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JRRCマガジン No.193 2020/2/13
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みなさまこんにちは。
インターネットの発達によって、誰もが表現者としてクリックひとつで世界発信することが可能となりました。
日本はベルヌ条約加盟国です。ベルヌ条約は無方式主義を規定していますので
著作権は、創作されたときに著作権として成立します。
本日の山本先生のコラムはアメリカの著作権登録制度についてです。
企業法務の方だけでなく、個人で活動する方も自国だけでなく各国の制度を理解し、対応していかなければならない時代となりました。
前回までのコラムはこちらから
https://jrrc.or.jp/category/yamamoto/
◆◇◆山本隆司弁護士の著作権談義(84) ━
-米国著作権登録判例-
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昨年3月3日に、アメリカの著作権登録制度について、
連邦最高裁の判決Fourth Estate Public Benefit Corp. v. WallStreat.com, LLC, __ U.S. __ (2019)が出ました。
この判決が与える影響について心配する向きが日本企業にありましたので、問題の所在を紹介したいと思います。
アメリカの著作権登録制度は、アメリカを本国とする著作物については、著作権登録を訴訟要件にしており、
原則として、著作権登録をしていなければ、著作権侵害訴訟を提起することができません(411条)。
この判決は、この訴訟要件について下級審での解釈が分かれていたのを統一したものです。
アメリカの著作権法は、1989年にベルヌ条約に加盟するまでは、方式主義を採っていました。
著作権は著作物の作成によって成立しますが、著作権表示を著作権の保護要件とし、
著作権表示を付けずに著作物を発行すると、著作権を喪失するという効果を与えていました。
また、著作権登録を訴訟要件とし、著作権登録をしていない者は、
著作権侵害に対して裁判所に救済を求めて著作権侵害訴訟を提起できないとしていました。
しかし、ベルヌ条約加盟後は、ベルヌ条約は無方式主義を規定していますので、
同盟国の著作物に上記の方式主義を適用することは、ベルヌ条約違反となります。
そこで、アメリカは、著作権表示を保護要件とする制度を廃止しました。
しかし、著作権表示を任意的制度として存続させ、著作権表示に善意侵害排除効という恩典を与えています。
また、著作権登録を訴訟要件とする制度は、同盟国の著作物については廃止しましたが、
アメリカを本国とする著作物については著作権登録を訴訟要件とする制度を存続しています。
しかし、著作権登録には、記載事項の推定効、法定損害賠償請求権、弁護士費用回復請求権などの恩典を、
アメリカを本国とする著作物かベルヌ条約加盟国の著作物であるかを問わず、与えています。
したがって、日本を本国とする著作物は、アメリカでの侵害に対して著作権登録を行わなくてもアメリカで著作権侵害訴訟を提起できますが、
著作権登録しておくことによって、数億円にもなることのある弁護士費用を勝訴すれば侵害者から回収することができることになります。
以上のとおり、現在では、アメリカを本国とする著作物についてだけの話ですが、著作権登録をしなければ著作権侵害訴訟を提起できません。
この訴訟要件について、著作権登録が未了でも登録申請さえしていれば足りる(Application Approach)のか、
それとも著作権登録が完了していることが必要なのか(Registration Approach)について、下級審での解釈が分かれていました。
たとえば、Cosmetic Ideas, Inc. v. IAC/Interactivecorp, 606 F. 3d 612 (9th Cir. 2010))はApplication Approachを採りましたが、
本件連邦最高裁判決の原審はRegistration Approachを採りました。
本件連邦最高裁判決は、条文に忠実に従って解釈してRegistration Approachを支持し、
法律に例外が定められている場合(著作権局が登録拒絶の決定をした場合と予備登録を行っている場合)を除いて、
著作権登録が完了していなければ、著作権侵害訴訟を提起できないと判示しました。
以上
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