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JRRCマガジン No.183 2019/11/7
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こんにちは。
先日の文化の日に秋の叙勲がありました。
本年度は、当センターの運営にもご尽力いただいている写真家であり、公益社団法人日本写真家協会会長の田沼武能先生に文化勲章が授与されました。先生を始め、今回は日頃より著作権の普及啓発にご協力いただいている多くの方が文化功労者として表彰されました。皆様おめでとうございます。
これからもひとりでも多くの著作者から、著作物の円滑な流通・促進に対しお力添えをいただけるよう我々も努めて参ります。
さて、
今回の山本先生のコラムは、アメリカの著作権局が出している5年間の長期戦略計画についてです。
日本の著作権行政の指針は文化審議会で検討していきますが、毎年それぞれの課題ごとに部会や分科会での結論をもって文化審議会でまとめていくスタイルとは少々異なるようです。
前回までのコラムはこちらから
⇒https://jrrc.or.jp/category/yamamoto/
◆◇◆山本隆司弁護士の著作権談義(81) ━
-米国著作権局戦略計画2019-2023-
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アメリカの著作権局は、定期的に、5年間の長期戦略計画を立てて発表しています。「戦略計画2019-2023」は、「著作権は表現の自由のエンジン」を副題としています。
表現の自由と、表現に対する独占権を認める著作権とは、一見矛盾するようにも見えます。なにゆえ、著作権は、表現の自由を推進するエンジンなのでしょう。
今回は、著作権が表現の自由を推進するエンジンとなるメカニズムについて検討したいと思います。
表現の自由の核心は、内心における思想や信仰(「アイデア」)を他人に伝達(「表現」)することの自由を保障するものです。
表現の自由の重要性は、自由な思想の流通と自由な事実の伝達によって民主主義を支えるという点にあります。
表現の自由は、その伝達のために他人の表現を自由に使用できることまでも保障するものではありません。したがって、著作権制度は、表現の自由と原理的に矛盾しません。
しかし、例外的に、著作権制度が表現の自由と矛盾することが生ずる場合があります。
特定のアイデアの使用に不可避な表現である場合やアイデアの使用においてありふれた表現である場合です。
このような表現に対して著作権による表現の保護を与えれば、事実上アイデアの使用に対する独占権を著作権者に与えることになり、アイデア自由の原則ないし表現の自由が妨げられます。
そのため、このような場合には、著作権による当該表現の保護が否定されます。日本では、その機能を創作性概念が担い、アメリカでは、マージ理論とありふれた情景の理論が担っています。
また、著作権は、特許権と異なり、著作物の新規性を要件とせず、また模倣のみを規制します(独自創作を許します)。
それはなぜか。
もし著作物に新規性を必要とし、同一性のみを侵害の要件とすれば、表現行為に当たって一々先行著作物の有無を調べなければならず、表現の自由が大きく制限されることになります。
同じ思想感情であっても、AもBも自分の言葉と表現方法で表現する限り何らの制限もなく自由に表現できることが、表現の自由のために必要です。
そこで、著作権による保護には新規性を要件としないこととするとともに、保護の範囲を著作物に「依拠」した利用に限定し、他人が偶然に作成した同一著作物には及ばないこととしています。
以上のように、著作権制度は、表現行為において、アイデアの自由な表明のための、いわばフリーウェイを構築するものです。その意味で、「著作権は表現の自由のエンジン」と言われています。
ところで、「戦略計画2019-2023」は、著作権局の業務に関して、6本の戦略目標を立てています。
第1は、IT技術の最新化です。いまや著作権登録申請は年間約50万件に達し、オンライン申請はその95%に上ります。最新のIT技術を使って、利用者が使いやすく企業ニーズに則したシステムの開発を目指しています。
第2は、業務処理の最適化です。著作権登録などのサービスを提供する業務処理過程を再検討し、
タイムリーかつ信頼性のあるサービスを提供できるよう、著作権局の業務処理、手順および方針を再構築することを目指しています。
第3は、組織改革です。もともと現行法が与えた任務に対応するよう著作権局の組織は拡大してきました。
しかし、効率的なサービスという結果重視の観点から専門的および高度に熟練した戦力となるよう戦力を再配置して、文化的優越を促進することを目指しています。
第4に、啓蒙活動です。著作者、教師、学生、図書館司書、実演家その他著作権関係者に対して著作権法と著作権局についての理解を広めるよう、教育的サービスおよび情報サービスの提供を拡大することを目指しています。
第5に、著作権法と著作権政策について公平な専門知識の提供です。著作権局は、著作権制度について国内法のみならず国際条約および外国法についての専門知識を持っています。
著作権局は、著作権法と著作権局について求めに応じて、連邦議会、裁判所および行政機関に対して、公平かつ専門的な助言および支援を提供することを目指しています。
第6に、成果の計測です。著作権局の業務が公衆に与える影響をデータで計測し、データに基づく意思決定によってその任務を達成することを目指しています。
以上
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