JRRCマガジンNo.187 著作物等の保護期間について(その2)

川瀬真

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JRRCマガジン No.187 2019/12/5
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※マガジンは読者登録の方と契約者、関係者の方にお送りしています

みなさまこんにちは。いよいよ2019年の年の瀬ですね、慌ただしい日々を過ごされていることと思います。
先日、2020年東京オリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場が完成しお披露目が行われました。
完成まで紆余曲折ありましたが「杜のスタジアム」というコンセプトのもと明治神宮外苑など周囲の環境と調和したスタジアムは既に街に溶け込んでいます。
JRRCは設立から28年、この国立競技場のある北青山で業務を行ってきましたが、
このたび街の再開発に伴い新天地へ行くことになりました。1月中旬からは虎ノ門に場所を移し業務を行っていく予定です。
詳細は改めてご案内いたしますが、JRRCも2020年は変化の年になりそうです。

今週は川瀬先生のコラムをお届けします。

◆◇◆◆◇◆川瀬先生の著作権よもやま話━

  著作物等の保護期間について(その2)

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(お詫びと訂正)
はじめに先に掲載しました
「著作物等の保護期間について(その1)」
の「1 はじめに」において、現行法における保護期間を「放送後70年又は有線放送後70年まで」としていましたが、
「放送後50年又は有線放送後50年まで」の間違いでした。この場をお借りしましてお詫びと訂正をさせていただきます。

前回(その1)はこちらから
⇒https://jrrc.or.jp/category/kawase/

3 著作物に関する保護期間の特例

(1)保護期間が延長されたときの経過措置

①原則
著作権法の改正により保護期間が延長された際、改正著作権法の施行時に著作権が消滅していなければ改正後の長い保護期間に乗り移れるが、
著作権が消滅していると著作権は復活せず著作権は消滅したままであるという経過措置です(原始附則2条1項等)。
この措置は、一旦保護期間が満了し著作権が消滅している著作物の保護が復活すると、著作物の利用秩序が混乱し、法的安定性を害するおそれがあるところから設けられたものです。
最新の改正で説明しますと、2018(平成30)年の著作権法改正で原則的保護期間が著作者の死後50年までから死後70年までに延長されたところですが、
この場合、改正法の施行日である2018(平成30)年12月30日時点で既に著作権が消滅しているかどうかが問題となります。

次の2つの例を見てください。

死後50年までで計算した保護期間の例
1967(昭和42)年死亡 1967(昭和42)年+50年=2017(平成29)年12月31日まで
   例 山本周五郎(作家)
1968(昭和43)年死亡 1968(昭和43)年+50年=2018(平成30)年12月31日まで
   例 藤田嗣治 (画家)

この場合、作家の山本周五郎氏は、2017(平成29)年12月31日の時点で保護期間が満了していますので、経過措置により、著作権は消滅したままで、復活はしません。
一方、画家の藤田嗣治氏は、保護期間が満了する1日前に保護期間が延長されましたので、延長された保護期間に乗り移ることができ、結局、2038年12月31日まで保護されることになります。

②経過措置に関する最高裁の判例
2018(平成30)年の改正の場合は改正法の施行日が12月30日だったので分かりやすいのですが、
例えば映画の著作物の保護期間が公表後50年までから公表後70年までに延長された2003(平成15)年の著作権法改正の場合は、複雑な問題があります。
通常、改正法の施行日は、法改正の翌年の1月1日が多いのですが、上記の法改正の場合も施行日は2004(平成16)年1月1日でした。
政府は現行法が制定された1970(昭和45)年以降一貫して1月1日付けで保護期間が延長される場合、前年の12月31日に権利が満了することになっている著作物の保護期間は延長されると解釈してきました。
しかし、1953(昭和28)年に公表された団体名義の著作物である映画「シェーン」の保護期間について争われた裁判において、
最高裁は同映画の保護期間は2003(平成15)年12月31日で満了し著作権が消滅したので、改正後の保護期間に乗り移れないと判示しました(最高裁<2007(平成19)年12月18日判決>)。
この判断に対しては、現行法の制定過程を知る関係者等から強い異論もあるところですが、これ以降の解説はこの最高裁判決に従い説明をしていくことにします。

③特別な例<写真の著作物>
写真は、1889(明治32)年の旧著作権法(旧法)の制定時には既に存在していましたが、当時はまだ肖像写真が中心の時代で、
他の著作物に比べて創作性が低いという理由から、他の著作物の原則的保護期間が死後30年までであったにもかかわらず、
発行後10年まで(未発行の場合は創作後10年まで)という短い保護期間でした(旧法23条)。
その後現行法制定までの暫定延長で最終的には発行後13年まで延長されました(旧法52条3項)。
現行法の制定によって、死後起算ではありませんが公表後50年までに延長され(法55条)、1996(平成8)年の改正により、
他の著作物と同様に原則として死後50年までになりました(法55条の削除)(現在は死後70年まで)。
写真の著作物については、旧法から現行法に移行するに当たり、保護期間が40年近く大幅に延長されたわけですが、この移行にあたり、①と同様の経過措置が適用されることになりました。
したがって、写真の著作物については、旧法下で発行又は創作された作品は、現行法の施行時である1971(昭和46)年1月1日時点で著作権が消滅していないものは長い保護期間に乗り移れますが、
それ以外の作品は著作権が消滅したままで復活しないということになります。
 
次の2つの例を見てください。

旧著作権法下における写真の著作物の保護期間(原則発行後13年まで)で計算した例
ア 1957(昭和32)年発行 1957(昭和32)年+13年=1970(昭和45)年12月31日まで
イ 1958(昭和33)年発行 1958(昭和33)年+13年=1971(昭和46)年12月31日まで
   
この場合、②で説明した最高裁判決に従うと、アの場合は、著作権が消滅したままで復活しませんが、
イの場合には現行著作権法の長い保護期間に乗り移れることになります。
このようなことから、例えば昭和時代を代表する写真家である土門拳(1990(平成2)年死亡)氏や木村伊兵衛(1974(昭和49)年死亡)氏については、
原則的保護期間(死後70年まで)で計算するとまだ全ての作品について著作権が保護されているように見えますが、戦前・戦後に撮影された名作品群の多くは著作権が消滅していることになります。
また、2019年度の文化勲章を受章された写真家の田沼武能氏の場合は、まだ現役でご活躍されているにもかかわらず、同様の状況にあるということです。
 
(2)旧法と現行法で保護期間の計算方法が異なる場合の経過措置<映画の著作物>

映画の著作物について現行法では、著作者が個人か団体かにかかわらず、一律公表後70年まで保護されることになっています(法54条1項)。
しかし、旧法の下では、映画の著作物は現行法のような特別の取扱いをしておらず、原則として他の著作物と同様でした(旧法3条~6条、22条の3、23条、52条)。

旧法における映画の著作物の原則的保護期間 
ア 独創性を有する映画 生前公表(原則)  著作者の死後38年                  
            死後公表      公表後38年
            無名又は変名で公表  公表後38年
            団体名義で公表    公表後33年
イ 独創性に欠ける映画 写真の著作物と同じ  発行後13年

アとイの違いですが、簡単に言うとアは劇映画、イはニュース映画のことをいいます。テレビ放送やビデオがなかった時代は、どちらも劇場で上映されていました。
現行法では、映画の著作物は死後起算ではなく一律公表後起算になりましたので、旧法下で公表された映画の著作物であって、著作者が監督個人であり、しかも実名で生前公表されているものについては、
旧法で計算した保護期間と比較すると短くなるものが出てくることになります。
したがって、現行法制定の際に、既得権の保護ということで、映画の著作物に限らず、旧法下で公表した著作物については、旧法で計算した保護期間が、現行法による保護期間より長い時は、
旧法の保護期間が適用されるという経過措置が設けられました(原始附則7条)。
判例としては、チャールズ・チャップリン(1977年死亡)が監督等であった映画(「サニーサイド」(1910年公表)、「ライムライト」(1952年公表)等9作品)の保護期間について争われた事案では、
当該作品の著作者はチャールズ・チャップリン監督個人と認め、死後起算による保護期間の計算を認めたものがあります(最高裁<2009(平成21)年10月8日判決>)。
また、邦画については、旧法下に公表された黒澤明監督(1998(平成10)年死亡)による作品について同様の判断をした判例があります(知財高裁<2008(平成20)年7月30日>)。

次回は、著作権関係条約に関連する特例措置について説明をします。

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