当サイトは主に本、雑誌、新聞等著作物の複写(コピー)に関する問い合わせ先をご案内しています

メニューを表示

知恵袋

美術館で、所有者が収集した作品を所有者の了解をえて作品展を行うが、その際、展示作品の図録を作成し販売したい。

私はある美術館の学芸員ですが、ある絵画所有者の了解を得て、その方が収集した現代作家の作品展を計画しています。その際、展示作品の図録を作成し売店で販売したいと思っています。図録のイメージとしては、1ページの三分の二程度を大きさで当該絵画のカラー写真を掲載し、残りのスペースを使って、私が書いた解説記事を掲載したいと思っています。この場合、絵画の著作権者の許諾を得る必要がありますか。(32条1項 47条)
美術の著作物の原作品を適法に展示する場合、著作権者の許諾を得ることなく、その「解説又は紹介をすることを目的とする小冊子」に当該著作物を掲載することができるとされています(著作権法47条)。
展示作品を解説する図録であれば、この「小冊子」に当たるようにも思われます。しかし、「小冊子」はあくまで「解説又は紹介することを目的とする」ものであることから、裁判例では、著作物の解説が主体となっているか、または著作物に関する資料的要素が多いことが必要とされています。すなわち、観賞用の書籍として市場で取引されるものと同様の価値を有するものは、実質的に画集であって、「小冊子」には該当しません(東京地裁平成9年9月5日判決〔ダリ事件〕等)。そして、1ページの三分の二程度の大きさで展示する絵画のカラー写真を掲載する場合、鑑賞用に供することが可能であると考えられます。したがって、このような図録は、「小冊子」には該当しないと考えられます。
また、このような場合には、解説記事が主であり、写真が従であるとはいえませんので、適法な引用にも該当しません(32条1項)。
以上から、このような図録を作成する場合には、別途著作権者の許諾が必要です。

回答者  山本隆司 弁護士 (インフォテック法律事務所)
※回答内容は本ケースにおける一例を掲載しています。
ページの先頭へ