JRRCマガジンNo.247 著作者の権利について(その4)

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JRRCマガジン No.247 2021/8/5
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みなさま、こんにちは。
オリンピックイヤーは思わぬところに影響があると思っています。
先月も身近なところで休日の変更について話題になりました。
来週の8月9日(振替休日)11日(平日)のご予定の確認はお済みでしょうか。
まだの方は、今週確認しておくと直前に慌てなくて良いかもしれませんね。

さて、8月最初のコラムは「著作者の権利について」の続きです。

前回までのコラムはこちら↓
⇒https://jrrc.or.jp/category/kawase/

◆◇◆━川瀬先生の著作権よもやま話━━━

 著作者の権利について(その4)

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8 著作者人格権
(1)著作者人格権の性質
著作者人格権は、人格権の性質にかんがみ著作者の一身に専属する権利とされ、同権利の他人への譲渡や相続は認められません(59条)。
したがって、著作者の死亡や法人著作の場合においては当該法人の解散等による消滅によって、著作者人格権は消滅することになります。
ただ、著作者が死亡したからといって、未公表の作品を公表したり、作品の著作者名を変更したり、又は内容を改変したりすることが勝手にできるかといえば、そのような行為は社会的に認められる行為ではありません。
したがって、著作者が存しなくなった後でも著作者人格権の侵害となるべき行為は原則として行なってはいけないことになっています(60条)。

この場合、例えば、江戸時代の著名な作家の日記が新たに発見されたとして、日記は通常未公表の著作物ですので、それを一般に公開できるかどうかという問題があります。
確かに著作者の死後における人格的利益は保護されていますが、あらゆる場合に保護されるわけではありません。
利用行為の性質、程度、社会的事情の変化等に照らして著作者の意を害しないと認められる場合は利用が認められることになっています(60条但書)。事例の場合は、著作者が死亡してから相当の年月が経っており、貴重な歴史的資料として公開されたとしても個人の人格的利益が傷つけられることはないと考えられるので、このような行為は認められると考えられています。

ところで、このように著作者の死後の人格的利益が認められることになりますが、その利益を誰が守るのかという問題があります。
これについては、著作者の配偶者又は二親等内の血族(子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹)に名誉回復等の措置(115条)と差止請求権(116条1項)が認められています。
なお、法人の解散等による消滅の場合は、その人格的利益を保護する者が存在しないところから上記の民事的請求が行われることは想定されず、規定化されているのは著作者が自然人の場合に限られています。
また、死後の人格的利益を侵害した者には罰則(120条 500万円以下の罰金)が課されることになっています。
著作者の人格的利益を保護する親族がいなくなった又はいなかった(法人著作の場合を含む)としても、国が必要に応じ罰則をもって保護するという仕組みになっています。

(2)著作者人格権の種類とその内容
①公表権(18条)
ア 公表権の内容
未公表の著作物を公表するかどうかを決めることができる権利です。権利の内容としては、公表するかどうかを決めるだけでなく、公表の方法(出版、上演、演奏、公衆送信等の方法の選択)や公表の時期を決めることも内包されているといわれています。

また、未公表著作物には、「その同意を得ないで公表された著作物を含む」という括弧書があります(18条1項)。「その」というのは著作者のことですが、何故このような定義が必要なのかを説明する前に、著作権法上、公表というのはいかなる状態を指すのかについて理解する必要があります。

(公表とは)
「公表された著作物」という用語は著作権法の中に数多く使われています。著作物が公表された状態にあるというのは大別すると2つに分類されます。
一つは、著作物が「発行」された状態です(3条)。これは、著作物の性質に応じ公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物が著作権者又は出版権者により又は許諾を得て作成され、頒布された状態を指します。
要するに、例えば小説や論文の出版、音楽CDや映画DVD/BDの複製・販売は典型的な発行です。
公衆とは、著作権法上、不特定者だけでなく特定多数を含む広い概念です(2条5項)。
また、頒布(2条1項19号)というのは譲渡だけでなく貸与も含む概念ですので、レンタルビジネスだけに利用されている著作物であっても発行になります。
さらに公衆の要求を満たすためにはどの程度の複製物が作成されればいいのかということですが、一般論としては、数十部程度、映画フイルムのように上映されると多数の人の視聴に供される特殊な性格のものは数部でも該当するといわれています。いずれにしても、この件は「著作物の性質に応じ」決まるので相対的な概念ということになります。

次に、著作権者等により又はその許諾を得て、著作物が上演、演奏、上映、公衆送信、口述又は展示の方法により公衆に提示された状態のことをいいます(4条)。
発行は著作物の複製物を作成しそれを公衆に配布等することを指しますが、この場合は、上演等の方法、いわゆる無形的な利用方法による場合を指します。
例えば、音楽を演奏会で初めて演奏することや、劇場でオリジナルの演劇脚本をはじめて上演することが該当します。
ただし、初めて演奏等を行うために、楽譜が作成され、また演劇脚本が印刷され、相当部数が関係者に配布されたとすれば、この時点で著作物が発行されたことになり、既に公表は行われていることになります。

公表の説明は上記のとおりですが、発行の方法か無形的利用の方法かは問わず、著作物が公表された状態というのは、著作権者等の許諾を前提としています。
すなわち、例えば未公表の著作物の著作権者が一切許諾をしていないのに、海賊版が世の中に普及しているという状態は、公表の要件を欠くので当該著作物は著作権法上未公表の著作物のままということになります。

前置きが長くなりましたが、公表権の定義に戻ります。
括弧書きの意味ですが、著作者と著作権者は必ずしも一致しませんので、著作権者が許諾して公表された著作物であっても著作者の公表の同意がないものは著作権法上未公表の著作物という取り扱いになるということです。

イ 公表権の制限
未公表の著作物は、著作者の同意がなければ一切利用できないとなると、著作物の円滑な利用を過度に制約することになることから、一定の条件の下で公表権の行使を制限しています。

その1つが、公表の同意推定規定です(18条2項)。
具体的には、未公表の著作物の著作権を譲渡した場合、未公表の美術・写真作品の原作品を譲渡した場合及び映画の著作物の著作権が法定帰属により著作権が著作者ではなく映画製作者に強制的に帰属する場合(29条)の3つの形態です。
例えば、最初の場合ですが、著作権の譲渡を受けた者はその著作権を活用して利益を得ようとしているわけですから、著作権を譲り受けても著作者が著作物の公表に同意しなければ、著作物の利用の機会を失うことになります。
そこで、著作権を譲渡した場合は、著作者は著作物の公表に同意したと法律上推定したうえで、仮に著作者が同意していないとすれば、その立証責任を著作者に転換することにより、円滑な著作物の利用を担保することにしています。他の場合も同様の理由からです。なお、例えば、譲渡契約の際に公表の期日を決めたり、公表の条件を決めたりすることは問題ありません。

次に、公表に同意したとみなすというみなし規定です(18条3項)。
具体的には、情報公開法等や公文書管理法等の円滑な運用を確保するため、行政機関等に提出された未公表著作物が開示決定されると著作者は公表に同意したものとみなされます。
したがって、未公表著作物だからとう理由だけで行政機関等は開示を拒めません。ただし、開示決定までに著作者が開示(公表)に同意できないとの意思表示をしたときはこの限りではありません。

最後に、公表権が適用されない場合の規定です(18条4項)。
情報公開法等や公文書管理法等に基づく、特別な情報開示(例えば、人の生命、健康、生活または財産を保護するために公開が必要とされる情報の開示(義務開示))は、個人の権益を上回る公益性を有している利用であることから、公表権を適用しないとしています。したがって、著作者が公表に反対する意思表示をしていたとしても強制的に公開されるということになります。

なお、特に3項及び4項の場合ですが、先述したように著作権法上の「公表」は著作権者等の許諾が前提ですので、例えば、情報公開法に基づき未公表の著作物が申請者に提供され、それが複製・配布され、多くの人がその内容を知ったとしても、著作権法上は未公表の著作物のままであることに注意が必要です。

次回は氏名表示権について説明をします。
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