JRRCマガジン第6号(権利を制限する規定その二、米国SOPA騒動の行方)

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 JRRCマガジン
                                    2012/12/21配信 第6号
━━目次◆◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1.著作権百夜一夜話 第6話       権利を制限する規定の話 その二
2.山本隆司弁護士の著作権談義 第3回  米国SOPA騒動の行方
3.読者の声               読者の声の投稿と掲載
4.プロムナード             雑談アレコレ
5.インフォメーション          ご意見・ご要望、各種手続き
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皆様、こんにちは (*^。^*)
日本複製権センター メールマガジン編集者です。

今年最後のメールマガジンとなりました。
おかげさまで半年続けることができました。ありがとうございました。
ただ、このスタイルで続けてよいものか、悩んでおります。
皆様からのご意見・ご要望等お待ちしております。

今回は少し長くなっておりますので、さっそく第6号をお届け致します。

▼今後取り上げるテーマについてリクエストがございましたら、
   ご意見・ご要望など ⇒ https://fofa.jp/jrrc/a.p/112/
 にて、ご投稿をお願いいたします。

▼ご了解ください
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◆1◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 著作権百夜一夜話 第6話  
         「権利を制限する規定」の話 その二
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◆はじめに
先月号からの続きです。
私的使用を目的とした複製から除外される規定と第30条第2項の解説になり
ますが、重要な部分ですので、事例を挙げてわかりやすくしています。

◆第30条「私的使用のための複製」

●第1項続き
以下の場合は、私的使用を目的とした複製から除外されるので、注意が必要で
す。これは、同条第1項第一号から第三号に規定されているものです。

・第一号では「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製
 機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化
 されている機器をいう。)を用いて複製する場合」は除外しています。

 従って、原則は、「自分で所有している、或いは自分の支配下にある複製機
 器を使って複製」することが要件となります。
 
 私的使用目的で音楽や映像の著作物を「複製」することについては、家庭内
 に普及した録音や録画のための機器で行なうことが一般的な行為になってい
 るので、第1項本文(私的使用目的の複製が認められる範囲についての規定)
 以内で行なう複製であれば、問題ありません。
 
 活字媒体の複製(主に紙から紙への「複写」)についても、原則、「公衆の
 使用に供することを目的として設置されている自動複製機器」(例えば、コ
 ンビに店頭に設置されているコピー機)では行えませんが、現在のところ、
 著作権法の「附則第5条の2」という条文で許されています。
 これは、録音や録画機器は家庭内に普及している一方、家庭用の複写機器は
 普及していなかったこと、複写に関する権利処理のルールができていなかっ
 たこと等が、要因として挙げられます。
 
 しかし、現在では、コピー機能を有する電話機やコピー機能を有するプリン
 ターが家庭内に普及してきているため、「附則第5条の2」の存廃について
 の検討が必要ではないかとの意見が出てきているようです。

 ◎尚、出版物等の特定ページを私的使用目的(例えば、自分の趣味のために
  保存する等)のために行なう複写であっても、自分が勤めている企業内に
  設置されているコピー機を使用する場合は、その設置場所や目的の観点か
  ら、「私的使用目的の複製」には該当しません。

・第二号では、レコード、放送、映像作品等の複製を防止するために施された
 「技術的保護手段(コピーガード等)」を回避して複製することは、私的使
 用目的のためであっても禁止しています。

・第三号では、私的使用目的の録音・録画であっても、インターネット等を通じ
 て配信されているコンテンツが違法であることを知りながら行なう場合は、
 本条(第30条)は適用されず、違法な行為になることを意味しています。

 ◎尚、このような行為については、2012年10月以降は刑事罰(2年以
  下の懲役若しくは200万円以下の罰金、又はその両方)の対象となるこ
  とが、同年6月27日公布の改正著作権法によって規定されました。

●第2項
規定の趣旨は、以下のとおりです。

・私的使用を目的として、デジタル方式の録音や録画用の機器を使って、それ
 らの機器専用の記録メディアに録音や録画を行なう場合は、それらの機器や
 記録メディアが著作権法施行令の「第1条」と「第1条の2」に規定されて
 いるものであれば、そのような複製を行なう個人には「私的録音・録画補償
 金」を支払う義務を課す、というものです。

・ただし、その対象機器と対象メディアは、具体的には、
 録音についてはDAT、MD、DCC、CD-R、CR-RW、
 録画については、DVCR、D-VHS、MVDUSC、DBD-RW、DVD+RW、DVD-RAM、Blu-ray
 で、記録メディアについては、汎用のものは補償金対象から除外されています。

 ◎補償金制度、対象機器・記録メディア等の詳細については、私的録音補償金
  管理協会(sarah)と私的録画補償金管理協会(SARVH)のホームページを
  ご参照ください。
    sarah:  http://www.sarah.or.jp/
    SARVH:  http://www.sarvh.or.jp/

 ■著作権法第30条
  http://www.houko.com/00/01/S45/048.HTM#s2.3.5

◆2◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 山本隆司弁護士の著作権談義 第3回
           米国SOPA騒動の行方
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◆はじめに
山本隆司弁護士の著作権談義も今回で3回目となりました。
毎回のテーマは山本先生にお任せしていますが、今回は米国の「オンライン海
賊行為防止法」立法化の行方についてです。

    ▼山本弁護士の経歴、著作物等
     ⇒ http://www.itlaw.jp/yamamoto.html

◆米国SOPA騒動の行方

電子掲示板や動画投稿サイトに、ユーザーが無断複製物(複製権侵害)をアッ
プし(送信可能化権侵害)インターネットで公衆送信する(公衆送信権侵害)
ことは、よく見受けられます。著作権者がそれを見つけISPにその削除要求
を通知すれば、ISPはそれを削除する義務があります。

しかし、ISPは、ユーザーによる違法複製物のアップを監視する義務はあり
ませんので、著作権者から通知を受けない限り、原則としてなんの責任も負い
ません。
そのサイトに違法複製物がアップされることが異例であれば、これでもいいで
しょう。しかし、そのサイトにアップされるものの大半が違法複製物という場
合にも、ISPは著作権者から通知を受けない限り責任を負わない、というの
は不合理です。

日本の裁判所(パンドラTV事件)は、このような場合にはISPに自動的に
侵害物を排除できる侵害防止措置をとる義務があるとし、不法行為責任を認め
ました。

米国では、DMCA(デジタルミレニアム著作権法)で、ISPに著作権者か
ら削除要求通知があれば自動的に削除すべき義務を課すノーティス・テイクダ
ウン手続を定めました。
しかし、ISPの責任範囲をそれに限定している(いわゆるセイフ・ハーバー)
ので、米国の裁判所は、パンドラTV事件のようなサイトに侵害防止措置義務
を認めることができません。
伝統的な米国の過失責任理論では、日本の裁判所のようにISPに侵害防止措
置義務を課すことができるのですが、DMCAでISPに立法的に免責を与え
しまっているのです。

米国でも、パンドラTV事件のようなサイトによる被害が発生しています。
その対処方法として、米国議会は、ISPの責任について伝統的な米国の過失
責任理論に戻ってISPに責任を課す方向を採っていません。
アクセス・サービスや広告サービスや決済取引サービスを提供する周辺業者に
責任を課す方向に進んでいます。

直近の法案が下院の「オンライン海賊行為防止法案(Stop Online Piracy Act、
略称SOPA)」です。
SOPA103条は、著作権侵害等を「もっぱら目的とする米国向けサイト」
または著作権侵害等に「使用される高い蓋然性を故意に無視しもしくは、かか
る使用を助長する目的を持っている米国向けサイト」に関して、それへのアク
セスや決済取引や広告を提供する業者にその提供の停止を命ずる手続を規定し
ています。

しかし、この法案は、提出以来各方面からの激しい反対活動に会い、ついに2
012年1月、下院司法委員会委員長が「解決策について広範な合意が形成さ
れるまで立法化の検討を延期する」と宣言しました。

その後どうなっているのか調べてみましたが、いまだ店ざらし状態です。
そのうち、米国議会は、ISPの責任について伝統的な米国の過失責任理論に
戻って、ISPに責任を課す立法の方向に舵を切っていかざるをえないのでは
ないかと予想されます。

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 読者の声
       『読者の声』の投稿と紹介
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このコーナーは、身近なテーマについて、読者の方から投稿して頂き、その中
から選出して『読者の声』としてご紹介するコーナーです。

◆読者の声
 今回は残念ながら投稿がございませんでした。

◆次回テーマ
  「著作権法を勉強するのに役立つ書籍・雑誌・WEBサイト等情報」
  があればご紹介ください
    
◆投稿先はこちら
  ⇒ https://fofa.jp/jrrc/a.p/111/

掲載された方には粗品を進呈いたします。
なお記事として掲載する場合は、事前にご連絡しご了解を頂くように致します。

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 プロムナード
       ♪ ♪    悠揚せまらず     ∞ ∞
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ジュネーヴ(スイス)

WIPO(国際知的所有権機関)の「WIPO著作権条約(WCT)」と「W
IPO実演・レコード条約(WPPT)」は、著作権業務に関わっている方はご
存知だと思いますが、これらの条約は16年前の12月20日に、ジュネーヴ
の外交会議で採択されたものです。

筆者は、1996年12月2日から20日までの会期で開催された、両条約採
択に向けた外交会議に国際的NGOの一員として参加し、その採択の過程をつ
ぶさに体験する機会を得ることができたので、今回は、その時のことを思い出
しながら、若干の余談とともに回想してみます。

 ▼WIPO外交会議の詳細
  http://www.wipo.int/meetings/en/details.jsp?meeting_id=3010

2日にスタートした全体会議では、12月11日まで掛けて両条約採択に向け
た審議に必要な手続きに関する事項が決定されました。
その後、同会議は一端中断され、具体的条約案の内容については外交会議で決
定された委員による本委員会によって練り上げられ、20日の全体外交会議席
上で上程されました。
そのため、筆者のような立場の参加者は、上記委員会で審議される各国の条約
修正案の印刷物の配布を待つ以外は、ただただ時間を持て余すだけとなります。

そんなときこそ、大手を振ってジュネーヴ市内、近郊を歩き回ることができた
のです!

 ▼ジュネーヴ
  http://www.myswiss.jp/jp.cfm/area/offer-Destinations-10Geneve-211965.html

ガイドマップを片手に、レマン湖からローヌ川への注ぎ口に架かるモンブラン
橋を渡り、建物をくり抜くようにして造られた、起伏に富んだ旧市街の細い石
畳の路を上ったり下りたりしてレストランや土産品店等を見たり、サン・ピエー
ル教会、旧兵器庫、市役所等の歴史的な建物を観て回ったりと、ゆったり流れ
る時間の中を散策することができました。

   ~師走の忙しさに追い立てられている日本の仲間に対する一縷の罪悪感
    を抱きながら、、、

その結果、日本での「生チョコ」人気の火付け役となった(と個人的には思っ
ている)「ジュネーヴの石畳」を土産品と決め、滞在期間中通い詰めることに
なったチーズフォンデュ専門レストランを探し出しました。(^0_0^)

幸か不幸か、数日間に亘る本委員会の審議が行なわれることになったため、
さらにジュネーヴから列車で1時間程度のモントルー(ジャズフェスティバル
で有名)のレマン湖畔にある古城「シヨン城」まで足を延ばしたり、同じレマ
ン湖に面したローザンヌの街を散策する時を得ることができました。

   ~レマン湖畔といえば、チャプリンをはじめ著名な芸術家の住まいや
    近代建築の巨人ル・コルビュジェの「小さな家」がありましたね

 ▼レマン湖地方
  http://www.myswiss.jp/jp.cfm/area/region/09/

モントルー駅からシヨン城まで雪道を滑りながら歩いて到着したときは、折悪
しく入場券売り場の担当者の昼食時間帯で、観光客も来るような時期でもない
ためか、休憩終了時刻を過ぎても誰も窓口から顔を出さず、結果的に、避寒施
設も何もないところで1時間ほど待って、やっと入城できました。
それでも、深い歴史が刻まれたシヨン城は、規模は小さいものでしたが、一見
の価値はあるものでした。

 ▼シヨン城
  http://www.ne.jp/asahi/yume/dreams/main/Photo_cillon.htm

そうこうしている間も条約採択に向けた専門家による努力によって最終案として
取りまとめられた両条約案が20日の外交会議で採択され、WIPO加盟各国の
署名のために公表されるに至りました。

◆5◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 インフォメーション
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とりあげたいテーマ等、皆様からのご意見、ご感想、ご希望などお聞かせ頂け
れば幸いです。次号もよろしくお願いいたします。

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   JRRC副理事長 瀬尾 太一   

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