JRRCマガジンNo.267 塞翁記-私の自叙伝34

半田正夫

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JRRCマガジン   No.267 2022/2/17
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◆今回の内容
【1】半田正夫弁護士の塞翁記 私の自叙伝34
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みなさまこんにちは。

2月21日(月)の日本経済新聞の朝刊に当センターの案内が掲載される予定です。是非ご覧ください。
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さて、今回は半田先生の得難い経験の続きです。どうぞお楽しみください。
前回までのコラムは下記よりご覧いただけます。
⇒https://jrrc.or.jp/category/handa/

◆◇◆半田正夫弁護士の塞翁記━━━━━━
              私の自叙伝34
     第19章 得難い経験③     
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◆叙勲狂騒曲
それは2015年10月28日、文部科学省栄典班から来た1通の手紙によって幕が切って落とされた。その手紙には、叙勲の内示が出たが、それを受けるか否か、11月10日に国立劇場大劇場において勲章伝達式があるがそれに出席するか否か、との問い合わせであった。
正式発表は11月3日であるからそれまでは内聞にとのことであったが、この手紙と同時に多くの業者から内祝い品のカタログがドサッと舞い込むようになる。内聞にといいながら当局のほうで報道機関や官庁出入りの業者に情報を流しているのだから、いい面の皮だ。
承諾の返事をすると、今度は電話で、当日、文科省関係の瑞宝中綬章受章者約100名を代表して勲記・勲章の受け取りと、各章受章者合計およそ700名を代表して挨拶をお願いしたいとの要請を受ける。なんでも経験したい私としては喜んで承諾する。
業者から送られてきたカタログを見ると、式次第や当日の服装、さらにはお祝いをくれた方々に対する礼状のひな型、内祝い品の品々などが事細かに書かれている。当日の服装については、文科省からの案内には男性はモーニング、または紋付羽織袴、略礼服、スーツ等、女性はアフタヌーンドレス、白襟紋付、訪問着、留袖、色留袖、スーツ等と書かれていたので、私はモーニング、妻は留袖とすることにしたが、いずれも過去に仲人をしたときに着用したもので、今現在、着ることができるかが問題であった。以前に比べかなり太っている私は、早速着てみると、やはりダメ。ハラが出ていて着用不能であった。そこでインターネットで調べると、大阪の貸衣装店がかなり大々的にやっていることが判明。
早速電話して、身長、胴回りなどを教えたうえ、勲章の受章のためと述べると、万事心得ていて、すぐに送ってくれる。届いた衣服はさすがにピッタリ合う。これを宅配でいったん送り返し、受章の数日前にまた送ってくれるというシステムであった。これで私のほうはケリがついたが、問題は妻のほうであった。妻の持っている留袖は結婚式用に作ったものであるから黒色のものであった。
黒が正式であるからこれで良しと考えていたのであるが、業者からのカタログを見ると、皇室では黒は喪服なので、留袖は色留袖でなければならないと書かれているのに気付いた。妻は、文科省からの案内には「色は問わない」と書いてあるし、一般の常識では黒留袖が正式のものとなっているので、私はこれで行くと言い張る。
困った私は、文科省の栄典班に電話で問い合わせると、応対に出た女性の係官は自分もよくわからないので、しばらく時間をくださいとのこと。数日後電話を寄越し、これまで受賞された方の記念写真を見てみたら、ほとんどの方が色留袖でしたねとのことであった。
そこで、やはり色留袖にすべきだと妻も同意し、あわててその借用方に奔走することになる。このように決めたのは式典当日の数日前。ホテルで借りようと連絡を取るが、地方から授賞のため上京してくる受賞者でどこも満杯。やっと私学共済の経営する湯島にある東京ガーデンパレスホテルに部屋を確保することができ、衣装室で色留袖の借用も可能ということになり、妻は早速ホテルに赴いて試着し、すべてOKとなった。そして式典前日ホテルに1泊し、当日に備えたのである。
当日、小雨が降りしきる朝を迎え、正装してロビーに降りると、同様の服装をした老カップルが10組ほどいて、タクシーの順番待ちしている。開式定刻は11時40分であるが、受章者代表は10時55分までに来るようにとの指示を受けていたので、10時半には到着したが、すでに会場は多くの受賞者とその家族でごった返すという状態であった。
指定された席は最後列。なぜここかと思っていたら、最後列は受章者代表の席で、間もなくわれわれは楽屋裏に案内され、緞帳の下りた舞台に上がって、受章のリハーサルが行われたのである。代表は8名で、私の隣は小綬章代表の北大路欣也であり、彼はさすが俳優だけあって、立ち位置などを念入りに何回もリハーサルする。
式典が行われるまでなお若干の時間があったので、舞台上の私は、このときとばかり舞台裏を丹念に見て回ったり、北大路欣也と雑談したりして過ごす。やがて文部科学大臣をはじめ、文科省の高級役人が登場し、われわれとは向かい側の席に着く。
定刻11時40分、ベルとともに緞帳が上がる。見ると、劇場内は1階、2階ともに受章者とその家族でびっしり。開式の辞、国歌斉唱に続いて勲章の伝達が行われる。私は2番目に呼ばれる。司会者が、「瑞宝中綬章受章者109名 代表 半田正夫殿」の声に応じて立ち上がり、①国旗と客席に向かって一礼、中央に進み、②文科省関係者に一礼、③文部科学大臣に一礼、大臣から勲記と勲章を受け取り、席に戻る。戻る際も、④大臣、⑤文科省関係者、⑥客席および国旗に一礼するという段取りであった。その後、東京芸大学生の琴・尺八による祝賀曲の奏楽、大臣の挨拶があって、全受章者(文部科学省関係の旭日・瑞宝の中・小受章者、褒章受章者など709名)を代表して、私が次のように挨拶をする。

「ご指名によりまして、僭越ではございますが、このたび叙勲の栄誉に浴しました709名を代表いたしまして、一言お礼のご挨拶を申し上げます。
私どもはこれまで、長年にわたり、それぞれの分野で、その道一筋に取り組んでまいりました。その努力が報いられ、図らずも本日、この栄誉を賜ることになりましたが、これはひとえに諸先輩からのご指導、多くの関係各位の皆様のご協力、さらには家族の献身的な支えがあったからこそであると痛感しております。
いま、この栄誉の喜びをかみしめながら、お世話になった皆様方にあらためて心から感謝申し上げます。
さて、わが国が今後ますます発展するためには、なによりも人材の育成が必要不可欠だと考えます。もとよりそのためには、本人自身の自覚と努力が必要ですが、これをサポートする環境の整備もまた必要であると考えます。環境の整備には物質的側面と人的・精神的側面とがありますが、これを整えることによって、わが国の次の時代を支える若者に勇気と希望を与え、文化の進展に大いに寄与するものと確信しております。
私どもは、本日の栄誉に報いるために、健康に留意し、いままで蓄えてきた知識と経験を若い世代に伝え、わが国の発展を支える人的・精神的側面の役目を微力ながら果たしていきたいと考えております。
終わりに、本日の叙勲にさいしてご尽力をいただいた多くの皆様に重ねて感謝申し上げてお礼の言葉に代えさせていただきます。
本日は本当にありがとうございました。

 平成27年11月10日
                  受章者代表   半田正夫」

あとで、会場内で聞いていた妻の報告によると、態度は堂々としていたし、発音も明瞭でよかった。とくに「家族の献身的な支えがあったからこそ」という箇所については、妻の周囲にいた奥様方からはかなり好評であったとのことであった。

式典終了後、しばらく待たされた後、バス35台に夫婦ともに分乗して皇居に向かう。皇居では坂下門から入って宮殿東庭に進み、ここでバスの中で30分ほど待たされる。やがて南車寄せから内部に入り、2Fの「春秋の間」に案内される。そこで侍従により「春秋の間」の説明がなされ、定刻の14時50分、侍従を先導に天皇の出御。中央の壇に上がって簡単な言葉が述べられ、これに対して参内者代表のお礼の言葉言上がある。天皇は壇を降りて、われわれの間を会釈しながら通られて退出。これで天皇の拝謁は終わりとなる。この間5分ほど。われわれはこの後、南溜(要するに南玄関)で、バスごとに記念写真を撮り、バスで東京駅まで送られて解散。これで叙勲狂騒曲はすべて終了となる。

帰宅後、勲記を開いてみると、そこには、「日本国天皇は半田正夫に瑞宝中綬章を授与する 皇居において璽をおさせる」の字句と「大日本国璽」の大きな印影、さらに安倍総理と賞勲局長の氏名が書かれていた。国璽として押されている印影をよく見ると、「大日本国璽」となっている。国璽は明治7年に作られて以来使用されているもので、戦後にいたってもそのまま慣例的に使用されていることが調べているうちに判明したが、明治の昂揚期にあっては「大日本」という表現は許されるとしても、現代においてはこのような表現を使う例はなく、若干違和感を覚えるところであった。

※初出時「北大路」氏の表記を「北王路」と誤って記載しておりました。正しくは「北大路」となりますので、当該部分を2か所訂正させていただきました。読者の皆様ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。

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