JRRCマガジンNo.210 独占禁止法との関係

山本隆司

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JRRCマガジン No.210   2020/7/9
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※マガジンは読者登録の方と契約者、関係者の方にお送りしています。

みなさまこんにちは。
はじめに
この度の豪雨で被害を受けた地域にお住まいの皆さまにお見舞い申し上げます。
昨年の東日本地域の河川氾濫が記憶に新しいうちに、九州と飛騨、長野地方に被害が及んでいます。
新型コロナウイルスも終息していない最中、不安も大きいことかと思います。
まずは身の安全を第一に、どうかご無事でありますようお祈りいたします。
そして、現在被害の無い地域にお住まいのみなさんは、今一度、防災備品や避難場所の確認を。
12日ごろまでは梅雨前線の活発な状態が続くとの予報がでていますので、注意していきましょう。

本日は山本先生のコラムです。
テーマは独占禁止法です。
有名タレントの事務所退所のニュースがこのところ賑わっておりますが、これも独占禁止法が関わる事案の1つです。
前回までのコラムはこちらから
https://jrrc.or.jp/category/yamamoto/

◆◇◆山本隆司弁護士の著作権談義(89) ━

-独占禁止法との関係-

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最近、契約上の制限事項を独占禁止法に反し無効だと、弁護士の方でも安易に主張するのをよく目にします。
著作権のライセンス契約においても、いろいろな制限事項が規定されますので、どのような制限事項が独占禁止法に違反するのか考えてみたいと思います。
 
独占禁止法は、「この法律の規定は、著作権法、特許法、実用新案法、意匠法又は商標法による権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない。」(21条)と規定しています。
この規定によって、制限事項が「著作権の行使」自体であれば独占禁止法の適用を受けません。
他方、著作権の行使自体ではない「特約」であれば、独占禁止法の適用を受け、不公正な取引方法等の該当性が問われることになります。
 
著作権の範囲内において、利用許諾を、数量的に、期間的に、地理的にまたは利用態様ごとに分割・限定することは、「権利の行使」と考えられます。
したがって、著作権のライセンスの範囲に、たとえば、日本国内という地域制限、自己使用目的という用途制限、複製部数の数量制限を課すことは、
「権利の行使」に当たり、不公正な取引方法への該当性を検討するまでもなく適法と考えられます。

他方、ライセンスの「特約」には独占禁止法の適用があります。したがって、不公正な取引方法として列記される行為類型に当る場合には、
それが競争を促進するかそれとも競争を阻害するかを検討し、後者であれば「不当に」「正当な理由なく」という要件を満たし不公正な取引方法として違法となります。
特約が競争を促進するか、競争を阻害するかの判断には、アメリカで成立した付随的制限の法理(U.S. v. Addyston Pipe & Steel Co., 85 F. 271 (6th Cir. 1898))が役に立ちます。

たとえば、営業譲渡契約では、譲渡人に譲渡後の競業を禁止します。営業譲渡は競争主体を存続させるものでありそれ自体は競争促進的な取引です。
しかし、その譲渡人が譲渡後に同一営業を始めることができれば、譲受人は事実上譲り受けた営業を失うことになるので、譲り受ける者はおらず営業譲渡は行われないことになります。
つまり、譲渡人に競業を禁止することは営業譲渡という競争促進的な取引を成り立たせるために必要な付随的制限です。
このような付随的制限を違法として営業譲渡市場を成り立たせなくするよりも、このような付随的制限を適法化して営業譲渡市場を成り立たせる方が競争促進的です。
したがって、営業譲渡契約において譲渡人に譲渡後の競業を禁止することは、競争促進効果のある合理的な制限と考えられます。
このようなアプローチを付随的制限の法理といいます。
 
著作権のライセンス契約において課される制限を、付随的制限の法理の観点から見ていきましょう。
著作物の創作に著作権が認められるのは、著作物の創作が著作物市場を成立させるからです。
したがって、著作権のライセンス取引自体は、競争促進的です。そこで、契約で課される制限がライセンス取引の成立に必要かどうかが問題となります。
たとえば、海外のプログラム著作物の著作権者が、日本の販売店に対して日本での複製販売権を許諾し、その日本語化をも許諾する場合、
作られた日本語版に対する著作権を著作権者に譲渡するとの制限を課します。
顧客が一旦その日本語版に慣れてしまうと、著作権者は販売店との契約が切れても、事実上、その日本語版を使わなければ日本でそのプログラムを販売できなくなります。
当該制限が違法とされれば、著作権者は、自力で日本語化するか自力で日本での販売網を築こうとし、販売店に利用許諾しようとしなくなります。
したがって、当該制限は、利用許諾という競争促進的な取引を成り立たせるために必要な付随的制限であり、適法な「特約」と考えられます。 
同様に著作権取引契約でなくても、原則として、市場取引自体が余剰を生むので競争促進的です。

そこで、やはり当該取引契約で課される制限が当該取引の成立に必要な付随的制限かどうかが問題となります。
たとえば、専属音楽アーティスト契約は、契約期間中、アーティストに他社への実演提供を禁止します。
この禁止は、レコード会社がアーティストの技能と知名度の向上のために行う投資の成果に他社がただ乗りすることを防止することによって、
当該投資を可能にするために必要な付随的制限です。したがって、適法と考えられます。
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