知恵袋
収集した雑誌の論文を自宅のパソコンでPDF化し、個人的に借りているクラウド上で保管している。
- 私は個人的にクラウド業者と契約し、これまで収集した雑誌の論文のうちあまり活用していないものを自宅のパソコンを使ってPDF化し、ネット上に保管しています。この場合、私は権利者の許諾を得る必要がありますか。(30条)
- まず、雑誌の論文をスキャナーで読み取るなどしてPDF化することは、著作物の複製(著作権法21条)に当たりますが、個人的な使用のために自身で複製する場合には、私的使用のための複製(30条1項)として著作権者の許諾なしに行うことができます。
さらに、クラウドサービスのサーバーにPDF化したデータをアップロードする際にも、当該データの複製が行われています。この複製は、クラウド業者が用意したサーバーにおいて行われることから異論(MYUTA事件・東京地裁平成19年5月25日判時1979号100頁)もあるところですが、一般的には、複製行為者は利用者自身と考えられています。したがって、アップロードしたデータに自分だけがアクセスできるような場合には、私的使用目的の複製に該当するといえます。
もっとも、クラウドサービスにおけるサーバーについては、これによる複製が私的複製の例外となる「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器」(30条1項1号)に該当するかも議論となっています。しかし、この条文は、貸しレコード店における高速ダビング機器による複製を権利制限の対象から外そうとしたものであり、立法当時にはクラウド上のサーバーの出現などまったく想定されていませんでした。このような条文の立法趣旨からみて、クラウド上のサーバーは、「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器」には含まれないとの見解が有力です。
なお、サーバーにPDF化したデータをアップロードすることについては、公衆送信権および送信可能化権(23条1項)の観点からも問題になり得ますが、アップロードしたデータに自分だけがアクセスできるような場合には、「公衆」への送信・送信可能化には当たらないと考えられます。
したがって、アップロードしたデータに自分だけがアクセスできるような場合である限り、サーバーへのアップロードについても、著作権者の許諾なしに行うことができると考えます。
回答者 山本隆司 弁護士 (インフォテック法律事務所)
※回答内容は本ケースにおける一例を掲載しています。