JRRCマガジン第50号(グーグルブック訴訟の顛末)

山本隆司

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   JRRCマガジン No.50 山本隆司弁護士の著作権談義
                 第41回「グーグルブック訴訟の顛末」
                                2016/3/22配信
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皆様、こんにちは。
JRRCメルマガ担当です。

山本隆司弁護士の著作権談義
『第41回 グーグルブック訴訟の顛末』
をお送りいたします。

いっとき、クラスアクションの和解案が日本へも影響が及んだ「Google Books訴訟」。
その後について、山本先生の独自の観点でお話しいただいています。

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山本隆司弁護士の著作権談義 第41回 グーグルブック訴訟の顛末

かつて世間を騒がせたグーグルブック訴訟にやっと決着がついた(?)ので、これま
での展開を振り返りながらご紹介したいと思います。
グーグルは多くの大学図書館と提携して、その蔵書をスキャンしてデジタルデータ化
したものをデータベース化し、このデータベースを使って公衆にブック検索サービス
を提供しています。公衆がブック検索を行いますと、検索結果はスニペット(抜粋)
表示されます。また、このデータベースを情報解析(コーパス)にも使っています。
 グーグルがスキャンしてデジタルデータ化する行為とデータベースに蓄積する行為
が複製権の侵害に、これを検索サービスとしてスニペット表示で公衆に提供する行為
およびスキャンしたデジタルデータを大学図書館に引き渡す行為が頒布権(日本の公
衆送信権を含む)の侵害に、該当するかが問題となります。
 2005年に、米国作家協会らは、グーグルに対して、著作権侵害訴訟を米国ニューヨ
ーク南部地区連邦地方裁判所(「地裁」)に提起しました。この訴訟は、ミシガン大
学の図書館の蔵書の著作権者全員を原告とする集団訴訟(クラス・アクション)とし
て提起されました。なお、著作権の専門家から見れば、被告にはフェア・ユースが成
立し、原告には勝ち目のない訴訟でした(拙稿「米国グーグルブック検索訴訟の和解
が持つ意味」情報管理2009年10月号405頁)。
 2008年10月に原・被告間で和解が成立しました。この和解の時点で、原告集団の範
囲が、ミシガン大学図書館の蔵書の著作権者から、およそ地球上で出版されている書
籍に対してアメリカ法上著作権を持っている人すべてにまで、極めて広い範囲に拡大
されました。そのため、2009年1月に和解案が公表されてから、世界中で大騒ぎになり
ました。世界中の関係者から問題点を指摘する意見が裁判所に提出されました。やっと
2011年3月22日になって裁判所は、当事者が当該集団の利益を正当に代表していないな
どとの理由で、和解案を認可しないとの決定を下しました。そこで、原告は、原告集
団の範囲を大幅に縮小した上で、訴訟を継続しました。
 これを受けて、2013年11月15日に、地裁は、フェア・ユースの成立を認めて原告の
請求を棄却する判決を下しました。原告からの控訴を受けて、第2巡回区連邦控訴裁判
所(「控裁」)は、2015年10月16日、フェア・ユースの成立を認めて、地裁判決を支
持し、控訴を棄却する判決を下しました。
 フェア・ユースの法理を規定する米国著作権法107条は、その認定において、四つの
要素(①使用の目的および性質、②著作物の性質、③使用の量および実質性、④著作
物の市場または価値に対する使用の影響)を考慮することを規定しています。しかし、
これまでの裁判例を見ると、①使用の目的および性質について「トランスフォーマテ
ィブ・ユース」(transformative use)と認定された事案においては、フェア・ユー
スの成立が否定されたものはないようです。というのは、トランスフォーマティブで
あると認められるためには著作物の鑑賞価値の利用を目的にしないことが必要である
ので、その評価においてすでに第3要素および第4要素に対する評価をかなりの程度
取り込んでいます。また、第2要素はフェア・ユースに決定的ではないからだと思わ
れます。
トランスフォーマティブ・ユースは、著作物の鑑賞価値を利用しない行為をいいます。
控裁は、次のように、グーグルの行為がトランスフォーマティブ・ユースに当たると
認定しました。まず、データベースに蓄積する行為については、検索および情報解析
という原告著作物の持つ機能とは異なる機能を目的とする行為であるから、トランス
フォーマティブ・ユースであると認定しました。また、かかるデータベースを作るた
めのスキャン(デジタルデータ化)行為も、トランスフォーマティブ・ユースのため
の行為ですので、トランスフォーマティブ・ユースです。
つぎに、控裁は、検索サービスとしてスニペット表示で公衆に提供する行為について
は、スニペット表示は検索者が探しているものかどうかを判断するに足りる程度の表
示であるが検索された原告著作物に代替する目的を持つものではないので、トランス
フォーマティブ・ユースであると認定しました。
最後に、控裁は、被告が営利目的であることはトランスフォーマティブ・ユースにつ
いてフェア・ユースの成立に影響しないと判示しました。
 以上のように被告の行為をトランスフォーマティブ・ユースであると認定した上で、
第2要素ないし第4要素を検討した上で、フェア・ユースの成立を認めました。
以上

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■お問合せ窓口
   公益社団法人日本複製権センター(JRRC)
     ホームページの「お問合せ」ページからアクセスしてください。
       ⇒ http://www.jrrc.or.jp/inquiry/

■編集責任者
   JRRC副理事長 瀬尾 太一   
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