JRRCマガジンNo.344 フランス著作権法解説4 著作者-特に映画の場合

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JRRCマガジン  No.344 2023/11/09
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◆今回の内容
【1】井奈波先生のフランス著作権法解説
【2】受付開始!「2023年度オンライン著作権講座 中級」のお知らせ(無料)
【3】無料オンライン著作権セミナー開催予告(12/15開催)
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皆さま、こんにちは。

今年も紅葉狩りのサイクリングが楽しみな時期となりました。
いかがお過ごしでしょうか。

さて、今回は井奈波先生のフランス著作権法解説の第4回目です。

井奈波先生の記事は下記からご覧いただけます。
https://jrrc.or.jp/category/inaba/

◆◇◆【1】井奈波先生のフランス著作権法解説━━━
第4回 著作者-特に映画の場合
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1 はじめに
 今回は、映画の著作物を中心として、フランス著作権法における著作者について説明します。映画といっても、フランス著作権法には、映画自体の定義はなく、著作物を例示列挙する規定のなかに、「映画の著作物その他の音を伴う、又は伴わない映像の動く連続から成る著作物(以下「視聴覚著作物」という)」との規定があり(112-2条6号)、映画は映像の動く連続から成る視聴覚著作物の一種という位置づけです。
 第2回目では、フランス著作権法上、保護される著作物の要件が正面から規定されていないことを説明しましたが、著作者についても同じく定義規定がありません。とはいえ、フランス著作権法には、著作物は著作者の個性の延長であると考える人格主義が根底にあるため、著作者の資格は著作物にその個性を表現した者に与えられるとの考えが確立しています。人格主義によれば、著作物の中に個性を反映させるという創作行為は自然人にしかできませんので、著作者の資格は自然人にのみ与えられます。したがって、動物やAIが著作者になることはできません。
 また、人格主義によれば、法人も著作者にはなりえません。さらに、111-1条3項は、「精神の著作物の著作者による請負契約または労働契約の存在または締結は、第1項によって認められる権利の享有になんら抵触しない」と定め、労働契約があっても著作権の享受に影響しないという原則が導かれます。日本の著作権法は、映画について職務著作の適用がありますが、フランスの著作権法には職務著作という制度自体がありません。 

2 集合著作物
 このように、フランス著作権法は、人格主義の立場から自然人しか著作者になり得ないという建前で、職務著作を認めていません。しかし、法人であっても著作権者になる手段は用意されています。一つは、著作者から著作権を譲り受ける場合であり、もう一つは集合著作物が成立する場合です。
 集合著作物は、自然人または法人のイニシアティブに基づいて創作される著作物であり、その指示および名のもとで出版、発行および公表され、かつ、その作成に参加するさまざまな著作者の個人的な寄与がその構想の目的である全体の中に融合し、実現される全体において個別の権利を各著作者に付与することができないもの、と定義されています(113-2条3項)。集合著作物の典型例として、新聞などが挙げられます。
 この定義を分解すると、①自然人または法人のイニシアティブで創作され、その指示と名前で公表される著作物で、②著作物の寄与者の寄与が全体に溶け込んで、個別の権利を与えることができなくなった著作物、が集合著作物となります。①の「イニシアティブ」は発意と訳されることが一般的ですが、判例によると主導権を有し指揮監督することが必要とされています。②について、法文上は、寄与が溶け込んでしまい、誰の権利かわからない状態になることが想定されています。この要件により、形式的にはわが国の職務著作と異なるものになっていますが、この部分はあまり厳格に適用されず、現実的な運用がされているようであり、実質的には職務著作と同じ機能を営むものといって良いと思います。たとえば、新聞や辞書など、個人の寄与がわかる著作物についても、集合著作物とされます。
 集合著作物が成立する場合、著作権は、創作のイニシアティブをとってその名で公表した自然人または法人に、原始的に帰属します。また、判例によると、著作者人格権も同様にそれらの者に帰属します。法文では、「作成に参加するさまざまな『著作者』」とされているので、著作者が別に存在し著作権を譲渡するかのように読めますが、そういうことではありません。  

3 映画(視聴覚著作物)の著作物は集合著作物か?
 フランス著作権法上、視聴覚著作物の製作者は、「この著作物の製作について発意と責任をとる自然人又は法人をいう」(132-23条)と定義されていますので、映画の著作物は、集合著作物のようにも見えます。また、集合著作物が、職務著作と同じような機能を有する制度であることからも、映画の著作物は集合著作物であると捉えられがちです。実際、映画(視聴覚著作物)の著作物については、集合著作物か共同著作物かが問題となり、かつては集合著作物と判断された裁判例もありました。しかし、現在は、「共同著作物」であるという結論に落ち着いています。
 ちなみに、フランスでも、ロールプレイングゲームは映画の著作物に該当するかどうかという問題があります。冒頭に述べた映画の著作物の定義からすると、日本と同じように、視聴覚著作物に該当するように見えます。この点、日本では、双方向性があっても映像の連続があると判断しますが、フランスの判例は、逆に双方向性があるので視聴覚著作物ではないと判断しています(破毀院第1民事部2003年1月28日判決)。そして、ゲームは、プログラムの著作物を含む複合著作物であると判断されています(破毀院第1民事部2009年6月25日判決)。

4 共同著作物
 共同著作物は、「二人以上の自然人が創作に協力した著作物」と定義されています(113-2条1項)。日本法の共同著作物と異なるところは、それぞれの寄与部分を分離して個別的に利用できるものであっても、共同著作物とされる点です。共同著作物は、共同著作者の共有とされますが(113-3条)、個別的に利用できるものでも共同著作物であるため、「各共同著作者の関与が異なる分野に属する場合には、各共同著作者は、反対の取り決めがない限り、個々の寄与を分離して利用することができる」(同条)と定められています。
 ところで、映画の著作物に関しては、誰が著作者かを推定する規定があり(113-7条2項)、これによればシナリオの著作者、翻案の著作者、台詞の著作者、視聴覚著作物のために特別に作成される楽曲の著作者、監督が共同著作者と推定されます。ここで特徴的な点は、二次的著作物の原著作者になるはずの翻案の著作者が、共同著作者とされていることです。これらの者は共同著作者の例示であり、他の者も共同著作者になり得ます。映画を集合著作物とすると、この規定は不要になるので、集合著作物と解することはできません。

5 映画産業の保護に向けた著作権法の体制
 フランス著作権法は、映画製作にかかわる著作者を大切に扱うことにより、映画産業を保護する体制をとっていると捉えることができます。
 映画は共同著作物なので、著作者の共有となります(113-3条)。しかし、著作者と映画製作者との間の契約により、排他的利用権は映画製作者に譲渡されます(132-24条1項)。共同著作物が譲渡される場合、著作者に対して、原則として収入に応じた支払いをしなければなりません(131-4条1項)。映画の著作物に関しては、特に、利用方法ごとに報酬が支払われるべきことが定められています(132-25条1項)。報酬は集中管理団体を通して支払われます(132-25-2条)。このようにして、著作者への対価還元が保証されています。日本の監督は、法律上、利用方法ごとの報酬支払が保証されるわけではありません。フランスにおいて、翻案の著作者が共同著作者とされている理由も、収入に応じた支払を保証することにあるとされています。仮に、映画の著作物を集合著作物とすると、比例的な報酬の支払いは不要となります。
 他方で、フランス著作権法は、映画製作や利用を円滑に進める体制もとっています。たとえば、著作者人格権は完成した視聴覚著作物についてのみ行使できるとされ、完成前の権利行使を封じています(121-5条)。また、映画の完成に向けた寄与を拒否した者は、すでに制作されている寄与部分の使用を拒めないことも定められています(121-6条)。このように映画製作者は、著作権者として映画を円滑に利用し、利用許諾し、著作権侵害訴訟を提起することができ、他方で、関与した共同著作者には対価の支払いが保証される体制がとられています。

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【2】受付開始!「2023年度オンライン著作権講座 中級」のお知らせ(無料)
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今年度2回目となる、JRRC著作権講座”中級”を開催いたします。
本講座は知財法務部門などで実務に携わられている方、コンテンツビジネス業界の方や以前に著作権講座を受講された方など、著作権に興味のある方向けです。講師により体系的な解説と、最新の動向も学べる講座内容となっております。エリアや初級受講の有無やお立場にかかわらず、どなたでもお申込みいただけます。
参加ご希望の方は、著作権講座受付サイトより期限までにお申込みください。

★日 時:2023年11月28日(火) 10:30~16:50★

プログラム予定
10:35 ~ 12:05 知的財産法の概要、著作権制度の概要1(体系、著作物、著作者)
12:05 ~ 13:00 休憩
13:00 ~ 13:10 JRRCの紹介
13:10 ~ 14:15 著作権制度の概要2(権利の取得、権利の内容、著作隣接権)前半
14:15 ~ 14:25 休憩
14:25 ~ 15:30 著作権制度の概要2(権利の取得、権利の内容、著作隣接権)後半
15:30 ~ 15:40 休憩
15:40 ~ 16:40 著作権制度の概要3(保護期間、著作物の利用、権利制限、権利侵害)
16:50 終了予定
詳しくはこちらから

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【3】無料オンライン著作権セミナー開催予告(12/15開催)
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この度、日本複製権センターは主に官公庁の方を対象とした【第3回】無料オンライン著作権セミナーを開催いたします。
開催のテーマは『新聞等の著作権保護と著作物の適法利用』です。著作権のより一層の保護を図るために、著作権の基礎知識の普及と複製を行う際に必要となる契約についてご案内させていただきます。
なお、本セミナーは官公庁の方に限らずどなた様でもご参加いただけますので、多くの皆様のご応募をお待ちしております。
※第1回の「東北地方向けセミナー」、第2回の「四国地方向けセミナー」の内容と一部重複いたしますので、予めご了承ください。

★日 時:2023年12月15日(金) 14:00~16:00★
詳細や申込方法につきましては、次号のメルマガでご案内予定です。

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      インフォメーション
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