JRRCマガジンNo.259 著作者の権利について(その8)

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JRRCマガジン  No.259 2021/12/9
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◆今回の内容
【1】川瀬先生の著作権よもやま話
【2】日経紙等利用許諾について
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◆◇◆━川瀬先生の著作権よもやま話━━━

  著作者の権利について(その8)

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8 著作者人格権
(2)著作者人格権の種類とその内容
③同一性保持権(20条)
ア 同一性保持権の内容
 前回説明済みです。 
イ 同一性保持権が働かない場合
 前回説明済みです。

ウ 翻訳、編曲、変形又は翻案による著作物の利用と同一性保持権の境界領域の問題
著作物を翻訳、編曲、変形又は翻案(脚色化、映画化、要約等)(以下「翻案等」という)する場合は二次的著作物の創作権(27条)の権利が働くことになっています。
この権利は翻案等の創作行為によって元の著作物とは表現を異にする別の著作物(元の著作物に依拠して創作されるので「二次的著作物」と呼んでいます)を創作することになるので、その過程で行われる内容の変更等と同一性保持権の関係が問題になります。

現行法の起草者は、著作権法で保護される表現を外面的な表現(言語の著作物であれば具体的な文章表現)と内面的な表現(例えば小説で言えば話の筋(ストーリ))に分けた上で、翻案等とは、例えば小説とその映画のように内面的な表現を維持しつつ、外面的な表現を別な表現にすることを言うとし、この内面的な表現を変更する場合(例えば話の筋を変える)は同一性保持権の問題が生じるが、内面的な表現の変更を行わず、翻案等の過程で生じる必然的で避けがたい表現の変更については、規定には明記していないが当然のこととして同一性保持権の問題は生じないとしていました(加戸守行著「著作権法逐条講義(六訂新版)」(著作権情報センター 2013年発行 176頁)。

ただ、最近ではこの表現形式の差で同一性保持権の問題を考えるのではなく、表現の人格的要素の発露を変更したかどうかで判断する必要があるとの考えが主張されています。
確かに、上記の「必然的で避けがたい表現の変更」がどのような状態を意味するのかはわかりにくいです。例えば、翻訳の場合、明らかな誤訳はこの基準に抵触し、同一性保持権の問題が生じます。一方、翻訳者の技量不足により単語や熟語の選択、表現の仕方が適切でなかったという場合や、小説のストーリー性は維持されているが脚本家の技量不足により、小説家の創作意図が十分表現できていない場合などは「必然的で避けがたい表現の変更」といえるかどうか疑問です。
私見では、二次的著作物の創作者の技量不足による原作者の創作意図とは異なる二次的著作物の創作や、例えばプログラムや論文のような表現形式の差では説明ができにくい著作物の存在等を考えると、結論はあまり違わないかもしれませんが、近時の考え方のほうが説明しやすいのではないかと考えます。

エ 契約における著作者人格権の不行使特約の問題
著作者人格権は一身専属権であり譲渡できないところから(59条)、著作物の委託制作等においては、作成された著作物の著作権の譲渡契約とともに、著作者人格権の不行使特約を交わす場合があります。特にプログラムやある種の映像作品のように作品の納入後の事情の変化により作品の取扱いや改変を行う必要性が想定される場合はこのような契約が行われる場合が多いようです。
著作者人格権が譲渡できない権利(59条)であることから、その放棄もできないとすれば、あらかじめ著作物の取扱いや改変を認める契約は無効であるとする考えもあります。
著作者人格権が人格権としての性質を有することは間違いありませんのが、例えば民法上の名誉権と同等かといえばそうではないところから、著作者人格権の不行使特約については一応有効と考えられています。ただし、どのような行為まで有効かについては、著作者人格権の性質上おのずと限界があると考えられます。

まず、公表権と氏名表示権ですが、これらの特約については、譲渡契約時にあらかじめ具体的な取り決めをすればいいのであって、著作権の譲渡先だけの事情によって勝手に公表の時期や方法、氏名の表示方法を変えることができるのか疑問があります。
特に、氏名表示については、著作者の名誉に関わる問題でもあるので、著作者の具体的な同意なしに他人名義にすることは、真にやむを得ない場合に限定されるのではないかと考えます。

同一性保持権については、譲渡契約後に、法改正によるルールの変更等当初予想しなかった事情の変更がありうるので、それに備え同一性保持権の不行使特約を結ぶのは問題がないと思います。
特に同一性保持権は、著作者の意に反する改変を阻止できる権利であり強力な権限を著作者に与えているので、著作者の同意がないと著作物を利用できない状況を回避するためにも有効と考えられます。
もっともやむを得ない改変は同一性保持権が適用されないので(20条2項4号)、不行使特約がなくても一定の改変は許されることになりますが、解釈上の疑義を生じさせないという点では契約上明記したほうが問題は生じにくいことになります。
問題はやむを得ない改変を超える改変です。この点については、同一性保持権が著作者の意に反する改変を阻止できる権利と定めているので、著作者の同意があればやむを得ない改変を超える改変についても有効と考えられます。
ただし、著作者の名誉又は声望を害する改変までも有効かについては疑問の残るところです。
例えば、ある会社の評価を低下させようとする意図で、その会社から納入されたプロブラムを改変し性能を落した上で、販売する場合です。人格権の1つである名誉権を譲渡又は放棄させる契約は一般に無効と考えられているところから、そのバランスを考えると名誉又は声望を害する改変行為については認められないと考えます。

9 名誉又は声望を害する著作物の利用に関するみなし侵害(113条11項)
この規定は、著作者人格権の公表権、氏名表示権及び同一性保持権とは性格を異にしますが、第4の著作者人格権と呼ばれています。

著作権の基本条約であるベルヌ条約では、著作者人格権を「著作物の創作者であることを主張する権利及び著作物の変更、切除その他の改変又は著作物に対するその他の侵害で自己の名誉又は声望を害するおそれのあるものに対して異議を申し立てる権利」と定めており、「著作物に対するその他の侵害」から著作者を保護する措置として、本規定が定められています。

利用の形態としては、例えば著作物の改変を伴う場合は同一性保持権侵害になりますので、著作物をそのまま利用することを前提として、著作物の創作意図とは異なる利用や著作物の芸術的価値を損なうような利用が想定されています。
例えば、厳粛な宗教音楽をわいせつなショーの音楽として利用することや芸術作品を著作者が望んでいない場所に設置することが該当するとされています。

著作者人格権についての解説はこれで終わりです。次回からは著作権(財産権)に関する説明をします。

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【3】日経紙等利用許諾について
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