JRRCマガジンNo.216 写真の引用

山本隆司

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JRRCマガジン No.216   2020/9/24
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※マガジンは読者登録の方と契約者、関係者の方にお送りしています。

みなさまこんにちは。
4連休はリフレッシュのために外に出かけた方が多かったようですね。
私も御多分に漏れず、鎌倉散策に出かけました。学生時代は毎週部活で海に来ていたのですが、
久しぶりに来てみると随分と変わった鎌倉周辺に驚きました。
街も景色も食べ物も、インスタグラム界隈でいう「映える」スポットが多いせいか、
携帯ではなく、カメラを持ち歩いている方が多かったのが印象的でした。

本日の山本先生のコラムのテーマはズバリ「写真の引用」。
引用は全ての要件を満たすことが必要ですので、その見極めについてお話しいただいています。
必見です。

<事務局からのお知らせ>
・本年度分の使用料申請はいよいよ今月末が期限です。お済でない方はお急ぎください。
・大人気の著作権中級講座(オンライン開催)は参加枠を拡大し10月19日に開催が決定しました。
応募については近日ご案内予定です。

前回までのコラムはこちらから
https://jrrc.or.jp/category/yamamoto/

◆◇◆山本隆司弁護士の著作権談義(91) ━

    -写真の引用-

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私は、今年「定説破りの日本古代史」という本を出版しました。
考古学の文献等から、たくさんの図表や写真を引用しています。
たとえば、漢の時代に作られた青銅鏡(漢鏡)が日本列島でたくさん出土します。考古学者が出土する漢鏡を製作年代から分類したところ、
2世紀前半までに作られた漢鏡の出土は、ほとんど九州北部に集中しますが、2世紀の第4四半期に作られた漢鏡の出土はほとんど近畿に集中します。
漢鏡は威信財です。このことは、卑弥呼の時代(3世紀前半)よりも前、2世紀の第4四半期までには、日本列島における権力の中心が近畿に移ったことを意味します。
私は、以上のような主張を視覚的に補強するために、漢鏡の製作年代ごとに漢鏡の出土地を日本列島にプロットした地図を、専門家の文献から出典表示のうえ転載しました。

以上のような転載は、著作権法32条の予定する典型的な適法引用に当たると思います。
 
ところが、私は欧米の写真家を代理することがありますが、
たとえば日本の海外旅行会社がそのHPに海外の名所を紹介しそこに当該名所を撮影した他人の写真を無断転載しているのをよく目にします。
そのなかには、写真の出展表示をしているものがあります。

これは、著作権法32条1項の適法引用に当たるのでしょうか。私の上記転載とどこが違うのでしょうか。

著作権法32条1項は、
「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、
かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」と規定しています。
したがって、適法引用の要件は、
①「引用」であること、
②引用される著作物が公表著作物であること、
③公正な慣行に合致する引用であること、
④報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでことの4つです。

第1の要件の判断には、パロディモンタージュ事件の最高裁昭和55年3月28日判決が有用です。
引用する著作物と引用される著作物との間の主従関係と明瞭区別性です。
上記旅行会社のHPでは、名所の説明記事があり、その視覚的補強資料として写真が転載されているので、主従関係と明瞭区別性は認められうると思います。
したがって、「引用」の概念に該当しうると思います。
第2の要件も、上記旅行会社のHPでは、ネット上で見つけた写真を転用しているので、充足が認められます。
第3の要件は、著作権法48条に適合する出典表示があれば、原則的に充足が認められると思います。

問題は、第4の要件です。
第4の要件は、①引用の目的が正当であること、②引用の範囲がその目的上必要な合理的範囲にとどまることに分けられると思います。
美術品鑑定書事件の知財高裁平成22年10月13日判決は、引用の適法性について、
利用の目的、利用の方法・態様、著作物の種類・性質、著作権者に及ぼす影響等を総合考慮するとの判断基準を示しました。
その事案での著作物使用の目的が著作権法の規定する引用の目的に含まれるものかどうかを検討しています。
そこでは、美術品鑑定における著作物利用の目的を贋作の存在を排除することなどと認定しています。
したがって、この判決では、引用する目的は何でもいいとは考えておらず、正当なものに限定しています。

では、どのような目的であれば、正当な目的に当たるのでしょうか。

著作権法は「報道、批評、研究」を挙げています。
事実を解明し公衆が真実を共有することが民主主義の基礎であり、報道、批評、研究はいずれも、事実を解明し公衆が真実を共有することに資するという公共性を持つ点で共通します。
なお、米国著作権法は、フェア・ユースに当たる目的の例示として「批評、解説、ニュース報道、教授、研究または調査等」を挙げています(107条)が、
これらも事実を解明し公衆が真実を共有することに資するという公共性のある行為です。
また、英国著作権法は、伝統的にフェア・ディーリングに当たる目的目的の例示として「私的学習、研究、批判、評論、または新聞の要約」を挙げています(1911年法2条(1)(i))が、
これらも事実を解明し公衆が真実を共有することに資するという公共性のある行為です。

以上のことから、適法引用と認められる引用の目的は、事実を解明し公衆が真実を共有することに資するという公共性を持った行為に限定されるように思います。
前述の美術鑑定書における引用の目的も、贋作を排除する点にあり、事実を解明し公衆が真実を共有することに資すると評価できると思います。
僭越ながら私の本も、歴史の真実を解明しこれを公衆と共有することに資するといえると思います。

他方、上記旅行会社のHPは、転載された写真は旅行パックのイメージアップによる売り上げアップを目的にしており、
そのためには他の写真でも足るところ、自費で写真を撮影したり他人の写真を使うライセンスを取得する費用を節約するという営利目的しか存在しません。
したがって、適法引用の第4の要件を欠くので、著作権法32条1項の適用を受けないと考えられます。

以上
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