JRRCマガジンNo.367 JRRC特別執筆 イラク駐在手記 Captain Majid~キャプテン翼がつないだ日本とイラクの絆~

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JRRCマガジン No.367    2024/4/25
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◆今回の内容
【1】JRRC特別執筆 イラク駐在手記 Captain Majid~キャプテン翼がつないだ日本とイラクの絆~
【2】2024年度著作権講座初級オンライン開催について(無料)本日受付開始!
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皆さま、こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。

今日4月25日は「歩道橋の日」
1963年4月25日に、日本で初めての歩道橋が大阪で完成したことから制定されたそうです。

さて、JRRCマガジンでは著作権に関連した記事をお送りしてまいりましたが、今回は番外編ということで、当センター事務局長 林のイラク駐在手記をお届けいたします。

◆◇◆━【1】JRRC特別執筆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 イラク駐在手記 Captain Majid~キャプテン翼がつないだ日本とイラクの絆~
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                     JRRC事務局 林宏之

 皆さんこんにちは。JRRC事務局長の林です。2022年にJRRCに転職するまで(独)国際協力機構(JICA)に22年余り勤務した中で、イラク向けの仕事もし、駐在も経験しましたので、その時のことを思い出しながら投稿いたします。

【イラク戦争直後の復興支援(2004年頃)】
 タイトルの”Captain Majid”(キャプテン・マージド)は、キャプテン翼のアラビア語での呼び名です。イラクはサッカーの盛んな国で、日本との対戦では1993年の「ドーハの悲劇」があまりにも有名ですし、先日のアジア杯でも日本を破っていますよね。
 そんなイラクにかつてキャプテン翼が描かれた給水車が日本から贈られたことをご存じでしょうか?
 話は2004年まで遡ります。日本は2003年のイラク戦争で疲弊したイラクの復旧・復興支援を始め、イラク南部ムサンナ州の州都サマーワを拠点に陸上自衛隊イラク派遣部隊が現地で様々な支援を行いましたが、多くの支援プロジェクトのひとつが26台の給水車を現地に届けるものでした。給水車の写真と当時の様子は、今でも外務省のホームページ(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/iraq/renraku_j_0412a.html)で確認いただけますが、これは高橋陽一先生と集英社さんから特別に許諾をいただき実現したものです。
 この給水車はとても好評で、盗まれたり、壊されたりすることなく市民に貴重な水を届けることができました。当時はこれに続く支援を検討していたので、どうしたら復興支援のために贈った機材等が攻撃の対象にならずに現地の人々に役立つのか考える中で、とても印象的な支援案件でした。

【イラク駐在といわゆる「イスラム国」(IS)の侵入(2014~2016年頃)】
 2004年当時、多くのイラク復興支援プロジェクトに携わっていた縁もあり、2013年11月から2年余りイラク駐在を経験しました。
 駐在開始から半年が過ぎ、首都バグダッドとイラク北部のエルビル(クルド人自治区の主都)で過ごす生活と戦後の復旧期から復興期にシフトした仕事にも慣れてきた2014年6月、いわゆる「イスラム国」(Islamic States(IS)、現在では「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)と呼ばれるイスラム過激派組織)がイラク北部や西部に侵攻しました。破竹の勢いでバグダッドやエルビルに向かって侵攻してくるIS戦闘員の姿が連日ニュースに流れ、その支配地域は急速に拡大していきました。
 ISの最盛期にはバグダッド、エルビルともに西方50km地点まで侵攻し、次はいよいよバグダッドやエルビルでも戦火を交えるのかという状況でした。当時はエルビルのオフィスにいましたが、ある日の夕方、仕事を終えて宿泊先であったホテルに戻る途中にエルビル市民が車の屋根にベットのマットレスを括りつけて市外へ避難する様子を目の当たりにした時には、このままこの地に留まりIS戦闘員に捕まったらどうなるのだろうか、その場で殺されるのか、それとも人質にされ布袋を頭に被されてどこかに連れていかれるのだろうかといろいろと考えました。
 もちろん、イラクでの勤務は民間軍事会社(PMC)に護衛してもらう生活でしたので、車もありますし、護衛用の銃を持ったPMCのスタッフが守ってくれますので、いざとなればエルビルからひたすら東に逃げて、イラン国境まで辿り着けばなんとかなるだろうとは思っていましたし、エルビル脱出のための訓練もしていましたので、絶望感や恐怖感はなかったのですが、それでも漠然とした不安を抱えて過ごしていたことを10年近く経ったいまでも鮮明に覚えています。
 ISによるイラク侵攻は、その後米軍を中心とする有志連合がイラク治安部隊等を支援し、連日の空爆等を行ったこともあり徐々に勢いを失い、2017年12月には当時のアバーディー・イラク首相が勝利宣言を行うことになりますが、私が駐在していた期間は常に緊急事態を考えながら過ごす毎日でした。
 こうした日々の中でどのような仕事をしていたか、その一端をお伝えします。
 当時は総務・経理・安全等の管理部門と事業部門の一部を管理職として所掌していました。管理部門としては、いの一番が安全管理であり、IS侵攻に伴い、イラク国内で活動されていた関係者の国外退避オペレーションを行いました。このオペレーションは後日国外退避した関係者をどのようなタイミングでイラクに戻すかというオペレーションと合わせて駐在期間を通じて四六時中対応を迫られたものでした。
 その仕事のひとつが戦況の把握であり、戦争研究所(Institute for the Study of War: ISW https://www.understandingwar.org/)のWebsiteで日々更新される”Iraq situation report”を見て、イラク国内のどの地域でどのような戦闘が行われているかを確認し、民間軍事会社から得られる情報を整理してどうすればよいかを考えていました、”Iraq situation report”には犠牲者に関する情報もあり、毎日増えていく死傷者数、特に女性や子どもたちが犠牲になっている情報に触れるたびに、復興支援のために駐在しているにもかかわらず何もできない無力感にも苛まれました。
 また、イラクでの日常は行動制限が厳しく、決められたところ以外は行くことができません。バグダッドでは事務所も宿泊先も同じところでしたので、その敷地内から出ることはできず、エルビルではそれよりは少しましではありましたが、基本的にはホテルとオフィスの往復ですべて警護者の同行が必須でした。
 携帯電話やスマホ(いかなる状況でも通信を確保するため個人用も含めると全部で3台を常に持ち歩いていました)には昼夜関係なくショートメールやメールで安全情報や同僚が先方省庁等との協議のために外勤している際の定時連絡等が入ります。特に定時連絡は速やかに確認しなければならず、たとえ重要な打合せ中でも失礼して確認するのが当たり前、夜中でも起きて確認するのが当たり前というのがイラク流でしたが、日本に戻ってからもスマホが鳴ると反射的に見てしまう習慣が抜けず、一緒にいる方に申し訳ないなと思うことも多々あります。
 そんなストレスフルな日々でしたが、一緒に働いていたイラク人のスタッフや警護スタッフはみなフレンドリーでしたし、外勤先で出会うイラクの人々も親日的な方が多かったことが救いでした。バグダッドの空港で「あなた日本人なの?一緒に写真を撮りましょう」と言われ、こんなおじさんと写真を撮ってなにになるのだろうなと思いつつも応じたこともありましたし、「日本の漫画やアニメが大好き、だから日本が好き」と言ってもらえることも何回もありました。実際、エルビルのマーケットにセキュリティ調査に行った際には、様々な日本のキャラクターを目にし、”Captain Majid”の他にも、NARUTO、ハローキティなどが人気だったことを覚えています。
 こうした日本への好感は、上述したキャプテン翼の例に漏れず、万が一の時に守ってもらえる動機のひとつにもなり得ますので、安全管理上とても重要な意味を持ちます。
 当時は将来著作権に関係する仕事をすることになるとは夢にも思っていませんでしたが、日本のマンガやキャラクターの影響力の大きさを実感した出来事であったなという思いとともに、自分の身は警護スタッフだけでなく、日本のソフトパワーにも守られていたのだなと改めて実感しました。

防弾ベスト

テロで炎上した車両

爆撃されたバース党本部

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【2】2024年度著作権講座初級オンライン開催について(無料)本日受付開始!
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***本日受付を開始いたしました!***
今年度最初の著作権講座(初級)を5月22日(水)にオンラインで開催いたします。
参加ご希望の方は、著作権講座受付サイトより期限までにお申込みください。
★開催日時:2024年5月22日(水) 13:30~16:35★
プログラム予定
13:30~15:05 第1部 著作権制度の概要
15:05~15:15 休憩
15:15~15:25 JRRCの管理事業について
15:25~16:35 第2部 表現とデータ・アイデアの利用の境界について
詳しくはこちらから
締 切:2024年5月16日(木) 18:00

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