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JRRCマガジン No.181 2019/10/17
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こんにちは。
今回の山本先生のコラムは今年6月に発効した
EUのデジタル単一市場における著作権および関連権に関する指令の解説です。
著作物の利用もデジタル社会では多様化し、
今日の利用実態に即した著作物の円滑な流通と、
それに見合った権利の保護が求められています。
日本でも世界中の著作物が使い易くなるよう、
我々も日々、各国の著作権機構と情報交換を行いながら
努力を重ねているところです。
前回までのコラムはこちらから
https://jrrc.or.jp/category/yamamoto/
◆◇◆山本隆司弁護士の著作権談義(80) ━
-EUデジタル単一市場指令-
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欧州連合は、2019年4月17日に、デジタル単一市場における著作権および関連権に関する指令を制定しました(6月6日発効)。
なお、加盟国は、2021年6月7日までに国内立法措置を行うこととされています。
この指令の規定事項は多岐にわたります。ここでは、どんな内容が規定されているのか主な内容をざっくりとご紹介したいと思います。
第1に、情報解析(text and data mining)のための著作物等の利用に対して、権利制限を加盟国に義務づけています。
研究機関または文化遺産保存施設が調査または研究のために著作物等を使って情報分析することに対して権利制限を認めます(3条)。
また、適法にアクセスできる著作物等を情報分析のために誰でも利用することができるとの権利制限を認めます(4条)。
第2に、教育機関が授業目的で図解説明のために著作物等をデジタル使用することにたいして、権利制限を加盟国に義務づけています(5条)。
ただし、出典の表示を条件としています。
第3に、文化遺産保存施設が文化遺産の保存のためにその複製物を作成することにたいして、権利制限を加盟国に義務づけています(6条)。
第4に、文化遺産保存施設による絶版著作物の利用に関して、集中管理団体(collective management organisation)に非受託著作物等について非営利目的の非独占的ライセンス権限を付与するよう、
加盟国に義務づけています(8条~11条)。
第5に、集中管理団体が非受託著作物等についてもライセンス権限を与える規定を置くことができるとします(12条)。
ただし、権利者に対する情報提供義務やオプトアウト権など条件としています。
第6に、動画のデマンド送信に対するライセンス交渉について、中立機関または調停機関が支援することを加盟国に義務づけています(13条)。
第7に、印刷物出版者に対して、その出版物のオンライン利用に対する隣接権を保障することを加盟国に義務づけています(15条)。
第8に、出版者に権利を譲渡した著作者は出版者によるその著作物の利用に対して報酬請求権を保有することを加盟国に義務づけます(16条)。
第9に、ユーザーによる違法コンテンツのアップに対するプロバイダーの責任は制限されていますが、
ユーザーのアップするコンテンツを営利目的で配信するプロバイダー(online content-sharing service provider)については原則として責任制限を認めず、
最善努力などの厳格な要件を満たす場合にのみ免責するよう、加盟国に義務づけています(17条)。
第10に、著作者・実演家は、その独占的権利を譲渡またはライセンスした場合には、その著作物等の利用に対して報酬請求権を持つことを加盟国に義務づけています(18条)。
また、著作者・実演家は、その権利を譲渡またはライセンスした場合には、その譲受人・ライセンシーからその著作物等の利用に関する権利を定期的に受領する権利を持つよう加盟国に義務づけています(19条、21条)。
さらに、著作者・実演家は、その権利を譲渡または独占的にライセンスした場合には、合理的な期間その著作物等が利用されないときには当該譲渡・ライセンスを取り消す権利を持つことを加盟国に義務づけています(22条)。
調べてみて思いましたが、EUの著作権関係の指令は主なものでも8つあります。一度整理して、理解しておく必要がありそうです。
以上
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