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JRRCマガジン No.313 2023/3/23
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◆今回の内容
【1】三浦先生のドイツ著作権法 思想と方法6
【2】日本複製権センターの使用料規程の改正について
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皆さま、こんにちは。
各地で桜の開花が聞かれる頃になりました。
いかがお過ごしでしょうか。
さて、本日は三浦先生のドイツ著作権法 思想と方法の続きです。
三浦先生の記事は下記からご覧いただけます。
https://jrrc.or.jp/category/miura/
◆◇◆━三浦先生のドイツ著作権法 思想と方法6━━
【1】私的複製報酬制度
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国士舘大学法学部 教授 三浦 正広
わが国では、私的使用のための複製(著作権法30条1項)の例外として、平成4(1992)年に私的録音録画補償金制度が導入された(30条2項および104条の2以下)。特定のデジタル方式の録音録画機器・記録媒体の販売価格に補償金が上乗せされ、それらの購入者が補償金を支払うものとされた。
著作権を制限して私的複製を認めつつ補償金(報酬)の支払いを義務づける制度は、ドイツ(当時の西ドイツ)が世界に先駆けて、1965年の現行著作権法制定に際して導入した私的録音報酬制度が最初である。録音手段として当初のオープンリール式のテープレコーダーに代わり、カセットテープなどのコンパクトカセットが発明され普及したという録音技術の発達が当時の時代背景にある。著作権の制限規定を根拠とする私的複製に対する補償として、録音機器の製造者は報酬支払義務を負うものとされた。この報酬制度は、欧州ではオーストリア、フランス、オランダ、スペインへと拡大する。ドイツでは、1985年の法改正により、報酬義務の対象は、従来の機器に加えて記録媒体(生テープ)に拡大され、さらにその後も連邦最高裁(BGH)の判決を受けた2007年の法改正によって、複製機能を有するあらゆる機器・記録媒体に拡大されることとなる。
日本の法制では特定の機器等が補償金の対象となっているため、新たな機器等が販売される都度、政令を改正する必要があるが、ドイツ法では法令の改正は必要なく、複製機能を有するあらゆる機器等が報酬義務の対象とされる。報酬義務の対象となるか否かは、報酬義務について規定する著作権法54条の解釈に委ねられ、双方の合意が得られないときに備えて、裁判外紛争解決手続(ADR)が整備されている。
私的使用等のための複製に関する規定(53条)にもとづき、著作物を複製する目的で利用される機器・記録媒体、およびその周辺機器の製造者は、相当の報酬を支払う義務を負う。
この報酬義務について規定していた旧54条1項は、「著作物の性質にしたがい、第53条第1項または第2項にもとづいて、録音・録画媒体への放送の録音・録画による、または、録音・録画媒体から他の媒体へのダビングによる著作物の複製が予測される場合、当該著作物の著作者は、明らかにそのような複製が行なわれるものと予定される機器、および録音・録画媒体の製造者に対し、機器および録音・録画記録媒体の販売により、そのような複製が行なわれる可能性について相当の報酬の支払請求権を有する。」と規定されていたが、
規定の文言が曖昧であったために権利者団体と製造者との間の紛争や訴訟が絶えなかったことから、そのようなトラブルを回避するために、2007年の法改正では「著作物の性質により、著作権法第53条第1項ないし第3項により許容されている複製が予測される場合、著作物の著作者は、機器・記録媒体、またはそれらが他の機器・記録媒体あるいはその他複製を行なうための装置と結合して利用されるものの製造者に対して、相当の報酬の支払請求権を有する。」と規定されるに至った(54条1項)。
さらに2017年の学術著作権法による改正(60a条ないし60f条)では、私的複製の場合に加えて、学術・教育等の目的のために利用される機器等の製造者は報酬義務を負うものとされた(54条)。製造者とともに、それらの機器等の販売者および輸入者も、同様の報酬義務を負うものとされている(54b条)。
前述したように、ドイツにおいて私的複製報酬制度が導入された当時、報酬義務の対象は録音機器に限定されていたが、その後の法改正により、録音の記録媒体、録画の機器・記録媒体、複写による複製機器へと拡大している。現行規定では、著作物の種類に関係なく、報酬義務のある著作物、および複製の方法について規定している。この制度の導入当初はアナログ方式の複製機器しか存在していなかったために、報酬義務の対象は必然的にアナログ方式の録音機器に限定されていたが、情報通信技術の発達とともにデジタル方式の複製機器が登場した後も、両方式の区別はなく、複製の形式や態様を問わず、著作権法上の私的複製を行なうことが可能なあらゆる機器・記録媒体が報酬義務の対象となっている。これら方式の違いは、報酬額に反映されているにすぎない。
わが国の制度と比較すると、極めて合理的な制度であるといえるが、ドイツにおいてもこのような制度の導入当初は、機器メーカー側から激しい反対意見が表明されていた。デジタル・ネットワーク社会において、著作者の権利は、単に著作者および著作権者の利益だけを保護するものではなく、著作物利用の社会性および経済性に対する認識が徐々に深く浸透するようになったといえる。
現行ドイツ著作権法では、著作権の制限規定として、自然人による私的使用のための著作物の複製は、直接的にも間接的にも営利を目的とせず、明らかに違法に作成されたもの、または、公衆による利用が可能とされたものを複製して利用する場合でない限り、許容され(53条1項)、さらに学術的利用などの特定の目的に限定して、一定の要件のもとで著作物を複製することが許容されている(53条2項)。ドイツの私的複製報酬制度は、これらの制限規定を根拠として運用されている。したがって、この報酬請求権の主体は、著作者および著作隣接権者であるが、これらの権利を行使することができるのは、個々の著作者ではなく、著作者から、法律の規定にもとづいて契約によって報酬請求権の譲渡を受けている、GEMA、 VG WortおよびVG Bild-Kunstなどの著作権管理団体に限定されている(54h条1項)。
報酬義務の対象機器・記録媒体の主な分類としては、パソコンおよびその周辺機器、タブレット、ハードディスク、携帯電話・スマートフォン、録音・録画機器・記録媒体、USBメモリー・メモリーカード等がある。
ドイツでは2002年の著作者契約法により、デジタル・ネットワーク時代における情報技術の発達に対応する相当報酬理論が採用され、著作者の権利は、「著作物の利用に関する相当の報酬を保障する」権利であると構成されたことにより(11条2文)、著作権の制限規定にもとづく法定報酬についても理論的根拠がさらに明確なものとなった。
報酬額は、著作権法54a条および著作権管理団体法(VGG) 40条の規定に基づいて、私的使用等および教育・学術目的のための複製を行うために利用される機器および記録媒体を基準として、それらの機器等の価格水準を踏まえ、それぞれの機器等の性能、記録容量等を考慮して定められることになっている。報酬額は、個々の利用ごとではなく、各機器等の利用に応じて包括報酬として算定される。機器等の購入者が、機器等を私的使用等の複製のために利用しないという理由は、報酬義務に対する反証とはなりえない。
著作権法の理念にしたがい、基本的には著作権管理団体と報酬義務を負う企業の団体(利用者団体)による交渉が行われ、その交渉の結果、両者間で報酬額に関する包括契約が締結される。この包括契約において合意される報酬が、報酬規程として適用されることとなる(VGG 38条2文)。包括契約が合意に至らない場合は、著作権管理団体法に基づいて設置される調停委員会により報酬額に関する合意書が提案されるが(VGG 92条1項1号)、それに対して異議が申し立てられた場合は、裁判所の判決手続によって決定されることとなる。判決手続にも至らない場合は、著作権管理団体が片務的に作成する共通の報酬規程が、裁判所による審査を経て公表される。その場合、報酬義務を負う企業は、報酬規程として公表される報酬が法定の報酬額ではないということを主張することができる。社会的な妥当性ないし合理性を求めて、最後まで報酬の相当性が追求されることになる。
他方EUでは、情報社会指令(2001)により、加盟国は、権利者に対する「公正な補償」を条件として、私的使用のための複製等の場合に制限を設けることが認められている一方で(指令5条2項a、b)、EU運用条約(The Treaty on the Functioning of the European Union)118条により(EU基本権憲章17条2項およびEU条約6条1項参照)、EU域内における統一的な保護が要求されている。加盟国がおのおの導入している私的複製報酬制度と、EU法上の「公正な補償」の解釈の調和が大きな検討課題となっている。
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【2】日本複製権センターの使用料規程の改正について
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本センターの利用者様から頂く使用料の額については、著作権等管理事業法に基づき、本センターが使用料規程を定め文化庁に届出ることになっています。本センターでは使用料規程の改正について2月27日に届出を行い、4月1日から実施することになっています。本メルマガではその改正の内容とその理由をご紹介します。
今回の改正は、使用料額を値上げするものではなく、使用料の支払方式の中の包括実額方式の内容を変更するものです。
この包括実額方式というのは、本センターがあらかじめ利用者に管理著作物の利用の許諾を行ったうえで、後日複製を行った著作物のリストを提供してもらい、それに基づき使用料を請求することをいいます。この方式は、もともと小規模な企業等を対象にしたもので、複製に関する実務担当者が従業員の複製行為に関し監督可能な範囲内での利用を想定したものです。大企業等がこの方法を選択される場合、全国に広がる事業所から報告されるリストの正確性を本センターが確認するためには利用者側に大きな事務的負担を強いることになるためです。
しかしながら、使用料規程上は従業員の人数にかかわらず包括許諾方式を選択することができることになっていましたので、いくつかの企業等からこれまで問合わせをいただいていたところです。
本センターでは、その都度上記のような説明を行っていましたが、今回の改正では、包括実額方式の制定趣旨を明確化するため、従業員数が50人までの企業等に限定して、本方式を適用することとしました。なお、既に包括実額方式により契約していただいている従業員50名を超える企業等については2年間の経過措置を設け、これまでの契約を継続できることとしました。
なお、詳細については 使用料規程変更に関するお知らせ を参照ください。
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