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JRRCマガジン No.157 2019/2/6
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日本複製権センターのオフィスのある外苑前から表参道にかけて、
たくさんの飲食店があります。どんなお料理があるのかしらと考
えてみるとカレーを扱っているお店も多く、慌ただしいとついカ
レーを選んでいることが多いように感じています。
皆さまはいかがでしょうか。
さて、今回の山本隆司弁護士のコラムは「料理の著作物性」です。
◆◇◆山本隆司弁護士の著作権談義━━━━━━━━━━━
第72回 「料理の著作物性」
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料理は、彩りが美しく、食べておいしく、香りもいい「芸術作品」
というべきものが存在します。では、料理は、著作物に該当するの
でしょうか。
この問題を考える前に、まずは、関連する裁判例を見ておきましょ
う。日本には、料理方法の著作物性が争われた事例(東京地裁平成
23年4月27日判決)が一つあります。原告は、「模様入りおにぎり具」
という実用新案登録を出願しました。その明細書中の「おにぎりの
上に型当て板を当て上からふりかけ、ごま、桜でんぶ、青のり等粒
状の具をくりぬき部に埋め込んで型当て板をとりのぞけばおにぎり
に花や動物等の絵や模様や文字がえがき出されて美しいおにぎりと
なっている」との記述などについて、被告がそれに対する著作権侵
害したと訴えました。裁判所は、記載されている料理法はアイデア
に過ぎないから保護されない、その具体的表現もアイデアのありふ
れた表現に過ぎないから創作性がない、と認定しました。
この裁判で著作物性が争われた対象は、料理法とその記述でした。
料理自体の著作物性ではありませんでした。その点で、参考になる
のは、フランスで香水の著作物性が争われた事件(ティエリー・ミ
ュグレー事件・パリ商事裁判所1999年9月24日判決)です。裁判所は、
香水を「精神の著作物」と認め、香りに創作性を認めました(井奈
波朋子「香りの著作物性」著作権研究30号180頁)。
では、日本法では、香水に著作物性を認めることができるでしょ
うか。私は、香りが「表現」であることは間違いないと思います。
しかし、人間にそのような嗅覚を与えるものという意味で、機能な
いしアイデアでもあると思います。しかも、当該表現と当該機能な
いしアイデアとは、不可避ないし不可分の関係にあります。したが
って、香りに対する創作性は否定されることになると考えます。他
方、フランスでは、アイデアと表現に二分法やそれを前提とするア
イデア自由の原則についての観念が薄いようです。フランスでは香
水やファッションにも著作物性を認めているのは、そのためだと思
います。
つぎに料理について検討してみたいと思います。料理には、見た
目、味、香りといった3つの表現要素があると思います。しかし、
いずれについても創作性は認められないと思います。
すでに平成31年1月の著作権情報センター月例研究会において詳し
くお話しさせて頂いたところですが、創作性概念を機能的に見ると、
創作性には、第1に、著作権による保護を正当化する機能、第2に、
アイデアに著作権が及ばないようにする機能、第3に、既存の表現に
著作権が及ばないようにする機能の3つがあります。日本法では、
創作性の第1の機能から、新たに生み出された表現であることが求め
られます(第1のテスト)。創作性の第2の機能から、アイデアに不
可避または平凡な表現でないことが求められます(第2のテスト)。
また、創作性の第3の機能から、既存の表現(または既存の表現範
疇のイメージ)から一見して識別可能な表現であることが求められ
ます(第3のテスト)。
料理の見た目は、料理に対する既存のイメージを打ち破るような
見た目でない限り、創作性の第3のテストに合格しないと思います。
味も香りも、人間にそのような味覚・嗅覚を与えるものという意味
で、機能ないしアイデアでもあると思いますが、当該表現と当該機
能ないしアイデアとは、不可避ないし不可分の関係にあるので、い
ずれも創作性の第2のテストに合格しないと思います。
料理の創作性については、以上のように考えられるのではないか
と思います。
以上
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