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JRRCマガジン No.218 2020/10/15
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みなさまこんにちは。
本格的に秋を感じるようになりました。
読書の秋ともいいますが、最近衝撃を受けた本があります。
「お金の学校」作者は坂口恭平さんです。
坂口さんは建築、絵画、執筆と多方面での創作を行いながら、
自殺志願者や生活に苦しむ方を救う活動を行なっています。
この「お金の学校」内容を語ると長くなるので割愛しますが、
(投資方法や錬金術ではありません。)
驚いたのがその出版方法です。
自費出版し、ネットで販売、ここまではよくある話です。
1冊1000円、10冊7000円、100冊50000円と、冊数が増えれば増えるだけお得になり、
買った人は無料で配っても転売してもOKというのだ。限定5000部は3日で完売。
もはや一人で創作から出版、配本までワンストップでできるような時代になったことを実感しました。
将来的に、万単位の部数でも難しいことではなくなるでしょう。
このような個人流通が増えていけば、著作物利用の許諾ルートは明確になっていきますので、
著作権の集中管理の仕組みについても、個別受託の制度を充実させていくことは、
今後の課題になっていくだろうと思いました。
さて、本日は川瀬先生のコラムをお届けします。
教育機関における著作物利用についての最終章です。
許諾が必要な利用とその手続きの見通しについて解説いただいています。
前回までのコラム
https://jrrc.or.jp/category/kawase/
◆◇◆━川瀬先生の著作権よもやま話━━━
学校等の教育機関における著作物等の利用について(その3)
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5 権利制限の対象でない著作物等の利用
(1)経緯等
本稿のその1で説明したように学校等の教育機関における著作物等の利用については、
「学校その他の教育機関における複製等」(35条)だけでなく、
「私的使用のための複製」(30条)、
「試験問題としての複製等」(36条)、
「営利を目的としない上演等」(38条)等
いくつかの権利制限規定の適用を受ける利用があります。
しかしながら、学校等の教育機関における教育活動を円滑に実施するためには、権利制限規定の対象とならない一定の利用について、
簡易・迅速に利用の許諾を与えることができる集中管理システムの構築が必要であると考えられます。
このことは、補償金制度の導入に際し、特に教育機関側から強い要望があったところであり、
補償金請求権の指定管理団体であるSARTRASにおいても補償金制度の仕組みの構築と並行して、複製権、公衆送信権等の集中管理のあり方の検討が進められています。
また、SARTRASは、設立当初からこの集中管理システムの構築及び実施を自らの事業として位置付けており、
その旨を同団体の定款に明記するとともに(定款4条)、許諾権の集中管理を規制している著作権等管理事業法による管理事業者としての登録を既に済ませています。
(2)許諾の対象となる行為
それではどのような利用行為に対し許諾を与える予定でしょうか。
これについては、現在検討中で結論はでていませんが、想定される利用行為として次のようなものが考えられます。
①授業目的の利用ではあるが35条の範囲外の利用
例えば、教育機関内における教員間で行われる授業目的の資料の複製、公衆送信等や教育委員会の管内の教育機関相互で行われる同様の行為が考えられます。
これらの行為は、ある意味、授業目的利用の前段階の行為ともいえます。
なお、授業目的であっても、35条1項の但書に該当する利用、すなわち、例えば単行本の全部を複製する行為のように35条の解釈上権利者の利益を不当に害する利用については、SARTRASは取り扱わないと聞いています。
②授業目的ではないが教育目的といえる利用
例えば、学生が過去に受講していた授業用資料を履修終了後にも閲覧できるようにするための複製、公衆送信等が考えられます。
また、保護者会等で保護者向け資料を提供するための複製、公衆送信等が考えられます。
③教育機関の運営や研修会に必要な利用
例えば、教職員会議、教職員等の資質の向上のための研修会等において行われる資料の複製、公衆送信等が考えられます。
詳細については検討中ですが、許諾の対象となる行為が決まりますと、それは同時に権利者からの権利管理の受託範囲が決まったことになりますので、
著作権等管理事業法上、それを反映した管理委託契約約款を作成し、文化庁に届け出る必要があります(管理事業法11条1項)。
なお、管理事業者が許諾権の管理事業を実施するためには、事業者登録を行っただけでは不十分で、管理委託契約約款と(3)の使用料規程の届出が必要となっています。
(3)使用料の額
使用料の額については、著作権等管理事業法上、使用料規程を定め文化庁に届け出る必要があります(管理事業法13条1項)。
また使用料規程を定めるに当たっては、補償金規程と同様、利用者又は利用者団体から意見を聴取する必要があります(同条2項)。
使用料の額については、(2)と同様、現在検討中です。
(4)補償金制度との違い
一番大きな違いは管理率とそれによる教育機関側の事務的負担の差です。
補償金制度の場合ですが、SARTRASは文化庁から補償金請求権の指定管理団体として指定されているので、
SARTRASに補償金を支払えば、35条の範囲内における著作物等の公衆送信利用について外国の著作物等の利用も含め全ての著作物等が適法に利用できることになります。
すなわち、SARTRASの管理率は100%ということになりますので、教育機関においては先述した35条の運用基準を順守し著作物等を利用している限り特段問題は生じないことになります。
一方、管理事業の場合は、権利者と管理事業者の間で委託・受託の関係が必要ですから、権利行使の委託がされていない著作物等については利用の許諾ができないことになります。
そうしますと、これを利用者側から見ると、管理率が低い場合は利便性に欠けるという問題が生じます。
すなわち、SARTRASの管理率が低いと利用できる著作物等が限定されることになり、必要に応じ、SARTRAS以外の他の管理事業者や個々の権利者から利用の許諾を受ける必要が生じます。
このように許諾権が働く利用については、許諾権の性質上、SARTRASが強制的に権利を管理することはできないので、補償金制度のように100%の管理率になることは不可能です。
これは管理事業の宿命ともいえる課題です。
この問題を解決するため、管理事業者が相当数の権利を管理している場合は、管理外の著作物等もその利用条件に従い利用できるという強制許諾の制度(これは「拡大集中管理制度」と呼ばれています)があり、
政府においてもこの制度の導入を検討課題としています。ただ、仮にこの制度が導入されるとしても、ある分野の相当数の権利者の権利を管理しているという事実がないと、
同制度の適用がないので、相当数がどの程度を意味するのかは別にして、教育機関における利便性の向上のためにも、少しでも管理率を向上させる努力が継続的に必要と考えます。
学校等の教育機関における著作物等の利用に関する説明は以上で終わりです。
次回は、著作権法の保護の対象である著作物に着目し、
具体的な事例に則しながら、著作物であるものとそうでないもの等について、判例等も参照しつつ解説します。
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