JRRCマガジン第73号(集中管理の歴史<日本編3>)

川瀬真

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   JRRCマガジン No.73 

川瀬先生の著作権よもやま話
著作権等の集中管理
第5回「集中管理の歴史<日本編3>」
 
                               2016/9/21配信
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皆様、こんにちは。
JRRCメルマガ担当です。

台風と秋雨前線の影響により、
駆け足で夏が終わってしまった感がありますが、気づけば、金色に色づき始めたススキ
を時折見かけるようになりました。
皆さまいかがお過ごしでしょうか?

それでは、
川瀬先生の著作権よもやま話
第5回「集中管理の歴史<日本編3>」
をお送りいたします。

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川瀬先生の著作権よもやま話 
著作権等の集中管理 
第5回「集中管理の歴史<日本編3>」

 前回は、著作権等の集中管理を規制している著作権等管理事業法(以下「管理事業
法」という)の前身の法律である仲介業務法の内容について説明をしました。今回は、
管理事業法の解説をします。
 まず、管理事業法が成立した理由です。仲介業務法の規制下では、日本音楽著作権
協会(音楽)等の4団体が文化庁の業務許可を受け、集中管理事業を実施していました。
 これらの団体は、権利者団体型の団体であり、委託者からの信頼も厚く、利用者側と
の関係も円満で、組織的・経理的にも一定の基盤を持った団体でした。
 この仲介業務法の見直しは、このような状況の中で提起された課題であり、その原因
は大きく分けて3つあったと考えています。
 1つは、政府における規制緩和政策の推進です。1990年代に入って、わが国ではい
わゆるバブル経済の崩壊が起こり、それを打開するため、政府は規制緩和政策を進め
ました。規制緩和政策といいますのは、不必要な政府規制はできるだけ廃止し、また規
制が必要な分野についても最小限度の規制にとどめ、できるだけ民間の自由な競争に
任せることにより、日本経済の再興を図るというものです。1995年には政府において
規制緩和政策が発表され、いわゆる住宅、土地、情報通信、流通、運輸などあらゆる分
野での規制緩和が進められました。文化庁の著作権審議会で仲介業務法の見直しの
議論がはじめられたのは1994年からですが、この議論も規制緩和政策の流れに沿っ
たものであるといえると思います。
 次に、仲介業務法自身が抱える問題です。同法は戦前に成立した事業法であり、条
文数が14条しかない非常に簡素な法律です。例えば、同法は業務の許可制を定めて
いますが、同法の中では許可基準が定められていませんでした。当時の政府資料を読
みますと、許可するかどうかは主務大臣の裁量に一切任されていると書かれています。
許可制であるのに許可基準は何ら定められていないという構成は、現在の事業法では
考えられないものですので、仮に許可制を維持するとしても法律の見直しは避けては通
れなかったと考えられます。
 最後に、上記の2つの理由に加えて、見直しの議論開始を加速させたのは、上記の日
本音楽著作権協会が音楽著作権の管理を独占していることに対する批判です。当時同
協会の事務所移転問題を契機として、事実に基づかない非難・中傷も含めて同協会の
管理事業が適正に行われていないのではないかとする批判がありました。その批判の
一環として法制度により事実上独占を認めている仲介業務法の見直しを求める要望が
文化庁にも寄せられたと聞いております。
 このように、いくつかの要因が重なった結果、仲介業務法の見直しの必要性が高まり、
著作権審議会における議論が始まったと考えています。
 ところで、著作権審議会における議論は、関係者の利害にも大きくかかわる問題でも
あり、審議の途中で作業部会の報告書を公表し、関係者の意見を聞くなどして慎重に
行ったため、結論を得ることができたのは2000年でした。
 その報告書の中で、仲介業務法に代わる新たな法律を制定するにあたって、
次のような5つの基本的な視点が提言されました。
 ①著作者の意思の尊重
 ②著作物の利用実態の変化等への対応
 ③管理事業に対する著作者及び利用者の信頼性の確保
 ④管理事業の透明性の確保
 ⑤著作権に関する情報提供機能の充実
 この中で②から⑤については特に説明をする必要はないと思いますが、①について少
し説明をしておきます。例えば、音楽の場合、仲介業務法の下では、日本音楽著作権
協会が唯一の許可団体でしたので、作家自身が自分の著作権を全て自己管理する場
合を除き、他人に権利を管理してもらおうとすると同団体に権利委託するしかありませ
んでした。しかも、同団体に権利委託する場合は、委託する利用行為(録音、録画、放
送等)を選択することはできず、原則としてすべての利用行為にかかる著作権を一括し
て預けなければいけないことになっていました。「著作者の意思の尊重」というのは、権
利の委託先の選択権を権利者に与えてほしいとする要望に応えたものです。これを実
現するための具体策としては、新規参入を認め、権利者に委託する権利の選択権を認
めるということにつながっていくわけです。
 それでは、次回は管理事業法の具体的な仕組みについて説明をします。

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以下の通り訂正し、お詫び申し上げます。

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誤)(略)、という流行語が生まれ、渡辺純一の「失楽園」から失楽園という言葉が

正)(略)、という流行語が生まれ、渡辺淳一の「失楽園」から失楽園という言葉が

               
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