知恵袋
料理雑誌に掲載された創作料理を実習でつくりたい。また、レシピを複製して生徒に配布したい。
- 私はある料理専門学校の教員ですが、今度実習で料理雑誌に載っていた創作料理を作ろうと思っているのですが、何か問題がありますか。生徒に当該雑誌のレシピが載っている部分を複製して配布することはどうですか。(アイデアの利用、35条)
- 著作権法は、「著作物」、すなわち「思想又は感情を創作的に表現したもの」を保護しています(著作権法2条1項)。したがって、この「著作物」に該当しないものは著作権法で保護されません。
ここで、独創的な創作料理であったとしても、その味や香りは、著作物として保護される表現ではないと考えられています。また、盛り付けなどの見た目についても、実用品なので、純粋美術と同様の創作性が認められることは考えにくく、著作物として保護されることは難しいでしょう。さらに、当該創作料理の調理手順であるレシピ自体も、表現ではなくアイデアです。したがって、料理雑誌に載っている創作料理を実際に作ってみることは、著作物でないものの再現に過ぎないので、著作権法上の問題はありません。
他方、当該料理雑誌の記事は、その創作料理のレシピを文章により具体的に表現したものですので、作成者の個性が表れていれば、著作物として保護されます。また、調理過程や完成した料理を撮影した写真が掲載されている場合には、これも一般に写真の著作物として保護されます。したがって、これらを著作権者に無断で複製することは、著作権者の複製権に抵触します(21条)。
しかし、営利を目的としない教育機関の教員は、授業で使用することを目的とする場合、著作権者の許諾なしに著作物を複製することができます(35条1項)。この営利を目的としない教育機関には、小・中・高・大学・高等専門学校だけでなく、学校教育法上の専修学校や各種学校も含まれ、調理専門学校は、専修学校(専門課程を置く場合専門学校と称することが可能)に当たると考えられます。したがって、調理専門学校の教員が、実習で配布するために料理雑誌の記事を複製することは、著作権者の許諾なしに行うことができます。ただし、慣行に従った出所の明示が必要です(48条1項3号)。
なお、営利目的の料理教室などの場合には、35条の適用はありませんので、料理雑誌の記事の複製には著作権者の許諾が必要です。
回答者 山本隆司 弁護士 (インフォテック法律事務所)
※回答内容は本ケースにおける一例を掲載しています。