━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
JRRCマガジン No.85
山本隆司弁護士の著作権談義
第50回「フランス絶版図書のデジタル化法制の顛末」
2016/12/27配信
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
皆様、こんにちは。
JRRCメルマガ担当です。
クリスマスの三連休も終わり、
街なかは、イルミネーションも控えめとなり、
クリスマスの賑わいが夢であったかのように日常を取り戻してます。
2016年も残りわずか、
皆さま、いかがお過ごしですか?
それでは、
山本隆司弁護士の著作権談義
第50回「フランス絶版図書のデジタル化法制の顛末」
をお送りいたします。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
山本隆司弁護士の著作権談義
第50回 「フランス絶版図書のデジタル化法制の顛末」
2016年11月16日、欧州司法裁判所(Court of Justice of the European Union)が、フ
ランスの絶版図書に対するデジタル化許諾法制を、情報社会指令(Directive 2001/29)
違反と認定するとの判決(Soulier v. Ministere de la Culture et de la Communication)
を下しました。日本でも、オーファンワークスへの対応が議論され、文化庁と権利者団
体9団体によるオーファンワークス実証事業が本年10月から開始されましたが、拡大集
中管理制度も俎上に上ってきています。この判決はその参考になると思いますので、ご
紹介したいと思います。
フランスは、2012年の法改正で、2001年1月1日以前にフランスで発行された絶版図
書について、国立図書館のデータベースに登録してから6ヶ月以内に異議を申し立てな
ければ、認定管理団体が当該図書をデジタル化する権利を第三者に許諾できるとの制
度(知的財産権法典134-1条ないし134-9条)を制定しました。当該6ヶ月を過ぎた後は、
著作者は紙媒体での出版権限を保有する出版者と共同で、または単独で著作権を保
有することを証明した上で、初めて認定管理団体によるデジタル化許諾に異議を申し
立てることができるとされています。
この制度においては、認定管理団体は、当該6ヶ月経過後、まず紙媒体での出版権
限を保有する出版者に、10年間の独占的なデジタル出版のライセンス付与をオファー
することになっています。当該出版者が当該オファーを断った場合には、認定管理団体
は、第三者に期間5年の非独占的なデジタル出版のライセンス付与を行うことができま
す。
この制度の適用を受けた著作者が、この制度は情報社会指令で認められている権
利制限(5条)に当たらないから、情報社会指令に反して無効だと主張しました。フラン
スの裁判所がこの論点について、欧州司法裁判所に判断を求めました。
欧州司法裁判所は、まず、情報社会指令で著作者に複製権・公衆伝達権が認めら
れているが、絶版図書のデジタル化の要請は理解できるものの、情報社会指令で認め
られている権利制限(5条)が制限列挙であるので、フランスの制度はそれに当たらな
いと判断しました。
つぎに、欧州司法裁判所は、認定管理団体によるデジタル化許諾に対する著作者の
黙示の同意が認められるかを検討しました。欧州司法裁判所は、著作者に個別に通
知をして権利行使の機会を与えた場合であれば黙示の同意が認められる余地がある
が、国立図書館のデータベースに登録されそれが公開されるだけで著作者への個別
の通知はないから、黙示の同意を認めることもできないと判断しました。
また、当該6ヶ月経過後、著作者が紙媒体での出版権限を保有する出版者と共同で
なければ異議申立ができないなどという制限は権利行使に形式要件を付すものであっ
て、無方式主義に反すると判断しました。
以上のように認定したうえで、欧州司法裁判所は、上記のフランスの制度が情報社会
指令に違反するとの判決を下しました。
以上
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
読者の声
『読者の声』の投稿と紹介
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
このコーナーは、「JRRCマガジン」が皆さんにとって便利な、役に立つ情報収集ツール
としてご活用していただけるよう、ご意見・ご感想をお寄せいただき、その中から選出し
てご紹介するコーナーです。
★メルマガへのご意見・ご感想をお待ちしています(*^_^*)
★投稿先はこちら↓↓↓
https://reg31.smp.ne.jp/regist/is?SMPFORM=ljsi-ofoco-4c31de2478a11854bae2604a361ea26e
掲載された方には粗品を進呈いたします。
なお記事として掲載する場合は、事前にご連絡しご了解を頂くように致します。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
インフォメーション
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
※ご了解ください
このメルマガは等倍フォントで作成していますので、MSPゴシックのようなプロポーシ
ョナルフォントで表示すると改行の位置が不揃いになります。
※このメルマガにお心あたりがない場合は、お手数ですが、文末のお問い合せ窓口ま
でご連絡下さいますようお願いいたします。
※メルマガ配信の停止をご希望の方は下記の「配信停止」からお手続き下さい。
※JRRCマガジンを、お知り合いの方、同僚の方などに是非ご紹介下さい。
下記の「読者登録」からお手続き頂けます。
■各種手続き
├ 読者登録
| https://reg31.smp.ne.jp/regist/is?SMPFORM=ljsi-ofsfn-7d3cae9f41a39fd12329bb7d1810716d
├ 配信停止
| https://reg31.smp.ne.jp/regist/is?SMPFORM=ljsi-ofogr-f24b073f7fe3b1b59f0963e9cf0179d2
└ ご意見・ご要望など
https://reg31.smp.ne.jp/regist/is?SMPFORM=ljsi-ofmjl-24d6432d923fce555c895cdfe4e84fd9
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■お問合せ窓口
公益社団法人日本複製権センター(JRRC)
ホームページの「お問合せ」ページからアクセスしてください。
⇒ http://www.jrrc.or.jp/inquiry/
■編集責任者
JRRC副理事長 瀬尾 太一
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━