JRRCマガジンNo.243 塞翁記-私の自叙伝26

半田正夫

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JRRCマガジン  No.243 2021/6/24
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さて、今回の半田先生の自叙伝は大学長時代の続きです。
どうぞお楽しみください。

前回までのコラムはこちらから
⇒https://jrrc.or.jp/category/handa/

◆◇◆半田正夫弁護士の塞翁記━━━━━━
             -私の自叙伝26-
   第15章 教員生活を終えて

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■大学での最終講義

大学長としての任期は2003年12月15日をもって満了となったが、法学部教授としての勤務は翌004年3月31日まで存続した。
本来であれば68歳定年のはずであるが、学長となったため、その勤務中は定年が延長され、さらに教員の定年は講義との関連から年度途中の退職は学生に迷惑がかかるとの理由で、年度末まで伸長されることになっていたことから、私の教員としての任期も学年末まで延ばされていたのである。

そこで学長室を引き払った私は、ガウチャーメモリアルホールの5Fの研究室に通うこととなった。
この研究室は新しくできた建物の中にあるとはいえ、机や本棚を入れると、来客があってもせいぜい1人やっとという狭隘な作りとなっていた。勢い、研究活動は自宅中心にならざるをえなかった。

定年退職を間近にひかえた1月15日、最終講義が400名は収容できる階段教室の420番教室で行われた。
妻とともに教室に行ってみると、ゼミ生、ゼミのOB、一般学生、法学部の教員、その他青学とは関係のない外部の著作権関係者などで溢れんばかりの混みようであった。

山崎法学部長、神長法学会長の挨拶の後、わたしは、「民法と著作権法のはざまに生きて―私の履歴―」と題して、いままでの来し方を振り返りながら、それぞれの時に私がどのように考え、考えてきたかについて90分にわたって話した。
そしてたくさんの花束をもらい、満場の拍手のなかで教壇を降りたのである。話はわかりやすかったと好評で、とくに保存食販売の会社を経営しているゼミOBの平井氏からは、後日、「地球にいては地球のことはよく分からないが、地球を離れて宇宙のかなたから地球をみれば地球のことがよく分かるように、民法のなかにいては民法のことがよくわからないが、民法を離れて、たとえば著作権の研究を通して民法をみれば、いままで気付かなかった多くの点を知ることができるはずだと考えて、著作権法の分野の研究に取り組み始めた」との私の発言、「朝から晩までひとつのことを考え続ける毎日でした。寝るときに枕元にメモ用紙を置き、思いついたらすぐ書くということをしていました。
絶えずひとつのことを朝から晩まで考えていますと、そういうことを考えていない時でも頭の隅になにか残っているものと見えまして、とんでもないときにフッといいアイデアを思いつくものだということを、そのとき始めてわかりました」との発言につき、これは企業経営にも結び付く貴重な意見で大変参考になったとの手紙を頂戴したのである。

じつはこれよりほぼ1か月先の12月12日、相模原キャンパスにおいても同キャンパスの教職員と学生を対象とする退任講義を「模倣尊重から創作の保護へ」と題して行った。
相模原キャンパスは私の学長時代に開設されたもので、私にとっては一番思い入れのあるキャンパスではあるが、ここに在籍する学生等に講義するチャンスは持ちコマの関係からなかったのである。
そこで退職の思い出にここで講義を一回してみたいと考えて、そのことを周囲にふと漏らしたことがきっかけで、実現の運びとなったのである。
用意されていたのは400人は入る大教室で、満員の学生を前に著作権に関する講義を90分にわたって行った。
終了を告げるチャイムと同時に講義は終了。
まさにドンピシャリの正確さに学生は「おう」という嘆声をあげて、一斉に拍手。
あとで知ったことだが、相模原市の小川市長はじめ、市の幹部が多数傍聴していたとのことであった。

これで青学をはじめ、永年にわたって続けてきた教壇生活に終わりを告げたのである。

■青山学院の常務理事に就任

学校法人青山学院は、法人本部の下、幼稚園、初等部、中等部、高等部、女子短大、大学、大学院、専門職大学院から成る総合学園である。
法人本部はこれらの学校の経営面を担当し、理事長とそれを支える若干名の常務理事がその職についている。
私は大学長の任期を終了し、大学長であるがために特別に定年が延長されていた教授の職を退いた直後の2004年4月1日、今度は常務理事として本部2階にある常務理事室に居を移し、ここで執務することとなった。
教職員から常務理事に選任されたという前例は青山学院にはなく、私が初めてだということである。

最初の仕事は、新任教職員の辞令交付式とオリエンテーションに出席することであった。
とくにオリエンテーションでは、常務理事が手分けして学内事情やら、法人の沿革・建学の精神などを説明することが義務づけられており、私は、「私立大学と法」というテーマで20分の話を行った。
ピッタリ20分で話をまとめたので、理事長はびっくり。「さすが半田先生」と言わせたものだった。

常務理事の主な仕事は、学内の各所から回ってくる稟議書に目を通して捺印すること、数多い会議に出席して意見を述べること、幼稚園・初等部・中等部・高等部・女子短大・大学・大学院それぞれの入学式・卒業式に出席すること、教職員や外部者の面会申し込みに応接すること、などである。
多くはルーチンワークで済ますことができるが、時には飛び込みの仕事があり、対応に追われることもある。

たとえば、こんなことがあった。
就任して16日目、法科大学院長と事務長がやってきて、法科大学院棟の隣で会計専門職大学院棟の新築工事が明日から開始されるが、事前に学生に知らせていないので、建築による騒音と振動によって勉強が阻害されるとの苦情の出ることが予想される。
よって説明会を本日開くことになったが、法人代表として出席し、説明してもらいたいとの要請を受けた。
不幸にして理事長は出張で不在。この問題に精通しているK常務理事は療養中でこれまた不在。
いるのはH常務理事と私だけ。結局、学務担当の私が説明することとなった。
私は、
1)法科大学院の設置に刺激を受けた経営学部より会計専門職大学院設置の希望が出てきた、
2)公認会計士法の改正により公認会計士の大幅な増加が決まり、これの養成のための会計専門職大学院設置の機運が全国的に広まって来ている、
3)本学は公認会計士試験委員が数名おり、設置に向けて動けば認可を受ける可能性が他大学に比し最も高い位置にある、
4)会計専門職大学院ができれば、既存の国際マネジメント研究科と法科大学院とともにトライアングルを形成し、講義を共通化し互いに刺激し合うことによる相乗効果で、他の法科大学院にはない特色を発揮することができる、
5)設置の場所としては東京で一番立地条件のいい、ここ青山しかない、
6)構内で建物を建てるにはトラックなどの重機が入れる場所でなければならないが、その条件を満たすのは法科大学院棟の隣しかない、
7)会計専門職大学院の設置申請を今年行い、来年春には開学にこぎつけるためには、逆算して明日から建築工事に着手しなければならない、ことを述べ、騒音対策としては会議室などを一時的に研究室に転用することなどを考えているので了解してもらいたいと結ぶ。学生側からの質問や批判はなく、おおむね了承されたものと思われた。あとでH常務理事から「さすがですね」と言われる。
常務理事の仕事のほかに、法科大学院の民法の講義も担当することになったので、結構多忙な毎日を過ごすことになる。

■大学執行部との軋轢

このころ、相模原キャンパスに新しい学部を作る話が出てくる。そこで私は、私案として健康管理学部なるものを作るべく提唱する。
その理由は、
1)高齢化社会を迎えて高齢者の健康管理が今後の国の政策の重要課題となってくることが予想され、健康アドバイザー、介護士、スポーツトレーナーなど健康管理に携わる人材の育成と増強が要求されるようになるのは必至であり、それらの人材を養成する機関として本学が名乗りをあげるべきだ、
2)相模原キャンパスには、野球場、陸上グラウンド、屋内競技場、サッカーグラウンド、テニスコート、馬場などスポーツに適した施設がすでに完備しており、これを部活以外にも活用することができる、
3)すぐれたスポーツ選手を受け入れるための強化指定部を作っても既存の学部には容易に受け入れてもらえないが、この学部ではそれが容易に可能である、
4)産業医として各学部に分散配置され、いわば冷や飯を食っている医者をここに集約でき、彼らの専門性を生かした講義が可能となり、彼らのやる気を引き起こすことになる、
5)近い将来廃校が見込まれる女子短大の栄養学に関係する教員数名をここのスタッフとして登用できる、などの利点が考えられたからである。法人執行部の了解が得られた案であったが、大学執行部としては法人側から押し付けられたとの強い抵抗感があり、結局は実現にいたらなかったのはきわめて残念であった。

同様のことは、私が全学教育問題検討委員会を立ち上げたときにも生じた。
学院はひとり執行部だけのものではなく、学院に勤務するすべての教職員のものである。
彼らは一生身を託す青学を良くしたいと考えているであろうし、それぞれが学内改革のための素晴らしいアイデアを持っているかもしれない。
それを吸い上げることが、教職員のやる気を喚起し、本学の活性化にもつながるのではないかと考え、一般教職員に呼びかけ賛同者を集めて委員会を設置したのである。
一応全学とは名乗ってはいたが、狙いは大学の改革にあった。大学というところは、一部長老たちの意見ばかりが幅を利かせ、将来大学を担ってもらわなければならない若手教員の意見はほとんど顧みられないのが実情である。
これでは急速に変化する時代の要求には対応できない憾みがある。
そこで彼らの新鮮な意見を聴取してこれを生かすことが必要であり、さらには有能な学者をこの機会を通して発掘したいとの意図もあったのである。
この委員会は数回実施し、そこに現れたいい意見やアイデアは法人執行部の会議などにおいて披露したりしたのであるが、この委員会の動きに対し、大学執行部が不快感を示し、間接的にではあるが、大学執行部を抜きにして検討を進めることは越権行為であるとの批判を受けるにいたったのである。
私は、全学教育問題検討委員会はその名のとおり大学問題だけを取り上げるのではないし、かりに大学問題を取り上げるにしても、教学問題を法人側が検討してはいけないという法はないのみならず、大学執行部のやりかたに干渉しようとしているわけでもなく、ただ学院の将来に多大の関心をもっている有志が集まって情報を交換しながら勉強会を開こうとしているのにどこが悪いのかと反発したが、結局は中途で終わらざるをえなかった。

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