JRRCマガジン第76号(管理事業法の内容)

川瀬真

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   JRRCマガジン No.76 

川瀬先生の著作権よもやま話
著作権等の集中管理
第6回「管理事業法の内容」
 
                               2016/10/19配信
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皆様、こんにちは。
JRRCメルマガ担当です。

紅葉前線もゆっくりと南下し始めました。
この時季、
各地の教育機関等で、学園祭や文化祭、学芸会や作品展などが開催されます。
今年は『スポーツの秋』を決め込み、宣言までしてしまっていたところ、先日縁あってコー
ラスに参加することに。大慌てで練習をする羽目となり、『芸術の秋』をも追加となった今
日この頃です。皆さまはいかがお過ごしでしょうか?

それでは、
川瀬先生の著作権よもやま話
第6回「管理事業法の内容」
をお送りいたします。

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川瀬先生の著作権よもやま話 
著作権等の集中管理 
第6回「管理事業法の内容」

 今回からは管理事業法の規制の内容について説明をしていきます。
 まず、規制の範囲です。管理事業法では、取次ぎ又は代理の方法による委任契約と
信託契約による管理事業について原則規制が及ぶことになっています。仲介業務法の
下では、媒介による管理事業についても規制が及ぶことになっていましたが、媒介によ
る管理事業については、規制の必要性がないとされ規制対象から外されました。媒介に
よる著作権管理の例としては、翻訳エージェントがあります。翻訳エージェントの
役目は、ある日本の出版者が英語で書かれた外国の出版物の翻訳出版を行おうとす
る際に、日本の出版者と外国の著作者又は出版者の間に入って契約の仲介をすること
です。翻訳エージェントは、両者から出された様々な条件について、その専門的知識を
生かしながら当事者間の合意形成を目指して調整をしますが、最終的な結論は当事者
間の判断にゆだねられています。すなわち、翻訳エージェントはあくまで媒介者ですから
、許諾の権限もないですし、当事者の意向に反した結論を出す権限も一切持っていない
ことになります。したがって、このような形態の管理事業は、当事者同士が話合いをして
合意をしたことと同じですので、そこに不正行為が介在する余地はほとんどないことにな
ります。
 また、委任契約や信託契約に基づく管理事業についても、規制の必要がない場合が
考えられます。利用許諾契約で最も重要な要素は何かというと使用料の額をいくらにす
るかということです。音楽著作権の世界では、伝統的に「指値取引」が認められています。
例えば仲介業務法が施行されていた時代においてもJASRACは、信託契約による管理
にもかかわらず、外国曲の映画録音については国際的な慣行を尊重し、利用者と委託
者である音楽出版者に協議をさせ当事者の合意により決まった使用料の額で許諾をし
ていました。この場合、そこに不正行為が介在する余地はほとんどありません。
 さらに、現在は金融商品取引法に統合されていますが、当時投資顧問業法という法律
がありました。この法律では、投資情報を投資家に助言するだけで投資判断は投資家
に任せる方法による事業については登録制ですが、その事業の一環で投資行為も業者
に任せる取引を「投資一任契約」による取引として認可制とし、より強い規制を行ってい
ました。
 管理事業法では、このような業界の実態及び他の法制度を参考にして制度設計をし
た結果、利用許諾契約の最も重要な要素である使用料の額をいくらにするかという権
限が権利者に留保されている場合(非一任型)は、不正行為が介在する可能性は少な
いということで規制の対象から外すことにしました。
 したがって、規制の対象は、使用料の額の決定権を管理事業者にゆだねるという一
任契約に基づく取次ぎ又は代理の方法による委任契約及び信託契約による管理事業
ということになります(2条1項)。
 なお、それとは別に、例えば子会社の著作権を親会社が一括して管理するような管理
事業については、不正行為がほとんど起こらないので、密接関係者のための管理事業
は規制の対象外としています(2条2項)。
 また、財産権の管理・処分を信託の方法により業として行う場合の規制を定めている
信託業法との関係ですが、二重規制を回避するため、管理事業には原則信託業法の
規制は適用されないことになっています(26条)。

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