JRRCマガジンNo.257 Chapter4. 著作権の保護①(著作物)

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JRRCマガジン  No.257 2021/11/18
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◆今回の内容
【1】白鳥先生のアメリカ著作権法のABC Chapter 4. 著作権の保護①(著作物)
【2】12月8日開催 著作権講座中級(オンライン)のお知らせ
【3】日経紙等利用許諾の申込みについて
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みなさまこんにちは。

本日のメルマガは、白鳥先生のアメリカ連邦著作権法のABCの続きです。
白鳥先生の文章は、著作権制度に精通していない方にとっても、非常に
わかりやすく最後まで一気に読んでいただけるのではないないでしょうか。

連載は↓こちらからもご確認いただけます。
⇒https://jrrc.or.jp/category/shirotori/

◆◇◆アメリカ著作権法のABC━━━━━━
Chapter 4.  著作権の保護①(著作物)
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4.1 イントロダクション
今回から、「アメリカ著作権法のABC」の「ABC」に引き続き、「D」(Detail:ディテール)に入ってまいります。
Dパートは、4回に分けて行いますが、記念すべき(?)その1回目となる今回は、「著作物」について取り上げます!

4.2 アメリカ連邦著作権法には「著作物」の定義規定はない
日本の著作権法は、まず第2条で定義規定を置いており、その一番初めに出てくるのが「著作物」です(2条1項1号)。「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」という例の規定ですね。
他方、アメリカ連邦著作権法は、最初の条文(101条)で、様々な用語の定義を定めています。そこで、ご一緒に、この規定を眺めてみることにしましょう。
最初に登場する用語は、“anonymous work”ですね。「anonymous=無名、作者不明」ということですから、「確かに、『不明』なんだから、真っ先に定義規定が必要なのかもな…」なんて余計な妄想をしつつ順番に読み進めてみると、何のことはない、単にABC順で定義が並んでいることが分かります。
しかし、101条の定義規定を順に読み進めても、ズバリ「著作物」を定義する規定は見当たりません。しいて言えば、“work“という用語が、著作物に関係しそうだということは想像がつきますが、“work” 自体の定義は見当たりません。冒頭の“anonymous work”についても、101条で書かれている定義の内容は、“work”についてではなく、実質的に、“anonymous”についての説明となっています。
そこで、半分あきらめモードで目を泳がせていると、次の条文(102条)にたどり着きます。これは、“Subject matter of copyright : In general“という見出しの下、著作権が及ぶ対象について定める規定です。ここにヒントが詰まっていそうですね。そこで、102条(a)を読んでみると、「著作権の保護は、本編に従い、オリジナルなworks of authorship であって、有形的な表現媒体に固定されたものに及ぶ…」とあります。
したがって、この規定を踏まえると、どうやら、“work of authorship”というのが、著作物に当たることが分かります。とはいえ、ここにも定義が置かれているわけではありません。語感からは、「著作者がつくったもの」ということかな、と想像できますが、それにしても、「著作者」の定義も見当たりません。
ただ、アメリカ連邦著作権法は、アメリカ合衆国憲法の「特許・著作権条項」を根拠としています(→Chapter 1で取り上げました!)。同条項には、「著作者」(Authors)や「著作」(Writings)といった文言が登場しますので、それらが意識されていることは、理解できます。
他方、102条(a)の規定は、そのような「著作物」(works of authorship)について、著作権により保護される要件として、「オリジナル」と「表現」と「固定」を求めています。つまり、「著作物」であり、かつ、「オリジナル」「表現」及び「固定」の要件を満たすものが著作権により保護される、ということです。これに対して、日本の著作権法の場合は、そもそも「創作的(に)表現」という要件を満たさなければ「著作物」とはいえず(2条1項1号参照)、「著作物」でなければ著作権の保護はありません(2条1項2号及び17条参照)。つまり、言ってみれば、「著作物」という入れ物の「中」に、「創作性」「表現」といった保護要件が入っているのが、日本法の捉え方です。
逆にいえば、アメリカ法の場合は、著作権の保護要件について、「著作物」という入れ物の「外」に置く考え方です。ただ、これですと、アメリカ法における「著作物」という入れ物がどれくらい大きいのかは、いまいち分からないままですね。
ただ、ない物ねだりをしても始まりません。また、重要なのは、やっぱり、カタチよりも中身ではないでしょうか!?・・・というわけで、中身(著作権の保護要件)について、次に見ていくことにしたいと思います!

4.3  著作権の保護要件
(1)「オリジナル」要件
アメリカ連邦著作権法は、“original”という用語についても、定義規定を置いていません。
しかし、これについては、最高裁判決があり、「オリジナルということは、著作物が著作者によって独立して創作されたものであること(他の著作物をコピーしたものでないこと)、及び少なくとも最小限度の創作性があること、を意味するのみである。」と示されています(Feist Publications, Inc. v. Rural Telephone Service Co,, 499 U.S. 340, 111 S.Ct.1282(1991))。
したがって、ここには、①独立性と、②創作性の2つの要素が含まれます。
これらのうち、「創作性」要件(①)について、同判決は、「必要とされる創作性の水準は極めて低く、ほんの少し(modicum)というのでも足りる」と明示しています。この点、日本では、大陸法系らしく、著作者の「個性が何らかの形で現れていれば足り」ると説明されます(東京高判S62.2.19無体裁集19巻1号30頁〔当落予想表事件〕)。これらの判示を踏まえると、結局のところ、アプローチこそ異なりますが、どちらも、高度な創作性は求められていないという点では、共通しています。
なお、これは、どれだけ頑張ったか(「額に汗」(sweat of the brow))ということとは無関係です。イメージとしては、中学校の部活動で、「頑張るだけじゃだめだ、結果を残さないと! でもな、結果といっても、自分らしさが少しでも出ていればいいんだ!」と、先生が生徒を叱咤激励している感じでしょうか(といいつつ、実は必ずしも頑張らなくても良いという意味では、少しズレているかも…)。
もう1つの「独立性」要件(②)に関しては、日本の裁判例でいえば、依拠性の問題ですね。依拠性といえば、日本では、専ら著作権侵害の議論の中で取り上げられることが多いように思います。もっとも、依拠があり、かつ、既存の創作的表現とは異なる表現要素が新たに加わっていない場合には、純粋な意味での「創作」(個性の現れ)があるとは認められないはずです。その意味で、依拠性については、日本においても、侵害判断の場面だけでなく、創作性要件とも意識的に関連付けて理解する方が、良いように思います。

(2)「表現」要件
アメリカ連邦著作権法102条(b)は、「著作権の保護は、アイデア、手順、プロセス、システム、操作方法、概念、原理又は発見に対して及ぶものではない」としています。これは、著作権は「表現」の部分を保護するのであって、その根底にある「アイデア」等には及ばないという考え方を示すものです。
すなわち、「アイデア」部分は、公のものとして自由に利用可能であるべきとする発想です。アメリカにおいて、こうした考え方は、いまから、実に140年ほど前の最高裁判決(Baker v. Selden, 101 U.S. 99 (1879))で示されました。なお、このような考え方は、「アイデア・表現二分論」(idea/expression dichotomy)などと呼ばれており、日本の著作権法の教科書でも、最近は、よく紹介されているようです。
また、「アイデア・表現二分論」の派生形ともいえる考え方として、「マージャー理論」(merger doctrine)があります。
これも日本でもよく紹介されていますので、お馴染みの方も多いのではないでしょうか。
アイデアの表現方法が1つ、あるいは非常に限られている場合には、アイデアと表現が融合(merger)しているとして、著作権保護を否定する考え方です。そのような「表現」を著作権として保護する場合、結局は根底にある「アイデア」自体を事実上支配できることになってしまうからです(Morrissey v. Procter & Gamble Company, 379 F.2d 675 (1st Cir. 1967) 等参照)。

(3)「固定」要件
有形的な表現媒体に「固定」されることは、日本の著作権法では一般的な保護要件ではありません。他方、「特許・著作権条項」は、“Writing”を保護の対象として明記しています。アメリカ連邦著作権法で、「固定」が著作権の保護要件として示されているのは、この憲法の規定の存在が背景にあるように思われます。
したがって、アメリカにおいては、例えば、即興音楽や生放送番組などは、原則として、アメリカ連邦著作権法による保護の対象外です。もっとも、音や影像を含む著作物の場合は、その伝達と「同時」に、権限ある者により固定(録音・録画)される場合には、著作法上の「固定」の要件を満たすとされていますので(101条の“fixed”の定義参照)、その場合には、著作権が及びます。
これに対して、権限のない者により固定される場合は、もはや「著作権」の範疇外となります。もっとも、アメリカ連邦著作権法は1101条で、「生の音楽実演」(live musical performance)を無許諾で固定(録音・録画)したり、その固定物を増製すること等については、著作権侵害の場合と同じ範囲で、民事的救済(差止請求や損害賠償請求等)の規定(502条~505条)に従うとしています。これは、1994年のウルグアイ・ラウンド合意法により新設された規定ですが、保護期間の定めはなく、第11章において、著作権とは別に規定されているものです(ちなみに、第11章にはこの規定しかありません)。

4.4  小括
いかがでしたでしょうか。アメリカ連邦著作権法では、著作権の保護要件として、①オリジナル性、②表現性、③固定性の3つが求められていることが分かりました。③は日本法とは大きく異なりますが、①と②は、日米とも同じような考え方に立っているといえるでしょう。
他方、「著作物」(works of authorship)の意味するところについて、その入れ物の大きさは、依然として曖昧さが残ります。
ただ、102条(a)は、著作物を例示していますので、それがヒントになりそうです。実際にそれらを見てみますと、“literary works”を始めとして、8つの著作物の種類が列挙されています。しかし、1つだけ、“works”という用語が使われていない著作物の類型があります。
それは、“sound recordings”(録音物)です。これは、日本法の「著作物」概念には入ってこないものです。アメリカでファスト・フード店に行くと、ドリンク容器のあまりの大きさにびっくりしますが、アメリカ法の「著作物」の入れ物も、ビックサイズのようですね。

次回は、この「録音物」の扱いも含め、引き続き、「著作権の保護」について、お届けしたいと思います。次回もどうぞお楽しみに!

(横浜国立大学国際社会科学研究院准教授 白鳥綱重)

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