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絵画の鑑定書を発行する際、ある美術館の図録にあった当該絵画の写真を鑑定書に複製したい。

私は美術作品の鑑定士ですが、顧客から依頼のあったある現代作家の絵画を鑑定し、鑑定書を発行しようと思っています。その際、当該作品を特定するため、ある美術展の図録にあった当該絵画の写真を鑑定書に複製したいと考えていますが、この場合、当該絵画の著作権者の許諾は必要でしょうか。(32条1項)
絵画は、美術の著作物に該当しますので、これを鑑定書に複製する行為は、権利者の複製権(著作権法21条)に抵触します。もっとも、公表された著作物は、引用して利用することに対しては権利制限されています(31条1項前段)ので、引用に該当する複製方法であれば、許されます。
引用は、引用する側の著作物と引用される側の著作物が明瞭に区別でき、前者が主、後者が従の関係があると認められる場合をいいます(最高裁昭和55年3月28日判決)。本件鑑定書における絵画の複製は、作品を特定するために行われるものなので、当然に両著作物を明瞭に区別する態様で行われていると思われます。また、鑑定書の対象となる作品を特定するという目的からすれば、鑑定書が主、当該絵画が従の関係にあると考えられます。(ただし、作品の特定や、特定部位の観察をいう目的から必要となる複製物や複製部位の大きさを明らかに超えて複製することは許されません。鑑定書に名を借りて観賞に供する資料を作成することは許されないことに注意が必要です。)
以上のとおり、本件では、一つの作品を特定する目的で鑑定書に複製するものですので、引用に該当し、当該複製には権利者の許諾を得る必要はないといえるでしょう。なお、絵画の鑑定書に絵画の複製物を添付した事案に引用の成立を認めた裁判例があります(知財高裁平成22年10月30日判決)。

回答者  山本隆司 弁護士 (インフォテック法律事務所)
※回答内容は本ケースにおける一例を掲載しています。
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