JRRCマガジンNo.239 公衆伝達権と技術的手段

山本隆司

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JRRCマガジン  No.239  2021/5/20
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みなさまは、デジタルコンテンツにリンクを張ったり
サムネイルを蓄積することはありますか。
今回の著作権談義は、「公衆伝達権と技術的手段」についてです。

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https://jrrc.or.jp/category/yamamoto/

◆◇◆山本隆司弁護士の著作権談義(98)━━

  -公衆伝達権と技術的手段-

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2021年3月9日、欧州司法裁判所は、公衆伝達権の適用について、新たな解釈事例を示しました(VG Bild-Kunst v Stiftung Preussischer Kulturbesitz)。

原告Stiftung Preussischer Kulturbesitz(SPK)は、ドイツの文化施設と科学施設のネットワークであるドイツ電子図書館(DDB)の運営者です。被告VG Bild-Kunstは、美術著作物の権利管理団体です。

原告は、DDBに参加施設の持つデジタルコンテンツにリンクを張るとともに、DDB自体に当該コンテンツのサムネイルを蓄積して「デジタルショーケース」を作成しようとしました。
そのため、被告に当該配信に対する許諾を求めました。被告は、当該許諾付与の条件として、権利者が採用するframing禁止の技術的手段を付して配信することを原告に要求しました。

法律(VGG 34条1項)上、権利管理団体は合理的条件で許諾する義務を負います。
原告は、被告の上記条件は不合理であるから、当該条件を付けずに許諾する義務があると主張し、その義務の確認を求めてベルリンの裁判所に提訴しました。
最高裁判所に当るドイツ連邦司法裁判所は、上記条件を付けることは情報社会指令(Directive 2001/29/EC)3条1項の定める「公衆伝達権(公衆利用可能化権)」の解釈を、欧州司法裁判所に求めました。これに対する判断が本件判決です。

欧州司法裁判所は、3条1項の解釈について、「著作権の保護を受ける著作物が著作権者の許諾を得て他のサイト【配信サイト】で公衆に自由にアクセスできるようにしている場合において、【リンクサイトが】framing技術【リンクの一種】によって第三者【ユーザー】のサイトに当該著作物を受信させること(embedding)は、著作権者が採用しまたは付加したframing禁止の技術的措置を回避するときは、この規定の意味における公衆への伝達を構成する」と判示しました。

この判決は、配信サイトへのリンク行為に公衆伝達権(正確にはその中の公衆利用可能化権です。以下同じ)が及ぶかという論点について、従前の解釈の延長線上に、技術的手段がある場合についての解釈を示しました。

リンク行為に公衆伝達権が及ぶかという論点について、欧州司法裁判所の解釈は、2016年9月8日の判決(GS v Sonoma)によれば、以下のとおりです(本シリーズNo.48)。

第1に、リンク先(配信サイト)が権利者から許諾を得ている適法配信である場合には、リンクサイトによるリンク行為は、「新たな公衆」(new public)へのリンクであるときにのみ、公衆伝達権の侵害となる。

第2に、リンク先(配信サイト)が権利者から許諾を得ていない違法配信である場合には、リンクサイトによるリンク行為は、行為者がリンク先の違法性について故意または過失がある限り、「新たな公衆」へのリンクか否かを問わず、公衆伝達権の侵害となる。

第3に、第2の場合において、リンクサイトが営利目的あるときは、リンク先(配信サイト)の違法性について故意または過失が推定される。

他方、本件判決は、配信サイトが権利者から許諾を得ている適法配信である場合(上記第1の場合)であっても、配信サイトが著作権者が採用しまたは付加したframing禁止の技術的手段を著作物に付加する場合には、リンクサイトがframing禁止の技術的手段を回避してframingによって行うリンク行為は、「新たな公衆」へのリンクか否かを問わず、公衆伝達権の侵害となるとの解釈を示したものです。
この行為について、「新たな公衆」へのリンクか否かを問われないのは、もともと著作権者が意図した「公衆」はframing禁止の技術的手段によってアクセス可能な公衆であるところ、framing禁止の技術的手段の回避によってアクセス可能になる公衆は「新たな公衆」(著作権者が意図していなかった公衆)に該当するからです。

以上の判示を受けて、ドイツ連邦司法裁判所は、framing禁止はアクセス可能になる公衆の範囲を制限するものであるから、被告VG Bild-Kunstが原告SPKへの公衆送信権の許諾に当ってframing禁止の技術的手段を付して配信することを条件とすることは、公衆送信権の許諾に付随的制限(特約)を付すものではなく、公衆送信権自体の行使として適法である、と判決することになると思われます。

                  以上
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