知恵袋
調査会社に依頼した調査の報告書を複製し、顧客や関連会社に有償販売したい。また、ダイジェスト版を自社で作成し無償で配布したい。
- 私の企業では、あるシンクタンクに依頼し市場調査をしました。その報告書が届いたのですが、顧客や関連企業からの要望もあり、その報告書の複製物を作成し、有償で販売したいと思っています。また、その報告書の概要版を私の企業で作成し、こちらは無償で配布したいと考えています。この報告書の作成費用は私の企業が負担しているのですから、このようなことは自由にできると考えているのですが、何か問題はありますか。(61条)
- 著作物の著作権は、まず著作者に発生し(著作権法17条)、著作者が著作権を譲渡すれば、譲受人に移転します(61条1項)。本件でも著作物である報告書の著作権は、作成者であるシンクタンクに原始的に帰属します。したがって、貴社が作成費用を負担したかどうかにかかわらず、シンクタンクが貴社に著作権を譲渡する旨の合意がない限り、著作権はシンクタンクが保有したままです。譲渡の合意は、黙示でも可能ですが、譲渡の意思が推認される状況証拠の存在が、貴社による作成費用の事実のほかに、必要です。
したがって、報告書を複製する行為は、シンクタンクが有する複製権(21条)に抵触し、有償で販売する行為は、シンクタンクが有する譲渡権(26条2)に抵触するので、貴社はシンクタンクから複製権および譲渡権の許諾を得る必要があります。
また、報告書についてその表現内容を利用して概要版を作成する行為は、通常、翻案権(27条)に抵触し、当該概要版を無償配布する行為は、二次的著作物の原著作者が有する譲渡権(28条、26条の2)に抵触するので、貴社は、シンクタンクから翻案権および原著作者として有する譲渡権の許諾を得る必要があります。
回答者 山本隆司 弁護士 (インフォテック法律事務所)
※回答内容は本ケースにおける一例を掲載しています。