JRRCマガジンNo.242 Google対Oracle事件判決

山本隆司

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JRRCマガジン  No.242  2021/6/17
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さて、本日のコラムは、常に話題の巨大IT企業のGoogle対Oracleの事件判決についてです。
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◆◇◆山本隆司弁護士の著作権談義(99)━━

  -Google対Oracle事件判決-

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OracleとGoogleは、2007年以来、Java SEの著作権侵害をめぐって米国で訴訟を続けていました。
2021年4月5日に連邦最高裁が、GoogleによるJava SEの一部複製についてフェア・ユースの成立を認める判決(Google LLC v. Oracle America, Inc., ___ US ___ (2021))を下したことで、ついに決着を見ました。
この判決は、従来のトランスフォーマティブ・ユースの枠組みには入らない、トランスフォーマティブ・ユースの新たな類型を創設したように見えます。

Sun Microsystems(Sun)は、汎用プログラム言語Javaを開発しました。Javaで作成したアプリケーションプログラムは、ハードウェアとOSの機能に依存しない「互換性」を特徴とします。
そのため、約600万人のプログラマーが多大の時間を掛けてJavaを学習し、Javaでアプリケーションプログラムの開発に従事しています。
Sunは、Javaでのプログラミング用のツールとしてJava SEを開発しました。そのなかのAPIは、汎用的な問題処理のコードを集めたもので、問題を処理する実行コード(implementing code)と、実行コードの属性を記載する申告コード(declaring code)で構成されています。
各実行コードは、類似のものごとに「クラス」に分類され、各「クラス」は類似のものごとに「パッケージ」に分類されていますが、申告コードは、各実行コードの名称、所属クラス、所属パッケージを記載しており、プログラマーが必要とする実行コードを呼び出すときに使用されます。

Googleは、プログラマーがスマートフォン用のアプリケーションプログラムをJavaで自由に開発できる環境(Androidプラットフォーム)の開発を目指しました。Googleは、Android用Java SEを完全自社開発しようとしました。
実行コードも申告コードも新たに独自開発しましたが、Java SEに習熟したプログラマーの使い勝手の良さを維持するために、申告コードのうち、37のパッケージに関して合計11,500行の申告コードを複製せざるを得ませんでした。
訴訟の経緯は複雑ですが、連邦最高裁は、この判決で、申告コードおよびAPI構造の複製に対するフェア・ユースの成否について判断を下しました。
米国著作権法107条は、フェア・ユースの判断に当っての考慮要素4点を上げています。
①使用の目的および性質、②著作権のある著作物の性質、③著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量および実質性、④著作権のある著作物の潜在的市場または価値に対する使用の影響です。

まず、連邦最高裁は、②著作権のある著作物の性質について、コンピュータ・プログラムはその機能性のゆえに著作権の保護の核心から遠いが、「申告コードは、著作物性があったとしても、(実行コードのような)たいていのコンピュータ・プログラムよりも著作権の核心から遠い」と判示して、フェア・ユースの成立に有利と判断しました。

つぎに、連邦最高裁は、①使用の目的および性質について、「プログラマーが慣れ親しんだプログラム言語の一部を捨てて新たな言語を学習せずとも、当該タスクを呼び出せるようにする」ことにあるから、トランスフォーマティブ(transformative)であると認定し、フェア・ユースの成立に決定的に有利と判断しました。

さらに、連邦最高裁は、③使用された部分の量および実質性について、「プログラマーがすでにSun社の本件APIシステムで作業することに習熟しており、プログラマーにそれを使わずにAndroidスマートフォンシステムを構築させることが困難、おそらく不可能、となる」部分に限られているから、フェア・ユースの成立に有利であると判断しました。

最後に、連邦最高裁は、④著作物の潜在的市場または価値に対する使用の影響について、Java SEの著作権を保有するOracleの損害は不確実である。他方、本件申告コードの複製許諾権をOracleが持つことは、公衆の利益(「当該インターフェースで作業することを学習したプログラマーが開発する創造的な改良、新規のアプリケーションおよび新しい使用方法」によって公衆が受ける利益)を害する危険があるから、フェア・ユースの成立に有利である、と判断しました。
連邦最高裁は、以上のように、Googleによる本件APIの使用はトランスフォーマティブであってフェア・ユースが成立すると判示しました。

米国著作権法107条は、フェア・ユースの成立について4つの考慮要素をどのように評価すべきかを、規定していません。しかし、ソニー・ベータマックス事件(Sony Corp. v. Universal City Studios, Inc., 464 U.S. 417 (1984))やプリティ・ウーマン事件(Campbell v. Acuff-Rose Music, Inc., 510 U.S. 569 (1994))の判例などを通じて、4つの要素をどのように評価してフェア・ユースの成立を認定すべきかは、ほぼ固まっています。端的に言えば、トランスフォーマティブ・ユースと認定されれば、原告が損害の立証に成功しない限りまたは使用の範囲が必要な限度を明らかに越えない限り、フェア・ユースの成立が認められます。

トランスフォーマティブ・ユースは、一言でいえば、原著作物の表現を利用しつつも、原著作物の鑑賞価値を利用せず、原著作物の鑑賞価値に別に意味づけを与える使用方法です。
これを本件について見ると、Googleによる申告コードの使用は、Javaに習熟したプログラマーに対して同じ使い勝手を維持するためです。この使用は、複製された申告コードの持っている使用価値(鑑賞価値)を利用する使用方法です。しかし、Javaに習熟したプログラマーが他のプログラミング環境でもその取得した技能を生かすことを可能にするという競争促進的効果に着目すれば、申告コードの鑑賞価値に別に意味づけを与える使用方法といえるように思います。
したがって、これをトランスフォーマティブと認める本件判決は、従来のトランスフォーマティブ・ユースの枠組みにない、新しい類型を認めたものとして重要だと思います。

以上
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