JRRCマガジンNo.207 ダウンロードと源泉所得税

山本隆司

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JRRCマガジン No.207   2020/6/11
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みなさまこんにちは。
5月6月は税金というものを実感する季節でもあります。
地方税に自動車税、固定資産税・・・。
ちょうど支払いを終えた頃、タイムリーに原稿が届きました。

今日の山本先生のコラムは税金に関するお話です。

著作物使用に関する税務処理は経理担当の方にとって悩ましいのではないでしょうか。
著作物のダウンロードがテーマですが、日本と海外では解釈が異なるようです。
しかし、それは日本においても同様です。
昨年10月の消費税改定時には当センターが徴収する複製利用許諾料においても、
国税庁の例示には該当するものがなく、我々も税理士や管轄の税務署等に何度も確認を行いながら対応しました。

ケースを知っておくだけでも業務に役立ちますね。

前回までのコラムはこちらから
https://jrrc.or.jp/category/yamamoto/

◆◇◆山本隆司弁護士の著作権談義(88) ━

-ダウンロードと源泉所得税-

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日本から海外への著作権使用料の支払いには、源泉所得税が課され、送金する日本企業はこれを源泉徴収して、送金する必要があります。
海外のサイトから著作物をダウンロードした場合に、その使用料の支払いに源泉所得税がかかるでしょうか。
私はかかると思うのですが、OECD(経済協力開発機構)の租税条約解説書にはかからないと書かれています。
ここには、日本法の公衆送信権とWCT(著作権に関する世界知的所有権機関条約)の公衆伝達権の違いがあるようです。
 
まず、源泉所得税の対象になるのは、「著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)の使用料又はその譲渡による対価」です(所得税法161条7号ロ)。
税率は原則20%(+復興税)ですが、相手国が日本と租税条約を結んでいる場合には、この源泉所得税が減免(米国:免除)されます。
しかし、日本における「著作物の使用」であっても「著作権の使用」でなければ、所得税法上の著作権の使用料には当たりません(東京国税不服審判所平成16年3月31日裁決・東裁(諸)平15第253号)。
 
日本の企業が海外のサイトから著作物をダウンロードして使用する場合、日本の企業に日本における「著作物の使用」はあります。
では、日本の企業に日本における「著作権の使用」はあるでしょうか。

ここに存在する行為を挙げていくと、①日本企業による著作物の受信、②日本企業による受信した著作物のPCへの複製、③日本企業によるPC内での使用があります。
各行為を見ていくと、①については、受信行為はどの支分権の対象でもないので、「著作権の使用」には当たりません。
③については、PC内での使用によってメモリ内に複製物ができますが、著作権法47条の3に基づく権利制限を受けますので、「著作権の使用」には当たりません。
他方、②については、複製権(21条)の行使に当たりますので、日本における「著作権の使用」があります。
したがって、前記の日本企業が支払う使用料は著作権使用との対価として、源泉所得税がかかることになります。
 
ところが、OECDの租税条約解説書では、著作物の複製物を販売するに当たって、a.販売者がユーザーに有形的複製物を引き渡す場合にその対価が著作権使用料に当たらないのと同様に、
b.販売者がユーザーに複製物をダウンロードさせる場合にも著作権使用料に当たらないと言っています(14.4節)。
なるほど、a.有体物の引き渡しにおいては、ユーザーに著作権の使用はありません。
ユーザーは、著作物複製物を譲り受けますが、譲渡権が及ぶのは譲渡行為であって譲受行為ではありません。
また、ユーザーは、譲り受けた著作物複製物を自己のPCに複製し、PC内で稼働中にもメモリに複製が生じます。
この複製には著作権法47条の3の権利制限が及びます。
他方、b.ダウンロードの場合には、ユーザーは、著作物複製物を受信し、自己のPCにこれを複製します。公衆送信権は受信行為には及びません。

しかし、自己のPCへの複製行為には、複製権が及びます。著作権法47条の3の権利制限は「プログラム著作物の複製物」の所有者がそれを複製する行為を対象にするので、
「プログラム著作物の複製物」自体の作成は対象になりません。
したがって、すくなくとも、日本の著作権法上は、販売者がユーザーに複製物をダウンロードさせる場合にも著作権使用料に当たると考えられます。
 
では、なぜOECDの租税条約解説書では、販売者がユーザーに複製物をダウンロードさせる場合にも著作権使用料に当たらないと考えるのでしょうか。
それは、OECDが前提にするのが日本式の「公衆送信権」ではなくWCT8条の規定する「公衆伝達権」だからだと思います。
公衆送信権は、送信行為を対象にしていますが、公衆伝達権は、受信行為(受信させる行為)および受信物の利用行為を対象にしています。
したがって、公衆伝達権という権利の構成上は、ユーザーのPCへの複製の行為者は、ユーザーではなく送信者と考えられます。
それゆえ、販売者がユーザーに複製物をダウンロードさせる場合にも著作権使用料に当たらない、と考えるのではないでしょうか。
 
公衆伝達権はわれわれには馴染みがないので、公衆送信権との違いが直感的には理解しにくいところです。

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