JRRCマガジンNo.219 リンクによる侵害

山本隆司

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JRRCマガジン No.219  2020/10/16
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※マガジンは読者登録の方と契約者、関係者の方にお送りしています。

みなさまこんにちは。
まずは事務局から当センターも協力している、本年度のオーファンワークス実証事業のご案内です。

※「オーファンワークス」とは著作権者が不明、または、著作権者と連絡がとれないような著作物をいいます。

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2020年度
オーファンワークス実証事業について

オーファンワークス実証事業実行委員会からのお知らせです。
2020年度「オーファンワークス実証事業」を開始しました。
著作権者不明の著作物の利用促進を目的として、
文化庁の裁定制度をより利用し易くするための実証事業です。
皆様の所属企業・団体等において、例えば、所蔵資料の社史編纂利用、
保存しておいた写真等のホームページへの掲載利用等、あるいは、
図書館・資料館・博物館等・所蔵資料の活用を計画している所において、
著作権者が不明のため利用できない著作物等がありましたら、
ぜひこの機会を利用して有効活用していただきたいと存じます。

詳細はオーファンワークス実証事業ホームページをご覧ください。

orphanworks

尚、お問合せは上記HPよりお願いいたします。

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さて、本日のコラムは山本先生です。
最近はSNSやインターネットでの著作物利用について、
問合せを個人の方からいただく機会が増えました。
著作権への意識が少しずつ高まっていることを感じます。

テーマは「リンク行為」
権利侵害に及ぶケースはぜひとも押さえておきたいところです。
前回までのコラムはこちらから
https://jrrc.or.jp/category/yamamoto/

◆◇◆山本隆司弁護士の著作権談義(92)━━

  -リンクによる侵害- 

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先日(2020年7月21日)、最高裁は、リンクによる氏名表示権の侵害を認めました(リツイート事件)。
この事件をご紹介するとともに、リンク自体によって著作権侵害が成立するのかという問題について検討したいと思います。
 
まず、A(無断掲載者)が著作物を無断掲載したサイトに、B(リンク行為者)がリンクを張って、公衆に当該違法サイトへのアクセスを可能にした場合に、
リンク行為者に著作権侵害が成立するのかという問題を考えてみたいと思います。

ユーザーがリンク行為者のサイトを閲覧すると、閲覧者のモニターには、当該著作物が表示されます。
しかし、当該著作物がリンク行為者のサイトに複製されているわけではありません。
その仕組みは、リンク行為者のサイトを閲覧することによって、閲覧者のPCに当該サイトの情報(プログラム)が読み込まれ、
そのプログラム指令に従って閲覧者のPCが直接リンク先の無断掲載サイトにアクセスしそこに掲載された当該著作物を読み込みます。
その結果、リンク行為者のサイトに当該著作物が存在するかのように表示されます。

以上の仕組みから明らかなとおり、ユーザーはそのPCに当該著作物を複製していますが、リンク行為者は、自ら当該著作物を複製していませんので、複製権を侵害していません。
また、無断掲載者は当該著作物を公衆送信や上映しているとはいえても、リンク行為者は、自ら公衆送信や上映を行っていませんので、公衆送信権や上映権を侵害していません。
ただし、リンク行為者は、ユーザーによる複製権の侵害、また無断掲載者による公衆送信権や上映権の侵害を幇助したとはいいうると思います
 
では、まったくリンク行為者には著作権侵害が成立しないのか。著作権の支分権の構成次第で、リンク行為者にも著作権侵害が成立します。
WIPO著作権条約8条は「公衆伝達権」を規定しています。また、「公衆利用可能化権(making available to the public of their works)」が公衆伝達権に含まれると規定しています。
日本では、「公衆伝達権」を「公衆送信権」に、「公衆利用可能化権」を「送信可能化権」に、権利構成を変えて規定しています。
EUは、「公衆伝達権」と「公衆利用可能化権」を条約の権利構成のまま立法化しています(情報社会指令3条)。
「公衆利用可能化権」は、違法サイトへのリンクであってもそれによって公衆の著作物を利用可能にするので、当該リンクにまで及ぶ権利と解釈する余地があります。
欧州司法裁判所は、公衆利用可能化権の侵害となるリンクの態様を次の二つとしています(GS v Sonoma事件2016年9月8日判決)。
第1に、リンク先が権利者から許諾を得ている適法配信である場合には、リンク行為は、「新たなユーザー」へのリンクであるときにのみ、公衆伝達権の侵害となる。
第2に、リンク先が権利者から許諾を得ていない違法配信である場合には、リンク行為は、行為者がリンク先の違法性について故意・過失がある限り(営利目的の場合には故意・過失が推定される)、
「新たなユーザー」へのリンクか否かを問わず、公衆伝達権の侵害となる。

以上について詳しくは、このシリーズ著作権談義(48)をご覧下さい。
 
つぎに、リンク行為によって著作者人格権の侵害が成立するのかという問題を考えてみたいと思います。

リツイート事件では、写真家Xが写真の下部に著作者の氏名等を付加した画像を、自己のウェブサイトに掲載していました。
Yの運営するツイッターのユーザーAが無断で上記画像を複製したツイートを投稿しました。これによってサーバーに当該写真(元画像)が保存されました。
ツイッターのユーザーBがこれにリツイートしました。リツイート画面には、元画像にリンクを張ってこれを表示しますが、ツイッターのシステムによって、元画像の上下がトリミングされた画像が表示されました。
当該トリミングによってXの氏名が表示されなくなっていました。Xは、Yに対して、Bの行為が氏名表示権の侵害であると主張して、発信者情報開示を求めて提訴しました。
 
Yは、著作権法19条1項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」には、著作権侵害となる著作物の利用である場合に限られると主張し、Bに氏名表示権の侵害は成立しないと主張しました。
最高裁は、規定の文言が著作権侵害となる著作物の利用である場合に限定していないこと、また氏名表示権が著作者と著作物との結びつきに係る人格的利益を保護するものであることを挙げて、
「著作物の公衆への提供若しくは提示」には、リンクによる表示も含まれると判示しました。
 
なお、トリミングによって氏名表示部分を削除したのはツイッターのシステムだから、トリミングの行為者はBではなくYだ、と考える余地はないと思います。
たとえば、コンビニのコピー機で著作物を複製した場合、複製行為者は、コピー機でもその管理者であるコンビニでもなく、著作物の複製にそのコピー機を使った客です。
同様に、トリミングの行為者はツイッターのシステムを管理するYではなく、著作物の表示にツイッターのシステムを使ったBです。
 
以上
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