JRRCマガジンNo.274 著作者の権利について(その13)

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JRRCマガジン  No.274 2022/5/12
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◆今回の内容
【1】川瀬先生の著作権よもやま話
【2】著作権講座初級オンライン開催について(無料)
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皆さまこんにちは。

風の薫る季節となりました。
皆さまいかがお過ごしでしょうか。

さて、今回は「著作者の権利について」の続きです。どうぞお楽しみください。
バックナンバーは下記からご覧いただけます。
⇒https://jrrc.or.jp/category/kawase/

◆◇◆━川瀬先生の著作権よもやま話━━━
  著作者の権利について(その13)
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9 著作権(財産権)について
(1)著作権の性質
  説明済み
(2)支分権の内容について
ア、複製権
イ 上演権・演奏権
ウ 上映権
エ 公衆送信権・伝達権
 以上説明済み

オ 口述権(24条)
口述とは、「朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達すること(実演に該当するものを除く。)」(2条1項18号)です。口述に該当する行為としては、朗読会の会場で著作物の読み上げを行う行為、すなわちライブでの口述のみならず、当該口述を録音又は録画した記録媒体を用いて音声を再生する行為(2条7項)やマイク設備を利用して当該会場に設けられたスピーカから音声を流す行為(2条1項7号の2)も原則として口述に該当します。

なお、「実演に該当するものを除く」の意味ですが、実演については、「著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること」(括弧書略 2条1項3号))と定義されているので、口述から口演等が除かれるということです。例えば、同じ朗読会でも素人が作品を棒読みすれば口述、プロが情感を込めて読み上げれば口演となり、口演は一般に「上演」(2条1項16号)に該当することになります。

口述権とは、「言語の著作物を公に口述する権利」(24条)です。「公に」の意味はこれまで説明したとおりです。

カ 展示権(25条)
展示権とは、「美術の著作物又はまだ発行されていない写真の著作物をこれらの原作品により公に展示する権利」(25条)です。

現行法の制定について審議した著作権制度審議会では、旧著作権法においては美術的著作物の原作品を公に展示する権利について明確でなかったとしたうえで、自己の作品を公に提示する権利である音楽の演奏権(旧法では興行権)とのバランスを考慮すれば、美術的著作物の原作品の公への展示等について権利を認めることが適当であるとしました(著作権制度審議会審議記録(一)(1966(昭和41)年11月 文部省 203頁、204頁)。
現行法の展示権はこの答申を踏まえ創設されたものです。

展示権の内容ですが、まず、展示権の対象は美術の著作物と未発行の写真の著作物に限定されていますしたがって小説、論文等の言語の著作物、楽譜、地図、図表等については、そもそも権利の対象外ということになります。また、写真の著作物は、未発行の著作物とさらに限定されていますので、例えば写真が写真集や雑誌に掲載され頒布されてしまうと、それ以降の展示については権利が働かないことになります。

次に、展示権は原作品の展示に限定されています。原作品とはオリジナル作品のことをいい、例えば絵画であれば通常は一品製作ですので、原作品は1つということになります。

ただし、美術作品や写真については、オリジナルコピーという概念があります。すなわち、例えば彫刻や版画のような作品は、作家が作成した鋳型、版木等を用いて複数、場合によっては多数の原作品が創作されることになります。
例えば版画の場合、作品の端に例えば32/100という数字が書いてあったとすると、これは版画家が100枚作成したうちの32枚目の作品という意味です。この場合、オリジナルコピーは100枚この世に存在することになりますが、この100枚とも原作品ということになります。

また、写真の場合ですが、写真家が撮影したオリジナルのネガフイルムからプリントした作品は全てオリジナルコピーとして原作品になります。

しかし、最近ではデジタル写真が主流ですので、オリジナルの写真データが他人に複製され、その複製物がさらに複製されること等もありうるので、どの写真が原作品かわかりにくいものとなっています。
ただ、写真の場合は、発行された写真には展示権がないので、先述したようにそれ以降のオリジナルコピー(原作品)の展示には展示権が働かないことになり、事実上問題は生じないと思われます。
ただ、イラスト等の美術作品も同様の方法で作成されており、アナログ時代に整理されたこの考え方を再整理する必要があるかもしれません。

なお、展示権は原作品の展示に限定していますので、例えば美術作品や写真が印刷されている書籍(美術の著作物等の単なる複製物)を展示しても権利が働かないことはいうまでもありません。

最後に、先述した著作権制度審議会報告では、美術的著作物の展示権の創設を認める一方で、美術作品等は有体物であり、その所有権は転々と移転する場合があるので、所有権者が美術作品等を公に展示することを認めたときに、展示権者の許諾がないと展示できない等の問題が生じないように、法律上措置すべきとしています。

このことから、現行法では、展示権に係る権利制限規定を設け所有権と展示権との調整を図っています(45条)。
また、未公表の美術又は写真の著作物の原作品を譲渡したときは著作物の公表に同意したと推定することとし、著作者人格権(公表権)との調整も図っています(18条2項2号)。

次回は、頒布権(26条)、譲渡権(26条の2)及び貸与権(26条の3)について解説をします。 

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【2】著作権講座初級オンライン開催について(無料)
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