありません。この場合、本センターの担当者は本センターとの契約のほかに、各新聞社とクリッピング利用に関する契約が必要なこと、当該契約については本センターでは扱っていないことを伝え、各新聞社の連絡先を紹介します。この場合、各新聞社に連絡をしたかどうかは分かりませんし、複数の新聞社の記事をクリッピング利用する場合、契約事務が煩雑であると感じる利用者も多いと思います。
 したがって、本センターがクリッピングに関する契約代行することによって、複数の窓口と契約交渉をする必要がなくなるため、利用者の利便性は遥かに向上し、契約件数の増加も見込まれると考えています。
 もう一つの理由は、新聞社におけるクリッピング契約に関する事務の合理化に貢献することです。
 特に地域の新聞社においては、クリッピング利用について今後拡大又は実施したいと考えているところが多いにもかかわらず、人材確保が難しい、実施したくてもそのノウハウがない等の課題を抱えているところが少なくありません。
 確かに、既存の契約や直接新聞社に契約相談があったものを含め全ての契約について本センターに契約代行を任せれば、新聞社は使用料の額を決めることだけに専念すればいいので、契約担当者を他の業務に従事させることも可能になります。また、これからクリッピング契約の実施を考えておられる新聞社については、使用料の額やその算定方法についての相談にも応じますので、新しいビジネス展開を早期に行うことができ、ひいては新聞社の収入増にもつながると考えています。

4 許諾実務の実際
 本センターでは、今年度から契約に関する新システムが稼働しています。新システムでは、利用者が本センターのシステムを通じて必要な情報を入力していただくと使用料の額の計算、見積書の提示、契約の締結、請求書の発行、入金確認等の一連の手続きが1つのシステムを通じて可能となっています。
 クリッピング契約についてもこのシステムに連動させることとしており、例えば本センターと契約のある利用者が、クリッピング契約も併せて結びたいと思えば、当該システムを通じて新聞社を指定すると、必要な情報を入力する場面に変わります。この場合、新聞社ごとに必要な情報は変わりますので、入力画面は仮に50社から受託していれば50種類の画面になります。また、使用料の額を算定するための計算方法も異なりますので、これも新聞社ごとに用意することになります。もちろん新聞社によっては、見積書の作成は新聞社自身が行なうので、必要な情報だけもらえばいいというところもあるのでそれにも対応します。
 一般的には各社ごとの計算方法により作成した見積書(案)は新聞社に転送されますので、これでよければ承諾を通知し、諸般の事情により使用料額の修正が必要な場合はそれを修正したうえで本センターに通知していただければ、その額が他の利用条件とともに利用者に提示されます。契約成立後は、通常の使用料と同様に請求書の発行、入金確認が行われ、入金された使用料は原則四半期ごとに手数料(当面15%)を差し引いたうえで新聞社に分配されることになります。
 なお、利用者の事情により、特定の部署だけでしか新聞の複製を行わないので、JRRCとの契約は必要でないという場合にも対応する予定です。
 このように、本センターで構築中の契約システムは、使用料の額は新聞社が決めるという非一任型管理にあわせたシステムです。もちろん使用料の計算方法等について新聞社の同意なしに同業他社や利用者に開示されることはなく、安心してお使いいただけます。

5 おわりに
 この非一任型管理については、既にいくつかの新聞社と委託契約についての交渉を行っており、そのうち数社については契約を前提とした協議を実施中です。著作権管理の契約部門が整備されている全国紙等については、本センターに契約代行を行わせる必要性は低いかもしれませんが、契約部門があまり整備されていない新聞社にとっては、契約管理の多くの部分を本センターに任せることにより、実務の合理化・省力化につながり、加えて収入増にもつながることになりますので、各新聞社においては是非委託契約についてご検討をお願いします。
 なお、ご不明な点等がございましたら本センター事務局へお気軽にご相談ください。

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【2】【12/15開催】JRRC無料オンライン著作権セミナー開催のご案内(受付中!)
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この度、日本複製権センターは主に官公庁の方を対象とした、「官公庁向け著作権セミナー」を開催いたします。第3回開催のテーマは『新聞等の著作権保護と著作物の適法利用』です。
著作権のより一層の保護を図るために、著作権の基礎知識の普及と複製を行う際に必要となる契約についてご案内させていただきます。なお、本セミナーは官公庁の方に限らずどなた様でもご参加いただけますので、多くの皆様のご応募をお待ちしております。
※第2回開催の官公庁向け著作権セミナー(四国地方)の内容と一部重複いたしますので、予めご了承ください。 

★開催要項★
日 時 :2023年12月15日(金) 14:00~16:00
会 場 :オンライン (Zoom)
参加費 :無料
主 催 :公益社団法人日本複製権センター
参加協力:静岡新聞・中日新聞・中部経済新聞・岐阜新聞・伊勢新聞
詳しくはこちらから

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