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セミナーで講演するとき、新聞記事や報告書に掲載されている図表を、出所を明示しながらスクリーンに投影にその内容を解説している。

私は、様々なところから依頼を受け講演を行っていますが、講演では、新聞記事や報告書等に掲載されている図表等を画面に投影しながら、その内容について解説をすることが多いです。画面上には、資料が特定されるように出所を明示するようにしていますが、この場合、権利者の許諾が必要ですか。(32条)
他人の著作物である図表等を講演において画面に投影する行為は、著作権者の複製権および上映権に抵触します(著作権法21条、22条の2)。ただし、当該図表等の使用が、著作権法上の「引用」(32条1項)の要件に該当すれば、著作権者の許諾は不要です。
適法な引用の要件は、①公表された著作物の「引用」であること、その「引用」が、②公正な慣行に合致するものであり、かつ、③報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものであることです。②や③の要件については、自分の著作物と他人の著作物とが明瞭に区分されていること、自分の著作物が主であり他人の著作物は従であるという主従関係があること、他人の著作物を引用する相当の理由があること等が必要と考えられています(最高裁昭和55年3月28日判決〔モンタージュ写真事件〕等)。なお、複製して引用する場合、出所の明示が必要です(48条1項1号)。
講演において、新聞記事や報告書等に掲載されている図表等を画面に投影する場合、当該図表は①公表された著作物であり、自分の著作物である講演と図表は明瞭に区分されています。また、講演において図表の内容を解説する場合、解説自体が目的ではなく、その解説を通じた自説の補強を目的とすることが通常と考えられます。このような場合、図表はあくまで補助的に使用されるものですので、講演が主で図表が従であるとの主従関係があり、図表を使用する相当の理由もあるものと考えられます。すなわち、②、③の要件を満たすものといえます。したがって、出所を明示しているのであれば、32条1項における適法引用として、権利者の許諾なしに行うことができると考えます。
また、非営利団体が参加者から参加費等を徴収せず、講演者にも講演料を支払わず行うような非営利・無償の講演の場合、図表等の上映は著作権法38条の規定によっても適法となり得ます。
なお、スライドを複製し配布する場合など、スライドが口述した講演を離れて単体で著作物となることも考えられます。この場合、スライドにも講演の内容や要約を文字として記載し、その中で図表が出てくる場合には、上記と同様に適法引用に該当するでしょう。しかし、スライドに新聞記事や報告書等の図表だけを載せている場合、スライド単体でみれば他人の著作物だけで構成されていますので、適法引用とはいえません。したがって、当該スライドだけを配布する場合などには、著作権者の許諾が必要と考えます。

回答者  山本隆司 弁護士 (インフォテック法律事務所)
※回答内容は本ケースにおける一例を掲載しています。
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