JRRCマガジン第20号(作曲とゴーストライター、源泉所得税)

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   JRRCマガジン
                       2014/2/20配信 第20号
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*半田正夫の著作権の泉 第8回    「作曲とゴーストライター」
*JRRC☆TIMES             「JRRCなうでしょ  第8回」
*山本隆司弁護士の著作権談義 第17回   「源泉所得税」
*読者の声                 読者の声の投稿と掲載
*インフォメーション            ご意見・ご要望、各種手続き

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皆様、こんにちは =*^-^*=
日本複製権センター メールマガジン担当者です。

冒頭より恐縮ですが、「JRRC第4回著作権セミナー」開催のお知らせを致します。

来る2014年2月25日(火)開催のセミナーでは、
文化庁長官官房著作権課長 森孝之様および
虎ノ門総合法律事務所 弁護士石新智規様をお招きしてお話を伺います。

詳しくは、こちらをご覧ください。

    ▼JRRCホームページ「お知らせ」
     http://www.jrrc.or.jp/seminar/detail_04.html

なお、誠に申し訳ございませんが、たくさんの参加希望を頂戴し、定員オーバーと
なったため受付は締め切らせていただいております。ご了承いただきますようお願い申
し上げます。

それではメルマガ第20号をお届け致します。

●今後取り上げるテーマについてリクエストがございましたら、
   ご意見・ご要望など ⇒ https://fofa.jp/jrrc/a.p/112/
 にて、ご投稿をお願いいたします。
  お待ちしてます。

●ご了解ください
 このメルマガは等倍フォントで作成していますので、MSPゴシックのようなプロポーシ
ョナルフォントで表示すると改行の位置が不揃いになります。

●メルマガ配信ご不要の方
 今後メルマガを受け取りたくない方は、お手数ですが、
 5.インフォメーション→「配信停止」のURL
 をクリックして配信停止の手続きをお願い申し上げます。

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   半田正夫の著作権の泉 第8回
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★はじめに
「半田正夫の著作権の泉」の連載第8回目です。
    
第8回は、「作曲とゴーストライター」です。
まさにタイムリーな話題で、読者の皆さんも関心を持たれていることでしょう。
著作権法では著作権者とゴーストライターはどのように規定されているのか・・・。
興味深いお話となっています。

音楽界にとって衝撃的なニュースが最近報道された。全聾の作曲家として著名な佐村河内守の
作曲として発表されている「交響曲第1番HIROSHIMA」などがゴーストライターの
手によるものであったことが、彼の代理人である弁護士の口から明らかにされたとのことである。

彼は、被爆2世として広島に生まれ、10代のころより独学で作曲を学び、35歳ですべての聴力を
失いながらも絶対音感を頼りに作曲を続け、さらに生活苦にあえぎながらも前記「HIROSHIMA」
など多くの作品を作り上げたこと、そしてこの「HIROSHIMA」は2008年に広島市で
開かれた主要8カ国(G8)下院議長会議の記念コンサートで初演され、同曲のCDは10万枚を
超えるクラシック音楽では異例のヒット曲となったこと、などで著名で、NHKスペシャル番組でも
取り上げられ、現代のベートーヴェンとまでもてはやされた人物である。

報道によると、彼は10数年前から、知り合った作曲家に、曲の構成や楽器の編成、さらには曲調の
イメージを伝えて作曲を依頼し、報酬を支払っていたとのことである。彼の代表作である前記
「HIROSHIMA」をはじめ、東日本大震災のあと、被災地で交流していた少女のために
作曲したとされる「ピアノのためのレクイエムイ短調」やソチオリンピックに出場するフィギュアスケート
の高橋大輔選手がショートプログラムで使用する曲など彼の代表作とされる多くの作品が
このゴーストライターの手になるものであったわけである。
 

周知のように、音楽作品に限らずすべての著作物についていえることだが、著作権を取得するのは
著作者であり、著作者とはみずから「著作物を創作する者」のことである(著作2条1項2号)。
本件の場合、佐村河内がゴーストライターに作曲を依頼する際に、曲の構成や楽器の編成、さらには
曲調のイメージを伝えたとしても、それは単なるヒントを与えたにすぎないのであって、曲の製作自体は
ゴーストライターに任せていたようなので、もしそうであれば、著作者はゴーストライターであり、
契約によって著作権を譲り受ける旨の合意がないかぎり、著作権は当のゴーストライターに帰属
しているといわなければならない。

政治家やタレントの出版物にはゴーストライターの手になるものが多い。以前、テレビの
ワイドショー番組を見ていたら、キャスターがある若い女性タレントに問いかけていた。
「あなたは、今度、本を出版されたそうですね。」
「ええ、いままでお会いした人のこととか、わたしがふだん考えていることなど、まとめてみましたの。
忙しい中で書いたので、ずいぶん苦労したのよ。皆さん買ってください。お願いね。」
「そうですか、で、どんな内容なのですか。少し教えてください。」
「・・・・わたし、読んでないから分からない~。」
このやりとりで、はからずもこの本が彼女の書いたものではなく、ゴーストライターの手になるもので
あったことが判明してしまったことになる。

ゴーストライターはその名のとおり表面に出てこないのが一般である。したがって、多くの場合、真実の
著作者であり著作権者が誰であるのかは外部から知り得ないが、これで著作権取引が困難になることはない。
著作権法14条に著作者推定の規定が設けられているから、著作物の表面に著作者として現れている者を
著作者であり著作権者として扱えばよい。本件の例では佐村河内を作曲者であり著作権者として扱えば
いいだけである。ふつうは表面に出てこないゴーストライターが出て来るのは依頼者との間に金銭上の
トラブルなどが発生した場合であり、本件もそうではないかと思われるが、そうであれば当事者間で
決着をつければ済む問題である。ただ、著作権法上はそれですんだとしても、佐村河内を全盲でありながら
素晴らしい楽曲を作った稀代の作曲家として彼の作品に感動の涙を流し賞賛した音楽ファンに対して
どのように報いるつもりなのか、その責任の取り方が問題となってこよう。
今後を見守りたいところである。

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   JRRC☆TIMES
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☆★☆JRRCなうでしょ☆★☆

第8回を迎えています事務局長コラム。
今回は、第4回JRRC著作権セミナー受付状況などといったご報告をいくつか致します。

こんにちは。
JRRC事務局長の稲田です。
やっと春らしくなってきた今日この頃ですね。
昨日より桜の開花速報がテレビのニュースで取り上げられ始めました。
皆さんの地方ではいつ頃の開花予測でしょうか?
お花見を心待ちにしていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?

それでは今月号の最初の報告です。
去る2月25日に第4回JRRC著作権セミナーを開催いたしました。
今回の講演者は文化庁著作権課の森課長と虎ノ門総合法律事務所の石新弁護士の2名にお願いしておりましたが、
おかげさまで約600名ものご参加をいただき、無事盛況裡に終了することが出来ました。
これもひとえに皆様のJRRCに対するご支援ご協力の賜物と深く感謝しております。
ところでひとつJRRC事務局から当日ご参加の皆様へお詫びを申し上げなければなりません。
当日配布した資料の中のピンク色のチラシですが、冒頭「JRRCとご契約いただければ・・・」となるべき
ところが、「JRRCとの契約だけで著作物の適法な複写利用が可能です」との表現になっておりました。
JRRC以外にもいくつかの管理団体が独自に著作権管理業務を行っておりますので、これは誤った表現であり、
JRRC事務局として参加者及び関係者の皆様に大変ご迷惑をおかけしたことに対し、深くお詫びを申し上げます。
今後このようなことが起きないよう、事務局として文書管理を徹底していく所存ですので皆様のご理解と
ご協力をよろしくお願い申し上げます。

次は無料講師派遣事業のご報告です。
昨年の4月から公益事業の一環として開始した無料講師派遣事業ですが、おかげさまを持ちましてこれまで10数社、
延べにして1300人以上の受講者に対し、「企業人のための著作権基礎知識」に関する講習会を実施いたしました。
講習会では、いつも大勢の方から著作権に関する様々なご質問をいただき、回答を通して皆様とスキンシップを
図れることが何よりの楽しみとなっています。
本事業は2014年度も継続して実施いたしますので、企業ガバナンスの徹底、CSRの一環等としてご利用いただければ幸いです。
お問い合わせはホームページからどうぞ。

最後はイスタンブールからロンドンに飛んでロンドン事情その1-ロンドンパブ事情1についてのお話です。
ロンドンと言えば、パブのメッカですからお酒の好きな方にとってはたまならいところではないでしょうか?
日本でいえば居酒屋ですが、日本では昼間から営業している居酒屋はそう多くはないと思いますが、ロンドンのパブは
昼間から営業しており、サラリーマン風の方も若い女性もまた、お年寄りの方もビールを飲みながら楽しく談笑して
る風景を見ることができます。
私もパブ巡りが好きですのでロンドンに行った際は、必ず寄ることにしています。
今回最初に訪れたパブは、ホテルのあるハイドパークの近くにありましたが、昼食目的のために入ったので、最初は
ビールではなく食事に合うシャンパンをグラスで頼んでみました。ご存知の方も多いでしょうが、パブではお酒は
すべてカウンターに行ってその都度現金で支払います。食事を注文する場合は、パブによりウェートレスが注文に
来るところや、カウンターに行って注文し、支払いの際テーブル番号を告げて席に戻ります。
日本のレストラン等でグラス・シャンパンを頼むと最低でも1000円以上すると思いますが、
私が行ったパブでは一杯なんと2ポンド40ペンスでしたから日本円では400円程だと思います。あまりに安いので
びっくりしましたが、味の方はそんなもんかなという感じでした。
シャンパンのあとは、いつもの定番で1パイントのギネスです。
日本でもアイリッシュバー等でギネスが飲めますが、ロンドンのパブで飲むギネスはまた格別です。さて、食事の方は
またロンドンパブの定番であるフィッシュアンドチップスを
注文しました。パブによって付け合せの野菜が豆だったりコーンだったりしますが、ここのはポテトチップスと
えんどう豆が付け合せでした。
出てきたフィッシュは大皿をはみ出すくらいの大きな鱈のフライで、付け合せの野菜もお皿の半分を占めるほどの
ボリュームでおなかが一杯になり、久しぶりにロンドンの味を楽しむことが出来ました。
次回はロンドンパブ事情その2-シャーロックホームズ・パブの紹介です。
シャーロックホームズ・ファンの方にとってはたまらない場所ですね。

以上

☆★☆事務局からのお知らせ☆★☆

「前号メルマガに関するお詫びと訂正」について、
1月21日配信のJRRCマガジン第19号のなかで、誤った記載がございました。
以下の通り訂正し、お詫び申し上げます。

※「条文表記についての疑念(3)」記事中

誤)(略)、譲渡権を認めればあえてこれと別立てで譲渡権と貸与権を認める必要はな
    いのではないかという疑念である。

正)(略)、頒布権を認めればあえてこれと別立てで譲渡権と貸与権を認める必要はな
    いのではないかという疑念である。

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   山本隆司弁護士の著作権談義  第17回
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★はじめに
山本弁護士の著作権談義の第17回目です。

今回は、「源泉所得税」です。
これまでとは違った切り口で、著作権と所得税についてのお話です。
大変参考になります。
 
外国企業から著作物使用のライセンスを受け、ライセンス料を海外送金するときに、多くの場合、
所得税の源泉徴収が必要になります。税率は原則20%ですが、相手国が日本と租税条約を
結んでいる場合には、この源泉所得税が減免(米国:免除)されます。源泉所得税が課される対象は、
「著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)の使用料又はその譲渡による対価」
と規定されています(所得税法161条7号ロ)。しかし、税務署には「著作権の使用料」の意味について
混乱があるので、いろいろトラブルが発生します。

よくあるトラブルは、税務署が「著作権の使用」を「著作物の使用」と誤解することに起因しています。
著作権の利用がなくても、著作物の利用があって、対価が支払われていると、源泉所得税を課税しまう
ものです。たとえば、ある事件で税務署は、「所得税法上の著作権の使用料とは、…著作権法が規定する
著作権の対象となる著作物の利用につき支払いを受ける対価の一切をいう」と主張して、日本企業が
外国企業から購入したビジネスソフトのパッケージ製品の支払代金が「著作権の使用料」と認定して
源泉所得税を課しました(東京国税不服審判所平成16年3月31日裁決・東裁(諸)平15第253号)。

ビジネスソフトのパッケージ製品を外国企業から購入した場合、なるほど、会社のコンピュータに
インストール(複製)してこれを使用します。しかし、このような複製(著作権法21条)には権利制限
(同法47条の3第1項)があるので、「著作物の使用」はあっても「著作権の使用」はありません。
したがって、その対価は「著作権の使用料」には当たりません。前述の事件で東京国税不服審判所の裁決も、
税務署の主張を退け、「所得法第161条第7号ロに規定する著作権の使用料とは、…著作権者以外の者が
法定利用行為を行うこと及びその許諾を受けることについて著作権者に支払われる対価の一切をいう」と
判示しました。

しかし、上記の東京国税不服審判所の裁決も、貸与権の解釈については、著作権法の目から見るとおかしな
ところがあります。著作権法上の貸与権は、著作物の複製物(有体物)の貸与に対する権利ですが、著作物
(無体物)の貸与があることをもって貸与権を認定しているようです。まだまだ、源泉徴収税の適用上の混乱が
懸念されます。殊に、クラウド・コンピューティングを対象とする取引については、著作権の及ぶ範囲さえ
未だ十分に議論されていないので、ますます混乱が予想されます。

たとえば、日本企業Xが外国企業Yの海外所在サイトにアクセスし、ビジネスソフトをダウンロードして、
その代金を支払った事例を考えてみましょう。ダウンロードによって、コンピュータ内に当該プログラムの
複製物を作成しますが、権利制限(47条の3)の適用はないと考えられます。したがって、ダウンロードに
対してXがYに支払う対価は、著作権(複製権)の使用料に該当すると思われます。
他方、日本企業Xが外国企業Yの海外サイトに置かれた判例データベースにアクセスし、判例を検索し、
検索結果をダウンロードして、利用料を支払った事例を考えてみましょう。Xには、検索結果と個々の判例が
送信されますが、判例のデータベース自体が送信されることはありません。したがって、XがYに支払う対価は、
データベースに対する著作権の使用料に該当することはないと考えられます。  

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   読者の声
            『読者の声』の投稿と紹介
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このコーナーは、「JRRCマガジン」が皆さんにとって便利な、役に立つ情報収集ツール
としてご活用していただけるよう、ご意見・ご感想をお寄せいただき、その中から選出し
てご紹介するコーナーです。
                              
★メルマガへのご意見・ご感想、「著作権にまつわるエピソード」などなど
お待ちしています(*^_^*)

★投稿先はこちら
  ⇒ https://fofa.jp/jrrc/a.p/111/

掲載された方には粗品を進呈いたします。
なお記事として掲載する場合は、事前にご連絡しご了解を頂くように致します。

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  └ ご意見・ご要望など … https://fofa.jp/jrrc/a.p/112/

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   あとがき
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受験シーズンもそろそろ終盤を迎えつつあります。

十数年?前の受験日当日、
僅かな時間でも単語の1つ2つおぼられるかも・・・込み合う電車の中、よそ様の白い目
を背に問題集なぞ開いていたのを思い出します。

昨今は電車の中で勉強や本を読むスタイルがスマートになりつつありますね。
さほど他の乗客に迷惑をかけていないのかも・・・。

タブレット端末のおかげで、教科書も電子書籍となり、ランドセルにはタブレット端末だ
け!?となる日も近いのかしら。(A.U)

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■お問合せ窓口
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     ホームページの「お問合せ」ページからアクセスしてください。
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■編集責任者
   JRRC副理事長 瀬尾 太一   
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