JRRCマガジンNo.347 官公庁のお仕事とJRRC

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JRRCマガジン  No.347 2023/11/30
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※マガジンは読者登録の方と契約者、関係者の方にお送りしています

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◆今回の内容
【1】川瀬先生の著作権よもやま話
【2】【12/15開催】JRRC無料オンライン著作権セミナー開催のご案内(受付中!)
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皆さま、こんにちは。

草木の露も霜へと変わり、冬の気配がいよいよ濃くなってまいりました。
いかがお過ごしでしょうか。

さて、今回の川瀬先生の著作権よもやま話は、
「官公庁のお仕事とJRRC」です。

川瀬先生の記事は下記からご覧いただけます。
https://jrrc.or.jp/category/kawase/

◆◇◆━【1】川瀬先生の著作権よもやま話━━━
・官公庁のお仕事とJRRC
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1 はじめに
 公益社団法人日本複製権センター(JRRC)は、著作権の保護と利用の円滑化を図ることを使命として、多くの権利者様に権利行使の委託をお願いすると同時に、多くの利用者様に著作物を適法に利用していただくよう本センターとの契約をお勧めしています。
 昨年度から、JRRCの第四次三か年計画を実施していますが、その中で官公庁様の契約促進に力を入れていくことにしています。
 官公庁については、私も国家公務員として文化庁等で長く勤務していましたのでよくわかりますが、官公庁の所管業務について幅広い知識を入手するとともに、関連する時事の報道についても常に把握しておくことが必要です。その意味で、新聞、雑誌、書籍等からの複製も相当行われています。
 JRRCとの契約件数に占める官公庁の割合は一定程度ありますが、国、地方公共団体、独立行政法人等の団体数と比べると、まだまだ契約数は多いとはいえません。
 この理由はいくつかあると思いますが、その一番の理由は、JRRCとその業務の内容がまだよく知られていないことだと思います。
 デジタル・ネットワーク社会が進む中で、官公庁も民間と同様に著作権に関する関心が高まってきています。官公庁内における新聞等の複製や公衆送信について権利者の許諾が必要であるとの認識はどこの官公庁でもあると考えます。ただし、そういう認識があったとしても、個々の権利者に許諾を求めるのは煩雑であり、職員にそのような手続きを強制することは事実上無理な話です。つまり、そこで話が止まっているのではないかと考えています。
 この問題は、JRRCに連絡をして契約を結べば一定程度解決できるのですが、JRRCの知名度が低いために、そこまで考えが至らないということだと思われます。
 本稿では、官公庁の複製等に関する著作権制度の解説、官公庁等をめぐる最近の紛争等の動向、最後に官公庁向けの著作権セミナーの開催等の契約促進活動について説明をします。

2 官公庁における権利者の許諾が必要な行為と権利制限の解説
 官公庁か民間かにかかわらず、業務のために著作物を複製等するのは権利者の許諾が必要です。従業員個人が、執務の参考資料として自分の判断で複製する場合も、個人的又は家庭内等の限られた範囲内での複製を権利制限の対象とした「私的使用のための複製」(著作権法30条)には該当せず、権利者の許諾が必要です。これは通説(注1)ですし、判例(注2)も同様ですので疑いの余地はありません。
(注1)著作権審議会第4小委員会(複写複製問題)報告書(1976(S51)年)
「第2章1私的使用のための複写複製(1)著作権法制」参照
(注2)舞台装置設計図事件東京地裁判決(1977(S52)年7月22日)等多数
 このように民間における業務用利用の場合は、通常権利者の許諾がいる行為ですが、官公庁においては、立法又は行政のための著作物の利用が権利制限の対象となっています。

(裁判手続等における複製)
第四十二条 著作物は、(略)立法又は行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において、複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
(注)著作権法改正により2024.1から複製に加えて公衆送信も可能となります。

 この行政目的については、「行政庁がその所管事務遂行に関し国家意思等を決定行使するうえにおいて必要な場合をいいます。したがって、単に官公職員の執務参考資料として複製することは認められず、その著作物を複製しなければ立法又は行政の目的を十全に達成できないような場合であることを要します。」と説明されています。
出典 加戸守行著「著作権法逐条講義」(著作権情報センター、2021)366頁
 上記の著書の著作者である加戸氏は現行法の起草者ですが、権利者に与える影響や民間とのバランスを考慮すると、著作権法47条は厳格に解釈すべきであるとの考えであり、私も同感です。
 なお、上記の42条の条文の(注)でも書いてあるように、前の通常国会における著作権法の改正により、来年の1月から、公衆送信についても権利制限の対象となりますが、その改正の解説において、次のような整理が行われています

「クリッピングサービス等既存ビジネスを阻害するような、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」には、本条による公衆送信等はできず、原則通り著作権者等の許諾が必要となります。」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/r05_hokaisei/(文化庁HPより)

 これは、仮に上記の行為が42条の形式的な要件に合致するとしても、42条の但書から判断して、42条の適用はないので権利者の許諾が必要という意味です。

3 最近の紛争例
 官公庁等における著作物の複製等に関する紛争で裁判になったものや裁判までには至らなかったものの社会問題になった事例も多くあります。官公庁は、コンプライアンスや説明責任が民間よりも強く求められる機関ですので、そのような社会問題を起こすことはできるだけ避けなければなりません。いくつかの事例を紹介します。

事例1 社会保険庁LANシステム事件判決(東京地裁2008(H20).2.26)
 社会保険庁(現日本年金機構)のLANシステム(電子掲示板)に権利者の雑誌記事を複製し、社会保険庁内部部局、施設等機関等に公衆送信(送信可能化)を行った行為を著作権侵害と認めた。また、同庁は、電子掲示板への複製は行政目的の利用であると主張したが、多数の人に公衆送信をする目的で行う複製は42条1項の適用外として退けた。

事例2 首都圏新都市鉄道イントラネット事件判決(知財高裁2023(R5).6.8)
 同鉄道会社が、複数の新聞社に無断で、同新聞の記事を同鉄道会社のイントラネットに複製又は送信可能化して社員の閲覧に供したことは、当該新聞社の複製権及び公衆送信権を侵害すると認めた。

事例3 環境省における新聞、雑誌等の無断利用事件(読売新聞記事2022(R4).10.24))
 環境省において、全国紙、地方紙、週刊誌等91媒体の記事を権利者に無断でメール送信したとして同省が発表。詳細は調査中とのこと。

事例4 松山市において愛媛新聞の記事の無断利用事件(愛媛新聞記事2023(R5).2.17)
 松山市において、愛媛新聞の記事をPDF化し、他の部署からもアクセス可能な状態で保存していた。同市は改善の必要を認め同紙と協議中とのこと。

4 JRRCにおける契約促進に向けての施策
(1)官公庁向け著作権セミナーの開催
 これまで、著作権制度の内容を詳しく解説し、本センターの管理業務へのご理解を促進するための一般向けの著作権セミナーを年間4回(初級2回。中級2回)行っています。また、社会人に加えて学生も対象にした大阪工業大学知的財産学部との共催の著作権セミナーも年1回開催しています。さらに、不定期ですが契約者や契約を検討中の機関の要望を踏まえて、当該機関向けの特別な著作権セミナーも実施しています。
 今年度から、これらのセミナーに加えまして、契約相談も兼ねて官公庁向けの著作権セミナーも実施しています。このセミナーは地域ごとに開催しており、これまで東北地区、四国地区を対象としたセミナーを実施しました。また、本年度は東海地区、その他の地区は来年度に実施する予定です。
 この官公庁セミナーについては、当該地区の地方紙の参加・協力を得て、セミナー実施の広報をお願いするとともに、セミナーの講義についてもご協力いただいております。
 なお、このセミナーは地区ごとに開催していますが、参加者に関する制限はありませんので、誰でも参加できます。

(2)クリッピング契約に関する非一任型管理の開始
 本センターでは、官公庁内における小部分、少部数又は小規模の複製について権利を管理しており、新聞記事のクリッピング利用(新聞記事を組織的・継続的・反復的に複製する利用方法のことをいう)については、個々の新聞社が管理することになっています。     
詳細については次のサイトを参照 https://jrrc.or.jp/contract/scope/#anc02
 しかしながら、特に地方紙を中心にして新聞社によっては人手不足等により充分な管理ができないところもあります。そこで本センターでは、来年の2月から、著作権管理の経験を生かして、新聞社の希望により、クリッピング契約の代行を行うことにしております。管理形態としては非一任型管理ですので、使用料の額については個々の新聞社に決めていただきますが、その他の手続きについては本センターが代行することになります。
 現在、本センターへの委託を希望しておられる新聞社は数社ですが、委託者数が増えますと、契約を希望される官公庁等は、本センターが提供するシステムを通じて複数の新聞社とオンライン契約が可能になりますので、利便性は遥かに向上することになります。

(3)許諾範囲の見直し
 本センターでは、利用者の利便性を向上させるため、現在委託契約約款や使用料規程の改定を検討中です。例えば、かねてより利用者側からの要望があった、許諾範囲である「少部数又は小規模」の部数又は共有人数の拡大や電磁的に複製したものの保存年限の拡大等について関係の権利者と協議を行っています。

(4)その他
 官公庁向けに限らず、週一回発行のメールマガジン、本センターのHPの内容の充実を図るとともに、著作権相談や契約相談にもより一層力を入れていきます。

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【2】【12/15開催】JRRC無料オンライン著作権セミナー開催のご案内(受付中!)
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この度、日本複製権センターは主に官公庁の方を対象とした、「官公庁向け著作権セミナー」を開催いたします。第3回開催のテーマは『新聞等の著作権保護と著作物の適法利用』です。
著作権のより一層の保護を図るために、著作権の基礎知識の普及と複製を行う際に必要となる契約についてご案内させていただきます。なお、本セミナーは官公庁の方に限らずどなた様でもご参加いただけますので、多くの皆様のご応募をお待ちしております。
※第2回開催の官公庁向け著作権セミナー(四国地方)の内容と一部重複いたしますので、予めご了承ください。 

★開催要項★
日 時 :2023年12月15日(金) 14:00~16:00
会 場 :オンライン (Zoom)
参加費 :無料
主 催 :公益社団法人日本複製権センター
参加協力:静岡新聞・中日新聞・中部経済新聞・岐阜新聞・伊勢新聞
詳しくはこちらから

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