JRRCマガジンNo.326 日本複製権センター(JRRC)の現状と課題について

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JRRCマガジン  No.326 2023/6/29
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※マガジンは読者登録の方と契約者、関係者の方にお送りしています

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◆今回の内容
【1】川瀬先生の著作権よもやま話
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皆さま、こんにちは。

早いものでもうすぐ夏越しの祓、半年分の穢を祓う時期です。
いかがお過ごしでしょうか。

さて、今回の川瀬先生の著作権よもやま話は、
「日本複製権センター(JRRC)の現状と課題について」です。

川瀬先生の記事は下記からご覧いただけます。
https://jrrc.or.jp/category/kawase/

◆◇◆━【1】川瀬先生の著作権よもやま話━━━
日本複製権センター(JRRC)の現状と課題について
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1 はじめに
 権利者並びに利用者及びJRRCマガジンの読者の皆様、日ごろから本センターの事業へのご理解とご協力をいただき本当にありがとうございます。
 JRRCマガジンでは、内外の著作権制度や最新判例の紹介、有識者のエッセイなど著作権関係の記事の充実に努めており、読者の皆様からも高い評価をいただいております。
 また、本センターの事業自体も皆様方のご協力もあり、この10年で大きく業績を伸ばすことができ、おかげさまで2022(令和4)年度の決算では7億円の使用料を確保することができました。
 今回は、読者の皆様に本センターに対するより一層のご理解をいただくため、本センターの現状を紹介した上で、これから本センターが取り組んでいこうと考えている課題について、私の個人的な意見も紹介しながらご説明をさせていただきます。

2 日本複製権センターの現状
(1)委託権利者について
 本センターでは、本センターの正会員である(一社)学術著作権協会(学会等が発行している定期刊行物や書籍の著作権)、(一社)新聞著作権協議会(主として一般紙の著作権)及び著作者団体連合(構成員である(公社)日本文藝家協会、(一社)日本美術著作権連合等7団体が管理している著作権)の3団体から著作権管理を受託しています。また、会員からの受託とは別に会員以外の団体又は個社からの受託も行っており、希望会員の権利を管理している(一社)日本雑誌協会、(公社)日本専門新聞協会並びに(一社)日本出版著作権協会及び20数社の個社より個別受託を引き受けています。
 受託している著作物の量ですが、定期刊行物(新聞を含む)約4,000種、その他の刊行物約100,000点です。なお、著作者団体連合に加盟の著作者団体については約15,000名の会員の原則全部の作品の著作権を管理しています。

(2)契約利用者について
 現在約2,700社・団体と契約をしており、1つの契約でグループ企業全体をカバーしている場合もありますので、事業者数としては約6,000社・団体になります。

(3)徴収した使用料の額について
 使用料の徴収額は、2022(令和4)年度7億円(前年度比13%増)を達成することができました。5年前の2017(平成29)年度は約4億円でしたので、この5年間で75%増を実現したことになります。

(4)徴収した使用料の分配について
 2022(令和4)年度に徴収した使用料は、次の年度の9月に分配されます。本センターは、実費弁償型の法人として法人税を免除されていますので、使用料から管理に要した経費(手数料)を控除した上で、その差額を全部委託者に分配しています。2022(令和4)年度の徴収分については、約23%の手数料になりました。
 また、分配にあたっては、毎年契約企業等の協力を得て著作物複製実態調査を行い、その調査結果等を踏まえ、本会において毎年分配方法を決定し、それに従い各委託者に分配しています。

3 日本複製権センターの課題
 2のとおり、おかげさまで本センターはこれまで順調に業績を伸ばしてきました。ただ、課題も多く、その1つ1つを確実に乗り越えていかなければ早晩本センターの業績が行き詰まると考えています。
 それでは本センターが抱えている課題を乗り越えるために今後どのような施策を展開していく必要があるのでしょうか。私自身の個人的意見も含め本センターは次のように考えています。
(1)  利用者の利便性の拡大
①デジタル化・ネットワーク化への対応
 1991(平成3)年に本センターの前身である日本複写権センターが創設されて以来、長い間本センターは、アナログ複製(複写)に関する権利を管理してきました。この時代は長く続きましたが、デジタル化・ネットワーク化の進展により、例えば従業員相互の情報の共有化のためアナログ複製(複写)した複製物を配布する方法に代わって、社内のサーバーに著作物を複製し社内のネットワークを通じて当該著作物を共有することや、個々の従業員においても紙の複製物で保存するのではなく、例えばUSB、SDメモリー等の電子媒体で著作物を保存することも増えてきました。
 このようなことから本センターでは、2018(平成30)年に管理委託契約約款及び使用料規程を改正し、デジタル複製(電磁的複製)に関する管理を開始しました。
 現在は、アナログ複製(複写)のみとアナログ複製(複写)+デジタル複製(電磁的複製)の2種類の選択肢を設け、利用者の皆様に利用の実態に合わせた契約方法を選択して頂いています。
 この選択については、当初と比べるとデジタル複製(電磁的複製)を含めた方法を選択される利用者が増えてきており、本センターでも企業・団体内で年々デジタル複製(電磁的複製)の比類が高まってきていると考えており、利用者のご理解を得つつ、契約方法の転換を推進しているところです。
 また、デジタル複製(電磁的複製)の許諾範囲については、当初、新聞、雑誌又は書籍等の販売に影響があるのではないか等の懸念もあったところから、ある程度限定された範囲内での許諾にとどまっていたのですが、利用者側からの許諾範囲拡大の強い要望もあることから、共有できる人数や保存年限の拡大等について順次対応していきたいと考えています。また、コロナ禍の時代を経て、ネットで情報を共有することが拡大し、アナログ複製(複写)は一切行わないとする企業・団体もあることから、利用者の選択肢を増やし、デジタル複製(電磁的複製)だけを選択できることも前向きに検討していきたいと考えています。
 これら以外にもデジタルで提供された著作物の複製利用、公衆送信権の管理等についても対応する必要があると考えています。

②海外著作物への管理範囲の拡大
 本センターでは、海外著作物の管理拡大に向けての検討は進めてきましたが、様々な理由から現在のところ実現できていません。しかしながら、2年ほど前に海外担当の理事を迎え、その方を中心に海外対応チームを作り検討を進めた結果、海外著作物の管理実現に向けて大きな前進があったところです。
 海外著作物を本センターが管理するためには、本センターと同種の海外の管理事業者と相互管理契約を締結し、お互いが相手国の著作物を管理し合うという体制作りをする必要があります。
 これが実現し、各国の管理事業者との相互管理契約が促進されると、日本の企業・団体においても契約国の著作物が適法に利用できることになり、利用者の利便性が飛躍的に向上します。例えば新聞ですが、日本の政治、経済等は国際的にも注目されていますので、海外でも日本の新聞もよく利用されているようです。また、日本でも海外の新聞が利用されているのも同じです。
 このような時代ですので、海外の管理事業者も本センターとの相互管理契約の締結には積極的です。最初のケースとして現在英国の管理事業者と委託・受託の条件等について協議中ですが、英国との協議がまとまれば、それを順次他の国へも拡大していきたいと考えています。

③ワン・ストップ・ショップ制の導入による利用の円滑化への対応
 本センターは、委託契約約款と使用料規程を整備し、委託範囲や使用料の額については、利用者も含めた関係者との協議を経て、関係権利者のほぼ全員が納得できる範囲で管理事業を展開してきました。一方で特にデジタル複製(電磁的複製)の時代になって、最大公約数としての基本的な管理範囲を拡大し利用者側の利便性の向上を図っていくことの重要性はもちろんのことですが、利用者側の著作物を適法に利用したいという要望と契約に係る事務的負担を少しでも軽減したいとする要望を同時に満たす方法として、これは未だ構想の段階ですが、本センターの窓口において本センターの基本的な管理範囲を越えた著作物の利用について契約ができる制度(オプション契約サービス)を構築できればと考えています。
 例えば、新聞のクリッピングサービス(記事を組織的・継続的・反復的に複製し、情報共有等のために会社等の組織内で利用すること)ですが、この利用方法については本センターの管理の範囲外の利用です。大手の新聞社については、新聞社自身が契約手続きを行っていますが、地方紙については、これからという段階のところが多いようです。一方で、利用者側から見ると、クリッピングをしている企業・団体については、個社ごとに契約をする必要があるので、複数の新聞社とクリッピング契約を締結する場合は事務的に煩雑になる可能性があります。
 また、例えば、JRRCの基本的な許諾範囲に加えて、英国と独国の著作物を使いたいという要望があった場合、本センターが窓口になり利用者の要望に応えることも考えられます。
 使用料の額については、使用料の額を権利者自身が決められる非一任型管理か使用料規程に基づき使用料を徴収する一任型管理とするかについて、権利者が選択できる方法も考えられます。
いずれにしても、利用者の実務的な負担を軽減し、権利者の著作権を保護する一つの窓口で利用者の異なる要望に対応できるワン・ストップ・ショップ制の導入が必要ではないかと考えています。この方式については、政府の知的財産推進計画においても推奨されているところですので、まずは本センターにおいてこの方式の推進を図ることは意義のあることだと考えています。

(2) 国際水準に近づけるための使用料の設定
 本センターの使用料の水準は国際比較をしても低い水準にとどまっているといわれています。私は、長年この状況を放置していた責任は本会自身にあると考えています。正直言いまして、30数年前に本会が発足した当時は使用料の額は年間2億円弱でした。その時代が長く続き、前の代表理事が使用料の額や体系の見直しを行い、その効果もあって、先述したようにこの5年間で75%の増、年間7億円を達成することができました。
 今日、本センターに課せられた使命は、権利保護と利用の円滑化のバランスを重視しながら、徐々にではありますが先進国並みの使用料水準に近づけることだと考えています。
 具体的に言いますと、本会が扱っている企業・団体の組織内における定期刊行物、書籍等の複製等については、その行為を制限することは困難です。例えば音楽のように公の場で利用されることが多い著作物については、調査や監視が容易ですが、内部利用については利用企業等のコンプライアンス意識に任せるしかありません。この点については、権利者側の皆様もある程度理解していただいています。
こういう状況の中で、本会が対応すべき方法としては、もちろん権利者のビジネスに対する影響等を十分に考慮する必要はありますが、できるだけ基本的な許諾範囲を広げ利用者のニーズにこたえること、また、この許諾範囲を広げるに当たっては、先述したように、例えばオプション契約を導入し、基本的な許諾範囲を超えた利用を望む者だけが契約をすることができるような仕組みを作ることなどが必要であると考えています。
その体系を整えた上で、利用方法の内容や権利者に与える影響を考慮した上で、適切な使用料の額を設定することが必要な手順であると考えています。 
 本センターでは、既に2年後の新使用料規程の実施を目指し、使用料の額及びその体系について検討を進めているところです。

(3) 広報や著作権教育の充実
 著作権に関する知識は、情報通信社会の到来とともに、国民の間で急速に普及したと考えます。1978(昭和53)年に実施された総理府(当時)の「著作権に関する世論調査」において「著作権という言葉を見たり、聞いたりしたことがありますか」という質問に対し、「ある」と答えた人は68.5%でした。すなわち、国民の3割超の方が著作権という言葉さえ知らなかったことになります。
 さすがに、現在ではほぼ100%の方が著作権という言葉自体は知っていると思われますが、その内容については知らない人が多いと考えます。
 情報通信社会の到来とともに、著作物の複製やネット配信が簡単にできるようになりました。企業・団体における情報管理についても同様です。
 本センターでは、利用者の皆様に著作権に関する正しい知識を身に着けてもらうことが大事だと考えています。また、著作権に関する知識の普及が契約促進の原動力になると考えています。
 そのため著作権に関する知識の普及にこれからも力を入れていきたいと考えています。具体的には、利用者の知識レベルに合わせた著作権講習会(初級・中級等)、利用者の要請にこたえた個別の講習会、地域別の講習会・説明会、著作権に関する記事を充実させたJRRCマガジンの配信等を実施又は実施予定です。

 以上のとおりです。本センターの課題はこれら以外にもたくさんありますが、1つ1つ解決し、著作権の保護と利用者の利便性の向上を図っていきたいと考えています。
 今後とも、本センターの事業にご理解とご協力をいただきますようお願いする次第です。

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