JRRCマガジンNo.260 アメリカ著作権法のABC 5. 著作権の保護②(権利の種類・著作者等)

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JRRCマガジン  No.260 2021/12/16
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◆今回の内容
【1】白鳥先生のアメリカ著作権法のABC Chapter 5. 著作権の保護②(権利の種類・著作者等)
【2】1月25日開催 大阪工業大学共催 著作権講座(オンライン)のお知らせ(予告)
【3】日経紙等利用許諾の申込みについて
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みなさまこんにちは。
今年も残すところあと僅かとなりました。当センターの今月の営業日は28日までです。
年末年始の休業の詳細については、下記のお知らせ一覧からご確認いただけます。
⇒https://jrrc.or.jp/event/211206-2/

さて、本日の連載は白鳥先生の「著作権の保護」の続きです。

これまでの連載は↓こちらからもご確認いただけます。
⇒https://jrrc.or.jp/category/shirotori/

◆◇◆アメリカ著作権法のABC━━━━━━
Chapter 5.  著作権の保護②(権利の種類・著作者等)
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5.1  イントロダクション
本連載のタイトルは、いまや、気持ち的には「アメリカ著作権法のABCD」です!「ABCからその先へ!」ということで、前回は、もともとのタイトルには無い「D」(Detail:ディテール)パートに突入し、その初回として、著作権の保護要件について取り上げました。
それでは、保護要件を満たすことにより成立する「著作権」は、アメリカ法ではどのように位置づけられているのでしょうか。
今回は、「著作権の保護」の第2弾として、アメリカ法の「著作権」の特徴を確認するとともに、著作権(排他的権利)の「権利の種類」や、「著作者」等について、見ていきたいと思います!

5.2  アメリカ法の「著作権」の特徴(著作隣接権や著作者人格権との関係)
(1-1)「録音物」も著作物
ご存知の方も多いと思いますが、アメリカ連邦著作権法には、著作隣接権制度はありません。
その代わり…というべきでしょうか、アメリカ法における著作物(works of authorship)の範囲は広く、「録音物」(sound recordings)が含まれます(102条(a)(7))。「録音物」については、「一連の音楽、口頭その他の音を固定した結果得られるもの(works)」と定義(101条参照)されていますので、日本の著作権法でいえば「レコード」に相当するものといえます。ということは、日本法では著作隣接権の保護対象である「レコード」が、アメリカ法では「著作物」(works of authorship)に含まれ、「著作権」の保護対象とされていることです。アメリカ連邦著作権法において、著作物概念の定義がないというのは、実は、著作隣接権制度を用意しない分、著作物概念について、(政治的な?)柔軟性を持ち合わせようとしている側面もあるのかもしれません。
(1-2)結構狭い著作者人格権
著作者人格権は、一般に、「モラル・ライト」(moral right(s))と呼ばれます(ただし、制定法である連邦著作権法上の用語ではありません)。この権利についてのアメリカの基本スタンスは、あえて明文化しなくても、既存の連邦法や州法をあわせてみれば、事実上保護されているとするものです。アメリカ連邦著作権法にも著作者人格権の定めが、あるにはあるのですが(106条A)、著作権とは独立した権利として後付けで設けられ、その権利の範囲は、限定的です。1990年改正により新設されました。
具体的には、「視覚芸術(visual art)の著作物」の著作者のみに認められ、かつ、この場合の「視覚芸術の著作物」の範囲は、狭く設定されています(200点以下の限定版として存在する絵画、版画、彫刻等であることなど(さらに、職務著作物は除外。101条の“work of visual art”の定義参照))。また、氏名表示(attribution)と同一性保持(integrity)に関する権利だけが認められており、公表権は位置づけられていません。さらに一定の条件のもと、放棄が可能とされています(106条A(e)(1))。

5.3 権利の種類
Chapter 3(第3回)でも少し取り上げましたが、アメリカ連邦著作権法における著作権(排他的権利)の種類は、大きくいって、5つあります。それは、①複製権(106条(1))、②翻案権(106条(2))、③頒布権(106条(3))、④実演権(106条(4)・(6))、及び、⑤展示権(106条(5))です。日本の著作権法に比べると、支分権のくくり方がシンプルというか、ザックリしている印象を受けます。
これらのうち、①複製権(to reproduce)と②翻案権(to prepare derivative works)は、日本著作権法の支分権とも近く、理解しやすいと思います。②は、いわば「二次的著作物をつくる権利」ということで、日本の著作権法でいえば、27条(翻訳権・翻案権等)に対応します。他方、残りの権利(③~⑤)は、日本の著作権法でいえば、公衆への提示・提供に関する権利(22条~26条の3)に対応しており、アメリカ法においても、「公に」行われる利用が対象です。
まず、③頒布権(to distribute to the public)は、日本の著作権法でいえば、典型的には、26条の2(譲渡権)や26条の3(貸与権)に対応しています。しかし、そのような、有体物の提供により譲渡や貸与を行うものだけでなく、電子ファイルのインターネット送信(日本著作権法における「公衆送信」の一部)についても、(複製権+)頒布権でカバーされるとする考え方が、いまでは一般的です(U.S. COPYRIGHT OFFICE, THE MAKING AVAILABLE RIGHT IN THE UNITED STATES 19 (2016), https://www.copyright.gov/docs/making_available/making-available-right.pdf(以下「2016年アメリカ著作権局レポート」)。
次に、④実演権(to perform publicly)についてですが、これは、上演、演奏、上映等といった、公衆への提示を広くカバーする権利といえます(101条の“perform”の定義を参照)。インターネットによるストリーミング配信や、放送・有線放送(日本著作権法における「公衆送信」の一部)も含まれます。ただし、著作物のうち、「絵画、グラフィック又は彫刻の著作物」と「建築の著作物」に実演権は認められておらず(106条(4))、また、「録音物」については、「デジタル音声送信」(digital audio transmission)によるものについてだけ、実演権が与えられています(106条(6))。
最後に、⑤展示権(to display publicly)ですが、「展示」とは、著作物の複製物を見せること(to show)をいい、映画等の個々の画像を断片的に見せることも含みます(101条の“display“の定義を参照)。したがって、インターネット上で画像を公開すること(日本著作権法における「公衆送信」の一部)も、展示権の対象です。「録音物」と「建築の著作物」以外であれば展示権の対象となります。こうして、日本著作権法の25条(展示権)よりも、広い概念です。
なお、このように、頒布権や実演権等にインターネット送信が含まれるとしても、現実の送信の一歩手前の行為、すなわち、日本法でいえば「送信可能化権」が含まれるのかは、気になりますね。公衆への伝達権を定めるWIPO著作権条約8条は、利用可能化権も含めて規定していますが、アメリカ著作権法106条の文言は、そのような権利が含まれることを明示していないからです。
この点、2016年アメリカ著作権局レポートは、立法経緯等も踏まえ、利用可能化権も、現在の106条でカバーされているとの考え方を示しています。

5.4 著作者(特に、職務著作について)
著作権は「著作者」が原始取得します(201条(a))。そして、日本法と同じように、アメリカ連邦著作権法においても職務著作制度があり、職務著作物(works made for hire)については、雇用主その他の使用者が、著作者として位置づけられます(201条(b))。この場合、使用者は、書面で別段の定めをしない限り、著作者として、職務著作物についての著作権を有することになります。しかし、上記のとおり、著作者人格権は有しません。
他方、日本法では、雇用関係がない場合(又は、「雇用関係の存否が争われた場合」)に職務著作が成立するかという議論がありますが、アメリカ法の場合は、雇用関係にない者であっても、特定の場合に、職務著作が成立することが明示されています。すなわち、①特別に依頼を受けて著作物を作成し、それが、②特定のカテゴリー(集合著作物への寄与として作成する場合や、映画その他の視聴覚著作物の一部として作成する場合など、9つのカテゴリーが法定されている)のいずれかに属する場合であって、かつ、③当事者が署名した文書において職務著作物とする旨の明示の合意をしている場合に、職務著作物として位置づけられます(101条の“work made for hire”の定義を参照)。

5.5 保護期間
著作権の保護期間の原則は、日本と同様に、著作者の死後70年までです(302条(a))。他方、無名・変名著作物や職務著作物の場合は、発行から95年又は創作から120年のうち短い方とされています(302条(c))。この点は、日本の著作権法の場合は「70年」ですから(52条~54条)、アメリカ法の方が長いですね。
アメリカでは、1998年の保護期間延長法(ソニー・ボノ法)により20年延長されたのですが、この延長について、アメリカ合衆国憲法修正第1条(表現の自由)との合憲性が争われました。この点について、連邦最高裁は、著作権の保護は表現についてであってアイデアには及ばないことや、フェア・ユースの存在などを挙げて、表現の自由との調和は著作権制度に組み込まれているとし、合憲であると結論付けています(Eldred v. Ashcroft, 123 S.Ct.769(2003))。

ところで、著作物のうち、「録音物」(レコード)は、かつては、1972年2月15日より前に固定(録音)されたものは、連邦著作権法では保護されていませんでした。しかし、2018年の改正により、それらの無断利用に対しても、原則として、著作権侵害と同じ民事救済(差止請求等)を受けられるようになったところです(1401条)(なお、14章はこの1条しかありませんが、やたらと長い条文です。また、2018年改正は、Classics Actなどと呼ばれますが、「クラシック音楽」だけが対象なのだと勘違いしないようにしましょう。)。
その保護期間としては、原則として、最初の発行から95年ですが、実際に発行された年の区分に応じて、95年よりも長い保護期間が与えられています(例えば、最初の発行が1923年から1946年までの録音物の場合は「+5年」)(1401条(a)(2)(B))。

5.6  小括
以上、「著作権の保護」について見てまいりましたが、いかがでしたでしょうか。
ところで、今回取り上げたトピックで、何かお気づきになられたことはありましたでしょうか? ヒントは、「排他的権利」です。
そうなのです。「排他的権利」は英語で “Exclusive Right(s)“と言いますので、実は今回、ひそかに「E」パートに入っていたのでありました!
ということで、「ABCDE」と来たわけです。ならば、次は…?
次回もどうぞお楽しみに!

(横浜国立大学国際社会科学研究院准教授 白鳥綱重)

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【2】2022年1月25日開催 大阪工業大学共催 著作権講座(オンライン)のお知らせ(予告)
2021年度最後の著作権講座です。参加は事前登録制です。
内容は初級レベルの講義と利用者が関心をお持ちと思われる2つのトピックスを予定しています。
詳細が決まりましたら、↓当センターHPにてお知らせします。
⇒https://jrrc.or.jp/educational/kouza/

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【3】日経紙等利用許諾の申込みについて
ご要望が強かった日本経済新聞社発行の新聞「日本経済新聞」「日経産業新聞」
「日経MJ」および「日経ヴェリタス」(これらを「日経紙等」といいます。)
2021年8月10日より管理を開始しました。 
詳しくはこちら↓よりご確認いただけます。
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