JRRCマガジン第16号(入試問題の外注、フェア・ユースと新サービス)

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   JRRCマガジン
                       2013/10/18配信 第16号
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◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆INDEX◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

*半田正夫の著作権の泉        第4回    「入試問題の外注」
*JRRC☆TIMES   
                        「第3回著作権セミナー開催報告」
                        「JRRCなうでしょ」
*山本隆司弁護士の著作権談義   第13回   「フェア・ユースと新サービス」
*読者の声                読者の声の投稿と掲載
*インフォメーション           ご意見・ご要望、各種手続き

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皆様、こんにちは (^o^)丿
日本複製権センター メールマガジン担当者です。

今の季節、どこからか漂うキンモクセイの香りが、いささか厳しかった残暑に参った身体
に潤いを恵んでくれます。
今年は、夏の酷暑による影響で、海水の温度も上昇し、思わぬ台風が多発しています
(既に26号発生・・・27号も控えているとか!?)。

季節の変わり目、体調管理に十分気をつけましょう。

それでは第16号をお届け致します。

●今後取り上げるテーマについてリクエストがございましたら、
   ご意見・ご要望など ⇒ https://fofa.jp/jrrc/a.p/112/
 にて、ご投稿をお願いいたします。

●ご了解ください
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ョナルフォントで表示すると改行の位置が不揃いになります。

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 今後メルマガを受け取りたくない方は、お手数ですが、
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 をクリックして配信停止の手続きをお願い申し上げます。

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   半田正夫の著作権の泉 第4回
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★はじめに
「半田正夫の著作権の泉」の連載第4回目です。
 

    ▼半田正夫の経歴、著作物等
     ⇒ http://www.jrrc.or.jp/jrrc/message.html

   
第4回は、「入試問題の外注」です。

★文部科学省の調査によると、
全国の大学のうちで入試問題の作成を予備校や受験関連企業に委託しているところが
98大学に達していることが明らかになったとのことである。2007年度に調査したときに
は71大学であったので今年度は当時より4割近く増加しているとのことだ。

これは文部科学省に対して正直に答えた数であって、実際はその倍くらいはあるので
はないかとのうわさもあるようだ。

本来入試問題の作成は、当該大学の教育理念にのっとり、受け入れたい学生をいかに
判別するかという視点で行うもので、外注などということは大学の存立の基盤をみずか
ら放棄する愚挙といわざるをえないように思われる。

とはいうものの、かつて大学に身を置いたものとしてその気持ちが分からないわけでも
ない。
筆者自身、だいぶ以前になるが入試出題委員として問題の作成に関与したことがある。
法学部教員であるということで、「社会」のなかの「政治・経済」の科目の出題を任され
たのである。気軽に引き受けたものの、考えれば考えるほど大変な仕事であることが次
第に分かって後悔することとなった。

まずは高校生の学習レベルを知らなければならないので高校の教科書を何冊か取り寄
せて熟読し、さらに参考書を検討しておおよその素案を固める。
そのうえで自分の大学だけでなく他大学の過去の出題について内容がかぶらないかを
調べる。

また、教科書に書いてあることをそのまま出せば、おそらくほとんど全員が満点を取る
ので、教科書に書いてある知識を前提にしながらも、その知識を応用するような問題の
作成を行わなければならないとなると、ことはきわめて重大である。
生半可な気持ちでできる作業ではない。
おまけに表現に気をつかわなければならないのはもちろんのこと、年号とか統計数字
に誤りがないよう万全の注意を払わなければならないのでかなり神経の疲れる仕事で
ある。

1問作るだけでこうだから、毎年たくさんの出題をしなければならない教員はさぞ大変で
あろうと推察する。
聞くところによると、英語や国語の出題担当者は出題のネタ探しに四六時中汲々として
いて、本を読むときはつい試験問題に使えるかどうかという観点でみてしまうと嘆いてい
るとのことである。
大学の教員が本来の仕事である教育や研究の時間をかなり犠牲にして試験問題の作
成にうつつをぬかすというのは本末顛倒もはなはだしいといわなければならない。
このようなことから予備校など受験生の学力の程度などを熟知している外部の専門家
に委託するのも分からない話ではないように思われる。

しかし、当の大学にとって外注は出題能力がないことを自ら公にすることなので、その
事実を秘匿したがるのも当然である。
外注の際に、大学の名前を公表しないように念を押し、担当者の名刺など証拠になるよ
うなものをいっさい手渡さないとのことである。

ところで、このようにして作成された試験問題の著作権はどうなっているのだろうか。

いま問題の作成を依頼した大学をAとし、受注を受けた予備校などをBとして考えてみよ
う。
問題を作成したのはBであるから著作権は原始的にBに発生していることは間違いない
(もっとも厳密には職務著作の要件を具備していることが必要だが、ここでは捨象する)。
これがA に移転するにはAB間で著作権譲渡についての明確な合意がなければならな
い。
後日生じるかもしれない紛争を回避するためにはその合意は文書で残すことが必要で
ある。
しかしおそらく秘匿事項なので文書で残すようなことはしていないであろうし、そもそも
著作権譲渡についてもうやむやのままにされているのではないかと推察される。

そうであるとすれば、A大学が受け取った問題に手を加えたり(多くの大学では受け取
った問題をそのまま使用することに気が咎めるのか、多少表現を替えたり、問題の入れ
替えをしたりすることが多いとのことである)すれば、翻案権や同一性保持権の侵害と
なるであろうし、オープンキャンパスの時に来校した高校生らにお土産として過去問を
配布する行為は複製権や譲渡権の侵害となる可能性も出てこよう。
さらにいえば、BはC大学の依頼に応じて同一問題をCにも提供する場合もなしとしない
ことになろう。

このような場合、A大学はC大学に対しクレームをつけることができるだろうか。

またBから提供された問題のなかに素材として使用された著名な学者Xの文章の扱い
にXが激怒し、著作者人格権の侵害を主張してきたような場合にAはBのやったことだか
らと逃げを打つことができるだろうか、おそらくはいずれも杞憂ではあるが、考えれば際
限なく難しいモンダイをはらんでいるように思えてならない。

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   JRRC☆TIMES
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☆★☆第3回著作権セミナー☆★☆

公益社団法人日本複製権センター(JRRC)は、2013年10月2日(水)文化庁後援の
もと、第3回著作権セミナー「変動する著作権環境の中で」と題するセミナーを開催致し
ました。

当日は台風22号による雨風が朝から容赦なく、東京の空を思うままにしていました。
そんな悪天候にもかかわらず、多くのお客様がご参加され、企業コンプライアンス意識
の高まる昨今、著作権に対する注目度の高さが伺えました。

~アンケート感想等(一部抜粋)~
・遠方から来た甲斐がありました。興味深かったです。勉強になりました。
・電子ファイル化許諾事業をぜひ早く進めて頂きたい。
・質問コーナー設置希望。
・15:00~17:30のように直帰しやすい時間帯の方が出席しやすいと思う。
                        
等 多くの貴重なご意見・ご感想、ご要望を頂戴しました。
アンケート記入のご協力を有難うございました。

JRRCとしましては、貴重なご意見等に耳を傾け、更に、著作権者様とご利用者様との
良き懸け橋、良きパートナーとなれるよう精進する所存でおります。
今後共どうぞJRRCを宜しくお願い申しあげます。

次回は春先、2月頃に開催する予定となっております。
是非ともご参加下さい。
また、今回ご都合のつかなかった皆様のご参加もお待ちしてます。

☆★☆JRRCなうでしょ☆★☆
 
★こんにちは。
JRRC事務局長の稲田です。

9月号では台風18号のお話をいたしましたが、今度は台風26号が日本列島に迫ってき
ています。今年は19年ぶりに台風の当たり年だそうですが、皆さん台風には十分注意
してお過ごしください。

それでは今月号の最初の報告ですが、
去る10月2日(水)に開催した第3回JRRC著作権セミナーの報告をいたします。
本セミナーには、500名を超える大勢の参加者にお集まりいただき、成功裏に終了する
ことが出来ました。
これもひとえに皆様のJRRCに対する期待の大きさを示しているものとして、職員一同
心より感謝しています。

次回は、法改正の動向を踏まえ、来年2月に開催を予定していますので、どうぞご期待
ください。近くなりましたら改めてご連絡いたします。

次は、「JRRC契約書作成システム」についてご紹介します。
これまで新規に契約書を作成する場合は、全て紙の契約書のやり取りをしてきました
が、先月号で紹介いたしました「JRRC WEB契約管理システム」が無事稼働いたしまし
たので、第2弾として契約書の作成をWEB上で行うことができる「JRRC契約書作成シス
テム」を開発いたしました。
このシステムにより、新規契約者はWEB上からの入力により簡単に契約書を作成する
ことが可能になりました。

また、センターでは本年4月の新使用料規程の導入に伴い、これまで過去に様々な様
式で締結されてきた契約書の見直しを行い、統一された契約書の導入を始めています。
新統一契約書には、反社会的勢力に関する事項も網羅されており、最新の状況を反映
した内容となっています。
今後年内をめどに既存契約者の皆様にも新統一契約書への切り替えをお願いしていく
予定ですのでご協力のほどよろしくお願いいたします。

以上、今月の「JRRCなうでしょ」でした。

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   山本隆司弁護士の著作権談義  第13回
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★はじめに
山本弁護士の著作権談義の第13回目です。

    ▼山本弁護士の経歴、著作物等
     ⇒ http://www.itlaw.jp/yamamoto.html

今回は、「フェア・ユースと新サービス」です。

★米国のフェア・ユースは、技術の発展に伴って生まれる新たな利用行為に、柔軟に対
処しています。

著作物の利用行為には、著作物の鑑賞価値を利用する行為とそうでない行為がありま
す。
いずれの利用行為も形式的には著作権に抵触しますが、
トランスフォーマティブ・ユースの法理は、
後者の行為(著作物の鑑賞価値を利用しない行為)に対して広く権利制限を与えていま
す。

その例として、
ターニティン事件(A.V. v. iParadigms LLC, 77 PTCJ 704 (4th Cir. 2009))
をご紹介いたします。

最近、学生がインターネットで入手できる論文などを切り貼りして安直に盗作論文を作
成することが生じています。
被告の運営する「ターニティン盗作検出サービス」は、このような盗作を検出する高校や
大学向けのサービスです。

そのサービスに加入した学校は、教師が学生に論文や作文を提出させる場合、学生に
ターニティンのウェブサイトへ送付させます。ターニティンは、送付された学生の作文を、
ターニティンのデータベースとインターネット上のコンテンツと比較して、オリジナルな内
容か盗作かを確認し、何%オリジナルな内容かを記載した報告書を学校に送付します。

なお、学校は、そのサービス加入に当たって、送付された学生の作文をターニティンの
データベースに保存してもいいか否かを選択できます。この事件の原告らは、高校の学
生で、教師の指示に従ってターニティンのウェブサイトに作文を送付しましたが、ターニ
ティンのデータベースに原告らの作文を保存したことを著作権侵害であると主張して、
ヴァージニア東部地区連邦地方裁判所に訴えました。地裁は、著作権侵害についてト
ランスフォーマティブ・ユースの法理に基づいてフェア・ユースの成立を認め、控訴審の
第4巡回区連邦控訴裁判所も、以下のように判示してこれを支持しました。

フェア・ユースの認定の第1の要素(使用の目的と性格)について、
控裁は、
「地裁は、『被告は、ターニティンによって、その作文をまったく異なった目的のために、
すなわち、学生の作品をデジタルコードで保存して、盗作を防止し盗作から学生の作文
を守る目的のために、使用している』と認定した。地裁は、被告が学生の作品の使用か
ら利益を得ようとしていたことを認識していたが、被告による原告らの作品の使用は
『高度にトランスフォーマティブ』であり、また『ターニティンを使用した教育機関のネット
ワークを通じて重大な公共の利益を提供している』と認定した。
……当裁判所は、地裁が【被告による】原告らの作文の利用がトランスフォームであり、
フェア・ユースの認定に有利であると判断したのは、正しいと考える。」
と判示しました。

また、フェア・ユースの認定の第2の要素(著作物の性質)および第3の要素(使用の量
と実質性)についても、フェア・ユースの認定を排除するものではないと認定し、第4の要
素(著作物の潜在的市場への影響)についてはフェア・ユースの認定に有利であると認
定しました。

第1の要素(使用の目的と性格)についてトランスフォーマティブ・ユースと認定されれば、
フェア・ユースの成立が認められる蓋然性はかなり高いものです。トランスフォーマティ
ブ・ユースの法理の適用を論じたこれまでの裁判例を見ると、第1の要素(使用の目的
と性格)についてもっぱらトランスフォーマティブ・ユースであると認定した事案において
は、フェア・ユースの成立が否定されたものはないようです。

というのは、トランスフォーマティブであると認められるためには著作物の鑑賞価値の利
用を目的にしないことが必要であるので、その評価においてすでに第3要素および第4
要素に対する評価をかなりの程度取り込んでいます。

また、第2要素はフェア・ユースに決定的ではないからだと思われます。

したがって、米国では、著作物の鑑賞価値を利用しない行為には、トランスフォーマティ
ブ・ユースの法理に基づいてひろくフェア・ユースの成立が認められているといえます。
                                    

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   読者の声
            『読者の声』の投稿と紹介
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このコーナーは、「JRRCマガジン」が皆さんにとって便利な、役に立つ情報収集ツール
としてご活用していただけるよう、ご意見・ご感想をお寄せいただき、その中から選出し
てご紹介するコーナーです。
                              
「今回のメルマガは為になったよ~」「○○コーナーがあったらいいのになあ~」や、
「JRRCのここがわからない」といったものでもOK、お寄せください。
お待ちしてます。

★投稿先はこちら
  ⇒ https://fofa.jp/jrrc/a.p/111/

掲載された方には粗品を進呈いたします。
なお記事として掲載する場合は、事前にご連絡しご了解を頂くように致します。

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   インフォメーション
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   あとがき
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今週月曜日は体育の日(国民の祝日)でした。
天候にも恵まれ、各地で運動会やスポーツ大会等が催されたようですね。

今年は、何と言っても先日2020年東京オリンピック開催決定の嬉しいニュースの影響
も相俟って、とても盛り上がったのでは?
56年ぶりの東京オリンピック。記憶にある方もいらっしゃることと思います。

そして、まだ記憶に新しい昨年の2012年ロンドンオリンピックでは、日本人選手のめざ
ましい活躍ぶりが話題となりました。

来年2014年は冬季ソチオリンピック開催年。2016年はリオデジャネイロ、2018年平
昌、2020年東京へと続きます。

次のオリンピックでは、どんなドラマを見せてもらえるのでしょうか?

楽しみですね(*^_^*)。(A.U)

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■お問合せ窓口
   公益社団法人日本複製権センター(JRRC)
     ホームページの「お問合せ」ページからアクセスしてください。
       ⇒ http://www.jrrc.or.jp/inquiry/

■編集責任者
   JRRC副理事長 瀬尾 太一   
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