JRRCマガジンNo.363 愛媛新聞社特別執筆~新聞記事はタダじゃない!後編~

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JRRCマガジン No.363    2024/3/28
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◆今回の内容
【1】愛媛新聞社特別執筆~新聞記事はタダじゃない!後編~
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皆さま、こんにちは。

年度末の慌ただしい時期になりました。
いかがお過ごしでしょうか。

さてJRRCは全国各地の新聞社様のご協力のもと2023年度は計4回の著作権セミナーを行い、来年度も継続してセミナーを行う予定でございます。
そこで今回は四国地方編セミナーでご尽力いただいた愛媛新聞社・読者部の高橋様に新聞社にとっての著作権や、新聞社や記者の実情についてJRRCマガジンに特別にご寄稿いただきました。2月22日配信の前編に続き、今回は後編をお届けいたします。
前編はこちらでご覧いただけます

◆◇◆━【1】愛媛新聞社特別執筆━━━━━━━━━
 新聞記事はタダじゃない!後編
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                     愛媛新聞社読者部 高橋 士朗

 前編では、記事や著作権が新聞社にとって資産・商品であることを説明しました。今回は、記事が生まれるまでにどんなコストがかかっているのか、その一点についてご理解をいただくために、新聞社や記者の実情を紹介します。

 新聞は多種多様なニュースを盛り合わせた、幕の内弁当のようなメディアです。そして1本1本のニュースは、記事、写真、見出しの3つが基本セット。これを何セットも組み合わせて新聞ができているというわけです。
 記事作成は、ただ文章を書くだけの単純作業ではありません。素材の仕入れから商品に仕上げるまで様々なプロセスやスキルが詰まってます。愛媛新聞では、売り物として通用する品質に達したものが「記事」、修正や追加取材が必要な不完全なものを「原稿」と呼び分ける先輩がいました。原稿と記事が近いほど優秀な記者というわけです。ちなみに、下手な原稿しか書けない新人などは、まだ記者(汽車)になり切れないという意味で、「トロッコ」呼ばわりされたものです。

 記事にもいろんな形態がありますが、ニュースを掘り起こすことは記者の醍醐味であり、存在意義でもあります。日ごろからアンテナを張り巡らせて情報をキャッチします。最初からニュースの全体像が見えるような都合のいいケースは滅多にありません。ニュースの尻尾や断片に目を光らせるのが記者です。当たり前の日常にニュースが埋もれていることもあります。見る角度を変えて「これは変だ」「これは面白い」と気付くのも記者の仕事。日ごろから緊張感を保ち、仕事に関係する法令や社会情勢などを勉強しておくことも基本動作です。
 人脈を広げるとよく言いますが、口で言うほど簡単ではありません。「こんな話、知っとる?」とこっそり耳打ちしてくれる人。「あの人なら何か知ってるはず」と頼りになる人。こういう人たちとの間には、仕事を超えた信頼関係が必要です。単なる記者でなく、人として相手に信用してもらうためには何度も何年もお付き合いします。特ダネだけが目当てで近づいても、すぐに見透かされますし、相手のことをよく見極めなければ逆に利用されてしまいます。時には相手を批判することも起こり得るので、距離感には細心の注意を払います。

 火事、事件、災害。24時間365日、ニュースは突然飛び込んできます。夜中でも休日でもサイレンが聞こえたら、「はい、仕事!」です。テレビから聞こえるサイレンにもドキッと反応してしまいます。エアコン室外機のモーター音が、遠くで鳴っているサイレンのように聞こえたら、もう病気ですね。呼び出しの携帯電話もお構いなく鳴ります。駆け出しのころはポケベルでしたが…。たまの休日、家族イベントの約束も何度ドタキャンしたでしょうか。比較的穏やかな地方の新聞社でさえこれです。大事件や大事故が頻発し、メディア同士の競争も厳しい都市部の記者たちは、想像を絶するプレッシャーで日々の仕事に当たっているはずです。

 場合によっては、身の危険を感じながら取材することもあります。愛媛県は自然災害が比較的少ない地域ですが、それでも災害からは逃れられません。2018年7月の西日本豪雨では県内でも甚大な被害が出ました。災害発生直後、後輩記者たちは、もちろん最大限の安全確保を図りながらではありますが、十分に情報もそろわない段階で各地の被災現場に乗り込みました。
 他社の記者仲間からは、阪神淡路大震災(1995年)や広島の土砂災害(2014年)などの壮絶な取材エピソードを聞きました。文字通り、命がけというか、命を削って取材に当たった話です。自身も被災しながら、現場に向かう記者の心境を思うと言葉がありません。
 幸か不幸か、私自身は皆様にご紹介できるような経験がありませんので、東日本大震災の取材現場が分かるアーカイブを紹介します。東北地方対象の「第1回 官公庁向けオンライン著作権セミナー(2023年7月27日開催)」で、まさに取材に当たった河北新報社(宮城県仙台市)の目黒光彦さんが壮絶な経験談を生々しく話されています。JRRCのHP(https://jrrc.or.jp/seminar/)で視聴できますので、是非ともご覧ください。

 写真の話に移ります。写真は、その良し悪しで紙面全体の出来を左右することさえあります。季節の風景やイベント、会議、事件・事故現場などシーンによって当然撮り方は変わります。災害取材のところでも触れましたが、現場の空気感を訴える写真を撮るには、時にリスクを負うケースもあり得ます。ニュースを伝えるという意味では、記事と同じか、それ以上の労力が必要です。記事と決定的に違うのは、写真は、その日・その時・その場にいなければ撮れないということです。その上で、撮影位置、シャッターチャンス、構図など記者の目線と感性で撮った報道写真は新聞社の売り物です。

 最後に整理部。新聞社の花形は外勤記者と思われがちですが、記者の原稿を生かすも殺すも整理次第です。「今日のトップニュースはどれ?」「この記事は何面?」「このニュースの扱い(大きさ)はどれくらい?」。大枠は部局横断の会議で協議するようですが、ニュースの価値判断は整理がかかわる最重要業務です。数あるメディアの中で、価値判断に一番シビアなのが新聞だと自負しています。
 また、整理といえば、見出しづくり。新聞づくりの中でも相当難度の高い仕事です。見出しは、「究極の要約」とも呼ばれます。「記事は読むもの、見出しは見るもの」。一目見ただけで、直感的に内容が理解できる文字列でなければなりません。正確に、的確に、加えて読者を引き込むよう表現を工夫しながら、記事のポイントをわずか8文字、10文字で歌い上げます。できあがった見出しはたとえ平凡でも、そこに至るプロセスは大変です。しかも締め切り時刻との戦い。指を折って文字数を数えながら脂汗を流します。いわば職人仕事、一人前と認められるまでに何年もかかります。記者が漁師なら整理は料理人、「整理が新聞をつくっている」と言い切る人もいます。

 整理はもちろん、記事も写真も、紹介した話は一端に過ぎません。まだまだ書き足りませんが、記事1本、新聞1部にかかる時間や労力のことをごく簡単にお伝えしたつもりです。私たちは、この時間も労力もコストだと考えています。新聞紙面の二次利用には金銭的なご負担をおかけする場合がありますが、記事、写真、見出しなどは新聞社にとって大切な著作物であり、商品・資産であるということを少しでもご理解いただき、新聞をより活発に適切に活用していただければ何よりです。

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