JRRCマガジン第27号 連載記事

半田正夫の著作権の泉 

~第15回 電子出版時代に対応した著作権法改正(3)~

改正法の適用にあたって、ついうっかり見過ごしてしまうのは出版権設定期間の満了時点についてである。83条2項は、「出版権は、その存続期間につき設定行為に定めがないときは、その設定後最初の出版行為等があった日から3年を経過した日において消滅する」と規定する。ここでいう「出版行為等」とは、「出版行為又は公衆送信行為」を指し(著作80条2項)、1号出版権と2号出版権とを一括設定した場合に、最初の出版行為と公衆送信行為とが異なる時期に行われたときは、存続期間の終了時点が異なってくることに注意しなければならない。これはいたずらに法律関係の複雑化をもたらすことになるので、これを避けることが望ましいし、その場合には設定行為の段階で存続期間が同時に終了するような取り決めを図っておくことが必要となろう。

ところで、今回の法改正によって出版者側に電子出版についての権利確保の途が開けたことは一歩前進であったことはたしかである。しかし、出版者が取得できる権利は著作権者との出版権設定契約によって生ずるものであるから、それは著作権に根拠を置くものであることに注意しなければならない。つまり、著作権者が著作権を放棄したり、相続人なしに死亡したりして著作権が消滅すれば、その根拠を失って消滅するという頼りのない権利にすぎないのである。出版者側がかねて望んでいたように電子出版権が著作隣接権として認められていたならばそのような心配は生じなかったのであるが、それはいまさら悔やんでも仕方がないところである。
 
だが、現行法上、今回の法改正よりも出版者が有利となる方法を採ることは理論的には可能である。それは著作権(あるいは複製権・公衆送信権)の期限付き譲渡という方法である。これも出版権設定契約と同様、著作権者と出版者との契約によって差止請求権を含む強力な権利が出版者に帰属することになるが、なによりの長所は、期限付きとはいえ著作権(または複製権・公衆送信権)が著作権者のもとから離れるので、著作権者による権利の放棄や相続人なしでの死亡などの影響を受けることもなく出版者は権利を確保・行使できるという点にある。そしてさらにいえば、6月以内出版(または公衆送信)の義務や継続出版(または公衆送信)の義務からも解放されるという利点のあることも指摘されよう。「著作権の譲渡」といえばその語感の強さから著作権者が嫌がるように思えるが、期限付き譲渡であるから出版権の設定の場合と同様に期間を3年ぐらいにしておけば再び著作者のもとに著作権が戻ることになるので出版権の設定の場合と大差なく、この点を強調することによって著作権者を説得することは容易ではないかと思われる。この方式を採るべきことについては、私がはじめて言い出したことではなく、文化庁に出向して今回の法改正に携わった池村聡弁護士がすでに指摘しているところであるが(池村聡「電子出版をめぐる諸問題」コピライト632号26頁参照)、私もまったく同感である。

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山本隆司弁護士の著作権談義

~第24回 米国議会下院公聴会~

米国議会下院司法委員会(グッドラテ委員長)は、「裁判所、知的財産及びインターネットに関する小委員会」(委員長:ハワード・コーブル議員)において、昨年から、米国著作権法の全面的見直しと全面的改訂に向けた活動を始めました。すでに同小委員会における公聴会での議論をご紹介しましたが、今回は、2013年8月1日に開かれた「技術の役割」をテーマとする公聴会での議論をご紹介したいと思います。
2013年8月1日の公聴会は、デジタル時代における著作権の理念に関連して、科学技術の発展に政府が応えるためには何が必要かを知りたいという意図を持って、行われました。新しい技術に基づいて新しいビジネスを行っている企業・団体の代表者5人が証人として招かれました。
最初の証人、Danae Ringelmann氏は、Indiegogoの創立者です。Indiegogoは、事業を興したいと思っても銀行から融資を受けられない起業家に対して、ネット上で投資家を募ることのできる場(crowdfunding platform)を提供する会社です。証人は、著作権法が新しいビジネスモデルや新しい技術の適用を許容するオープン・アプローチをとることを求めました。
つぎのJim Fruchterman氏は、Benetechの創立者です。Benetechは、印刷物を読めない人々(視覚障害者や失読患者など)のための最大のオンライン図書館(Bookshare)を提供する会社です。証人は、著作権法が技術的な前進を促進し、創作性に報い、社会に利益をもたらすことが必要であると指摘するとともに、これを可能にするためには、障害者が著作物にアクセスすることへの不当な障害とならないようにするセーフティーネットとして、フェア・ユースが必要であることを強調しました。
Nanthan Seidle氏は、Spark Fun Electronicsの創立者です。Spark Fun Electronicsは、組み立て式電気器具の部品をネット販売する会社です。新製品について特許出願するよりも、それに要する費用を新製品の開発に回し、新製品を他社が模倣するのに要する12週間の先行者優位を利用して、迅速なサービスと優れた機能と技術サポートで競合する模倣会社を圧倒するというビジネスモデルをとっています。証人は、独占権の付与だけが競争促進手段ではないことを強調しつつ、革新的企業が訴訟によって足を引っ張られることがないようにすることと、技術革新を促進するためには特許権の期間は20年ではなく技術の寿命である5年に短縮することを求めました。
Rakesh Agrawal氏は、SnapStream Mediaの創立者です。SnapStream Mediaは、テレビ放送を録画しその内容を検索できる機器を提供している会社です。証人は、SnapStream Media製品が如何に社会に貢献しているか、またそうであり得るためにフェア・ユースが如何に不可欠であるかを強調しました。
最後のVan Lindberg氏は、Rack Spaceの知財担当副社長です。Rack Spaceは、NASAと共同で、クラウド環境構築用のソフトウェア群(OpenStack)をオープンソースで開発することを始めた会社です。証人は、芸術、文学、映画、音楽作品の著作者だけでなく、新しいコンテンツの創作者と多くの新しいビジネスモデルを尊重するとともに、コンピュータ世界においても人の判断に取って代われない部分が存在することを前提に、革新を促進することを求めました。
5人の証人に共通する主張は、著作権が革新をサポートする役割を持つことを認めつつ、著作権者の権利を優先することによって、新たな技術革新とそれに基づく新しいビジネスモデルの道を塞ぐことがあってはならない、というものでした。

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JRRCなうでしょ 第15回

こんにちは。
JRRC事務局長の稲田です。
夏休みも終わり、つい先日までの猛暑から東京もすっかり秋になってきましたね。
ただ、未だに一部の地方で大雨が降ったりしていますので、まだまだ天候の変動には気を付けるようにしましょう。
今年は台風がどれくらいやってくるのかも気にかかるところです。
それでは9月号の最初のお知らせです。
JRRCでは例年、7月以降に各契約者様宛に今年度使用料請求のお知らせを発信し、WEBからのご申請手続きについてお願いをしています。(単年度契約及び実額方式は除きます)
おかげさまで今年度も契約者の皆様のご協力をいただき、ご申請手続きも順調に推移しています。
これもひとえに各契約者の皆様のご協力の賜物と事務局一同大変感謝しております。
また、もし、読者の方でまだ手続きがお済でないご契約者様がいらっしゃいましたら、ご面倒でもJRRC WEB SITEからのお手続きをどうぞよろしくお願いいたします。
次は7月号から開始いたしましたJRRCを構成している4つの権利者団体について、皆様にご紹介いたします。
今月はその3としてJAC(一般社団法人学術著作権協会)についてご紹介いたします。
JACは、国内では、主として学協会等から直接管理委託を受けた著作物および海外30の国・地域のRRO(複製権機構)から再委託を受けた著作物の管理を行っております。
JACの会員構成は、日本工学会、日本歯科医学会、日本農学会、日本薬学会、日本医学会
の5つの団体からなります。
JACでは、国内の著作物については、学協会、大学・研究機関、企業等より委託を受けた定期刊行物・単行本4,372のタイトルを含む、主として学術関係著作物を中心に管理しています。国内管理著作物については、内部利用に限り、包括利用契約のみをJRRCに再委託しています。外部頒布等の複製利用については、JRRCではなく、別途直接JACとの利用契約が必要です。海外管理著作物については、Copyright Clearance Center,Inc(米国・CCC)を含む30の国・地域のRROとの双務協定に基づき、それぞれのRROから管理著作物の再委託を受け、管理を行っております。これらの著作物についての複製利用の際には、JACとの別途利用契約が必要となります。
以上JACの紹介でした。
次号では、JRRCの4つ目の構成団体として新聞著作権協議会をご紹介いたします。
以上

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