JRRCマガジンNo.262 著作者の権利について(その9)

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JRRCマガジン  No.262 2022/1/6
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※マガジンは読者登録の方と契約者、関係者の方にお送りしています
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◆今回の内容
【1】川瀬先生の著作権よもやま話
【2】1月25日開催 大阪工業大学共催 著作権講座(オンライン)受付開始のお知らせ
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年頭のご挨拶

メールマガジンの読者の皆様、明けましておめでとうございます。

昨年は、コロナ禍の影響で企業活動等にご苦労された方も多いと思います。
本センターも昨年は契約者からいただいた使用料を権利者に分配するため利用実態調査を行うことにしていたのですが、コロナ禍の影響で出勤している人が少なくて調査ができない等のお声があり、調査の実施を延期せざるを得ませんでした。
オミクロン株の影響等が気になるところですが、本年前半には調査を実施したいと考えています。
今後契約者の皆様には調査協力をお願いすることになると思いますが、使用料の適切な分配に必要な作業ですので、ご協力よろしくお願いします。
 また、昨年末のニュースを見ても検査結果の改ざん問題等の法令遵守や説明責任に関する課題を抱えた事件が散見されます。
新聞、書籍等を複製する場合は原則著作権者の許諾が必要となりますが、本センターと契約を結ぶことにより適法に複製を行うことができます。おかげさまでこの考えが理解されつつあるのか、本センターと契約を結んでいただける方が確実に増加しております。
管理著作物のレパートリーについても、利用者からの要望が強かった日経新聞等の管理を昨年から開始しました。
このように本センターでは、管理著作物のレパートリーの充実にも努めています。
 本センターは、利用者の皆様が安心して著作物を適法に利用できるよう本年も引き続き努力をしていきます。
また、委託者の皆様にも満足していただけるよう適切な管理を行っていきます。
 本年も日本複製権センターをよろしくお願いします。

      公益社団法人日本複製権センター 理事長 川瀬 真

◆◇◆━川瀬先生の著作権よもやま話━━━

  著作者の権利について(その9)

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9 著作権(財産権)について
(1)著作権の性質
著作権は財産権ですので、特許権、意匠権、商標権等の他の知的財産権と同様、譲渡や相続の対象になります。
また、著作権に質権を設定したり、譲渡担保の対象にするなど資金調達の際の担保にもなります。

著作者の権利者は、著作者が著作物を創作した時点で自動的に著作者人格権と著作権(財産権)の両方が発生するという仕組みになっていますが、両者の権利は全く性質を異にする権利ですので、著作物の利用者から見ると分かりにくいものとなっています。

著作権の特徴を整理すると次のとおりです。

ア 著作者と著作権者
上記のとおり著作物を創作した時点では原則として著作者と著作権者(著作権を有している者という意味)は同一ですが、契約等により著作権が他人に譲渡されると著作者と著作権者は異なることになります。また、著作者の死亡により相続が行われる場合も同様です。

著作者と著作権者が異なるのは珍しいことではありません。例えば、著作物の創作を委託する契約の中で、著作権を資金提供した委託者に帰属させる契約も多いです。
懸賞小説や論文の世界でも応募要領の中で入選作の著作権は主催者に帰属させる規定が盛り込まれていることもあります。また、特殊な例としては、音楽の作曲家・作詞家と音楽出版者の関係です。商業的な音楽の世界では、音楽の商業的利用の促進を行っている音楽出版者が作曲家等との契約により作品の著作権の譲渡を受けて著作権管理を行っている実態があります。
これは、著作者は創作に専念し、著作権の管理は専門家に任せるという分業制であり、わが国だけでなく欧米等では一般的な形態です。ただし、この場合は、著作権管理のための譲渡ですので、契約上は契約違反があった場合の権利の返還や音楽出版者が受領した著作権料の一定割合を作曲家等に分配する等の条件が定められており、完全な譲渡ではありません。

いずれにしても、著作物を複製、公衆送信等の方法で利用する場合、利用者は著作者ではなく著作権者に許諾を求める必要があることになります。

ただ、誰が著作権者かを確認するのは難しい場合があります。著作者の権利の発生は無方式主義ですので、例えば不動産登記の保存登記や特許法に基づく設定登録の制度がないので、著作物を創作しても創作の事実を公示する登録制度がないこと、二重譲渡の防止等にための対抗要件の登録(77条)はありますが、ほとんど利用されていないこと等から、現在誰が著作権を持っているかを確認するための公的制度は事実上機能していません。したがって、このことは事実関係を調べる以外にはなく、特に契約書がない場合は誰が著作権者か判断に苦慮することもあります。

なお、著作権法上、映画の著作物の場合は著作権の帰属について特別な取扱いになっています。
映画の著作物の場合、著作者は、原作、脚本、音楽等の著作者を除き、「制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者」(16条)とされており、一般的には、総監督だけでなく、プロデューサー、撮影監督、美術監督等も著作者になりうることになります。
しかし一方で、これらの著作者が映画の製作に参加することを約しているときは、著作権譲渡契約の有無にかかわらず、その著作権は映画製作者(映画の著作物の製作に発意と責任を有する者(2条1項10号) いわゆる「映画会社」のこと)に自動的に帰属することになっています(29条1項)。

イ 支分権
著作権は、複製権、公衆送信権等著作物の利用に沿った小著作権(これを「支分権」と呼んでいます)からなる権利の束です。
この支分権については、時代の進展とともに著作物の利用形態が変化していますので、それに合わせるために権利の内容が変わったり、新たな権利が加わったりしています。
例えば、現行法の制定時は有線又は無線で公衆に送信する行為は、放送と有線放送しかなかったので、放送権と有線放送権が創設されましたが、その後1980年代になってデータベースのオンラインサービスが普及したことにより、当時は有線でのサービスしかなかったので有線放送権をリクエスト型の送信も含めた有線送信権に改めました(1986(昭和61)年改正)。
その後のインターネットの普及や有線か無線かの区別がなくなったところから、放送権と有線送信権を一つにして現在の公衆送信権に改めました(1997(平成9)年改正)。
また、1980年代から貸レコードがビジネスとして発展し著作権者の利益を脅かしているのではないかという問題が生じましたので、それに対応するため著作者に著作物(映画の著作物を除く)の複製物を公衆に貸与する権利を創設したところです(1984(昭和59)年改正)。
 支分権の内容については後日詳しく説明します。

ロ 著作権の譲渡とその方法
著作権法では、「著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる」(61条1項)としています。著作権の譲渡については、例えば物(有体物)の譲渡とは異なる取扱いがされています。

(著作権の全部譲渡)
まず、著作権の全部譲渡ですが、全部譲渡というのは利用形態ごとに定められた複製権、公衆送信権等の支分権を一括して譲渡することをいいます。
ただし、著作者保護の立場から、著作権譲渡の目的として、二次的著作物を創作する権利(27条)及び二次的著作物の利用権(28条)が契約の中で特掲されていないときは、これらの権利は著作者に留保されたものと推定されることになっています(61条2項)。
この規定は、例えば懸賞小説の募集要項に入選作品の著作権は主催者に帰属しますという定めがあれば、応募者(著作者)はそれを承知で応募しているので入選作品の選定と同時に応募者の著作権は主催者に譲渡されることになります。
その後主催者はこの入選作品を例えば書籍として販売したとしても応募者の許諾を得る必要はありません。
ここからが問題でその書籍が大ヒットして世の中で広く認知されれば、その小説を映画化する話や外国語に翻訳して海外で販売するということになることが想定されます。
この場合に上記の留保推定があれば、応募要領に単に著作権は主催者に帰属すると書いているだけだと、27条の権利(映画化権、翻訳権等)は応募者に留保されていると推定されるため、主催者の反証が認められない限り、これらの権利は応募者が行使をすることができることになります。この規定は、著作権の知識に乏しい著作者を保護する規定ですが、一方で著作権の譲受人から見ると、著作権の全部の譲渡を受けたと安心していたら実はそうではなかったということにもなることから、契約社会が成熟しつつある現在ではこのような特例規定は必要ないのではないかという意見もありますが、改正には至っていません。

したがって、現行法の下で著作権の全部譲渡を受けたければ、譲渡契約の中で「著作権(著作権法27条及び28条の権利を含む)を譲渡する」という文言を入れる必要があることになります。
なお、推定規定の反証ですが、裁判では、委託料、賞金等が通常の相場より高いこと、譲受人が例えば翻訳権や翻案権を行使しているのを長い間黙認していたこと等の諸般の事情が考慮され綜合的に判断されることになります。

(著作権の一部譲渡)
著作権の一部の譲渡ですが、著作権の内容を分割して譲渡することが可能です。
著作権は著作物の利用形態ごとに支分権が定められていますので、例えば、著作権の中の複製権を譲渡するという支分権ごとの譲渡はできます。
また、実務上はその権利をさらに細分化して譲渡することも可能であると解されています。
例えば、複製権を更に分割して、出版する権利、複写する権利、録音する権利というような形態です。
どこまで細分化できるかについては、当然限界があると思いますが、実務的に特に支障がない限り相当細分化できるというのが一般的な考え方です。

次に、時間的制限を付して譲渡することも可能です。著作権の譲渡は物(有体物)の譲渡とは異なり、物の引渡しという行為はありません。
したがって、例えば3年間という期間を設けて、その期間が満了すれば自動的に著作権が元の権利者に返還されるという定めは実務的にもよくある契約です。
例えば、先ほど説明した作詞家・作曲家と音楽出版者が締結している音楽出版契約では、よくあるパターンとして、契約期間を10年とし自動更新条項がある場合は、その期限内に契約終了の通告をすれば、著作権は自動的に返還されることになっています。

さらに、地域を限定して著作権を譲渡する契約です。各国の著作権法は一般的に自国の領域内でしか適用されません。
ベルヌ条約やWTO協定に加盟することにより、例えば米国における著作権、仏国における著作権、韓国における著作権というように国ごとに別の権利が発生することになります。
したがって、例えば日本国民の著作物を米国で利用する場合の方法の一つとして、米国の事業者に米国における著作権を譲渡するという契約が行われます。このように著作権の性質から、著作権を国ごとに分割して譲渡することは実務的には広く行われています(もともと全世界における著作権というのはありえないので、分割して譲渡という言い方は不適当かもしれません)。
問題は、日本の地域を限定して著作権を譲渡することができるかです。
この点については、著作権を分割して、本州、関東、東京、板橋区の著作権というようにどこまで細分化できるかが問題になります。
この点については、分割譲渡できるという考え方が主流のようですが、私見では、同一の法領域内における地域分割譲渡は権利の独立性が維持できるかや、分割譲渡することにより実務上混乱が生じないか、更には誰かに権利行使を独占させたければ権利行使の委任や独占的利用許諾の付与等の契約で代替可能であること等を考えると消極的に解さざるを得ないと考えます。

次回は、著作権の性質の続きとして、著作権を担保にした資金調達等について説明します。

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【2】1月25日開催 大阪工業大学共催 著作権講座(オンライン)受付開始のお知らせ
本年度最後の著作権講座です。参加は事前登録制です。
内容は初級レベルの講義と利用者が関心をお持ちと思われる2つのトピックス
「検索サービスとfair use」と「コンテンツ流通促進の現状と課題」を予定しています。

本日より受付開始! ↓詳細は当センターHPをご参照ください。
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JRRC代表理事 川瀬 真

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