JRRCマガジン No.160 追及権

山本隆司

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JRRCマガジン No.160  2019/3/14
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この季節外出する機会が増える方々も多いと思いますが、皆さ
まが、美術作品と出会う機会とはどのような時でしょうか。

今回の山本隆司弁護士のコラムは美術の著作物に関する
「追及権」についてです。

◆◇◆山本隆司弁護士の著作権談義━━━━━━━━━━━

第73回「追及権」

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 1920年にフランスが世界で初めて追及権を導入しました。追
及権は、美術の著作物について、その原作品の転々譲渡の度ご
とにその売買代金の一定額を著作者が取得できるという権利で
す。ベルヌ条約には、追及権の規定があります(14条の3)。
ベルヌ条約では追及権の導入は締約国の任意で、日本も導入し
ていません。しかし、最近では追及権を導入する国が増えてお
り、WIPOでも追及権について検討を進めています。
アメリカでは、連邦著作権法は追及権を定めていませんが、カ
リフォルニア州が1976年に追及権を導入しています。昨年7月6
日、第9巡回区連邦控訴裁判所は、その追及権の規定は連邦の
著作権法に抵触し、違法無効だという判決を下しました
(Close v. Sotheby’s)。今回はこの判決を紹介したいと思い
ます。
カリフォルニア州の追及権は、美術の著作物についてその原作
品がカリフォルニア州内でまたはカリフォルニア州居住者によ
って1000ドル以上の価格で売却された場合に、原則として、売
主が代金の5%を著作者に支払わなければならないとするもの
です(カリフォルニア州民法典986条)。
 アメリカの連邦憲法は、連邦議会に著作権法の制定権限を与
えています(1条8項8号)。そこで、各州は、連邦著作権法が州
法を排除していない範囲で、州の著作権法を制定する権限を持
っています。現行の連邦著作権法である1976年著作権法は、発
行済みか未発行かを問わずすべての固定された著作物を対象に
しており、かつ、連邦法に抵触する州の著作権法を明示的に排
除している(301条a項)ので、各州は未固定著作物についての
み州の著作権法を制定する権限を持っています。そのため、た
とえば、カリフォルニア州は、その民法典(980条および981条)
に、未固定著作物について著作権を規定します。
カリフォルニア州の追及権は、連邦著作権法の定める頒布権
(106条3号)に抵触するとして、違法無効と判断されました。
連邦著作権法の定める頒布権は、著作物複製物(原作品を含み
ます)の第一譲渡(first sale)によって消尽します(ファー
スト・セール・ドクトリン:109条a項)。その趣旨は、「動産
譲渡に対する制限を拒絶するコモンロー」の法理にあります。
したがって、第一譲渡後の著作物複製物の再譲渡に対して制限
を加えることは、連邦著作権法109条a項に抵触することになり
ます。追及権は、そのような再譲渡に対して著作者に対価支払
い義務を課すという制限を付加するものに該当するので、違法
無効と判断されました。
 しかし、カリフォルニア州の追及権は、その施行(1977年1月
1日)から50年以上も運用されてきているので、この判決の影響
は大きいものです。当然、いままでにカリフォルニア州の追及
権の違法性が争われることがなかったのか疑問になるところです。
実は、第9巡回区連邦控訴裁判所は、1980年に、この点について
は判決を下していました(Morseburg v. Balyon)。しかし、
そこで争われたのは、連邦の1909年著作権法との抵触関係でし
た。1909年著作権法は、頒布権とファースト・セール・ドクト
リンを規定していましたが、現行の1976年著作権法とは異なり、
明示的には連邦法に抵触する州の著作権法を排除していません
でした。そのため、1909年著作権法との関係ではカリフォルニ
ア州の追及権は適法だとの判断が下されました。
 昨年の判決では、カリフォルニア州の追及権は、実は、1976
年著作権法との関係のみならず、1909年著作権法との関係でも
適法性が争われました。しかし、1909年著作権法との関係でも
適法性に疑義があるとしながらも先例を重視して、1909年著作
権法との関係ではカリフォルニア州の追及権は適法だとしまし
た。その結果、それは、1909年著作権法の施行期間中である19
77年1月1日から1977年12月31日(1976年著作権法の施行日は19
78年1月1日)までは有効であると判示しました。
 以上
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