JRRCマガジン第23号(庭園の手直し、米国商務省報告書)

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   JRRCマガジン
                       2014/5/26配信 第23号
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◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆INDEX◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

*半田正夫の著作権の泉        第11回    「庭園の手直し」
*JRRC☆TIMES             「JRRCなうでしょ  第11回」
*山本隆司弁護士の著作権談義   第20回   「米国商務省報告書」
*読者の声                読者の声の投稿と掲載
*インフォメーション           ご意見・ご要望、各種手続きetc

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こんにちは
JRRCメルマガ担当です。

一足飛びに夏がやってきたような毎日ですね。
GWも終わり、ホッと一息ついていたところに、
真夏のような日差しが降り注ぎ、夏到来を感ずる今日この頃です。
季節の変わり目、皆様 体調崩されていないでしょうか?

それでは第23号をお届け致します。

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   半田正夫の著作権の泉 第11回
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★「半田正夫の著作権の泉」の連載第11回目です。
   
第11回は、「庭園の手直し」です。
著作権の対象物が天然自然物であった場合、著作権・著作者人格権の効力はどのよう
に働くのか・・・について言及されています。

北海道生まれの人間は内地、とくに京都に対してものすごい憧れを抱いているのが一般だ。
その一人であるわたしは京都を訪れるたびごとに何カ所かの寺院の山門をくぐり、
広い縁側に坐して日本式庭園を見るのを醍醐味としている。築山のまわりに庭石を巧みに配し、
さらに草木で飾るという手法は、あたかも自然そのままで人間の手に成ったものとは
到底思えないほどのたたずまいを見せていて驚嘆の一語に尽きる。時間のたつのを忘れるほどだ。
このような庭園が著作物であることは間違いないところであるが、対象物が天然自然の草木であるだけに、
毎年、その剪定などをしなければならないであろうし、長年のうちには当初の設計者の想定していたのとは
かなり異なったものに変わっていっているのではないかと推測する。いうまでもなく、
これら古い庭園は著作物の保護期間が切れているであろうから、著作権侵害で問責されることはない。
だが著作者人格権についてはそうはいかない。著作者の死亡によって彼自身の著作者人格権は消滅するものの、
著作権法60条によって、著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならないと一般人に対して
著作者人格権の尊重を義務付け、その監視を著作者の遺族に課しているからである(著作116条)。
もっとも遺族の範囲にもせいぜい孫までと限定があるので、永久に民事上の請求をすることはできない。
ただ刑事罰の適用には時間的な制限が課せられていないので、あるいは古刹の名園に手を入れる行為は
500万円の罰金が科せられる可能性がないとはいえないようである(著作120条)。

ところで、庭園の持ち主が造園家の意向を無視して庭園の手直しをすることが許されるであろうか。
建築の著作物の場合には、同一性保持権が働く例外として「建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変」
について規定している(著作20条2項2号)が、美術の著作物にはそのような規定が置かれていないために問題となる。

判例が一つあるので、紹介しよう。
JR大阪駅北側の複合施設「新梅田シティ」は、高層ビルである梅田スカイビルを中心に、高層ホテル、
小規模ビル、地上および地下の駐車場が設置され、建物や構造物の底地を除く部分に、緑地、散策路、
田園風景などで構成された庭園のほか、噴水、水路などの庭園関連施設からなっており、造園家吉村元男氏の
設計によるものであった。ところが、大阪の緑化活動に取り組む建築家安藤忠雄氏の発案により、庭園北東に、
水路に沿って高さ9メートル、長さ78メートルの壁面が設置され、ここに「希望の壁」と称して、多数の
プランターを配置して四季折々の花を楽しめるような巨大な緑化モニュメント作成の計画が進行するにいたった。
そこで吉村氏側は、この庭園は著作物であり、安藤氏側の行為は同一性保持権を侵害するものであるとして、
工作物設置続行禁止仮処分を申し立てたという事件である。この事件で大阪地裁は、本件庭園を著作物であると
認めたうえ、来客がその中に立ち入って散策や休憩に利用されることが予定されているところに着目し、
美術としての鑑賞のみを目的とするものではなく、むしろ、実際に利用されるものとしての側面が強いと述べている。
そして結論として、「土地の定着物であるという面、また著作物性が認められる場合があると同時に実用目的での
利用が予定される面があるという点で、・・・建築物における著作者の権利と建築物所有者の利用権を調整する
場合に類似するということができるから、その点を定める著作権法20条2項2号の規定を、本件の場合に類推適用
することは、合理的であると解される。」と判示し、「希望の壁」の設置工事の続行を認めている(大阪地決平成25年9月6日最高裁HP)。
本決定がすべての庭園に当てはまると考えてよいかについては異論があろうが、おおむね妥当な結論と言えるのではなかろうか。

話はまったく変わるが、建物と名園で著名な銀閣寺がかつて公立高校の入試問題に出題され、
この寺の名前を問う設問において、「銀閣」「慈照寺」と書けば正解、「銀閣寺」と書けば誤答とされたとのことである。
銀閣は慈照寺にある建物のひとつに過ぎず、銀閣寺という寺は存在しないからだそうだ。
なんだか揚げ足取りの問題のような気がするが、どうであろうか。

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   JRRC☆TIMES
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☆★☆JRRCなうでしょ☆★☆

第11回目となりました事務局長コラム。
前回からの続き~ロンドン事情その3~。今回は、ロンドンのホテルならではのひと時の
過ごし方を紹介してます。

こんにちは。
JRRC事務局長の稲田です。
最近、天気が続いたかと思うと急に低気圧が来て強い風が吹いたり、雨が降ったりと天候が不順ですね。
昨年と比較しても今年は風が強い日が多いような印象があります。
そろそろ沖縄では梅雨入りの季節ですが、関東は何時頃になるのでしょうか。
気になりますね。

それでは今月号の最初のお知らせです。
恒例のJRRC著作権セミナー第5回を、7月4日(金)13:30-16:00 有楽町朝日ホールにて600名様を
無料ご招待で開催することが決まりました。
今回は、これまでの講演者2名による講演形式を改め、講演者を基調講演の1名とし、契約者の皆様の関心が
高いテーマとして「企業における複写実務の現状と問題点」について
契約企業4社を招いてパネルディスカッションを行います。
コーディネーターはJRRC副理事長の瀬尾太一が担当し、4社の複写利用の実態と各社が抱える問題点等
について議論していただきます。
参加申し込みにつきましては、6月6日より優先申込受付を開始する予定ですので、読者の皆様のご参加を
お待ちしています。

次は海外出張余話第6回目で、ロンドン事情その3として、ロンドン有名ホテルで味わうアールグレイについて
お話ししたいと思います。
私はコーヒーよりも紅茶のほうが好きですので、本場ロンドンではおいしい紅茶を飲むのが楽しみの一つと
なっています。今回はブラウンズホテルで飲んだアールグレイについてお話したいと思います。
以前と言ってももう7,8年前になりますが、出張でロンドンに行った際にここでゆったりとアフタヌーンティ
を楽しみました。
その時に見たのは、白髪のおしゃれな老婦人が、紅茶を飲みながら一人でゆったりと読書をしている姿です。
当時は今ほどアフタヌーンティが有名ではなかったので、客の数もそれほど多くはなく、グランドピアノの
置いてあるオーク張りの部屋にはゆったりとした時間が流れていました。
そのような印象が強くありましたので、今回もゆっくり静かな雰囲気に浸りに行こうと思って平日の15時ごろ
ホテルを訪れてみましたが、なんと喫茶ルームは予約客で一杯で18時からなら席を用意できるとのこと。
まさかここがそのような人気になっているとはつゆとも知らず、予約を入れなかったことを大いに後悔した次第です。
とは言え、ここであきらめて帰るのもなんですから、アフタヌーンティがだめならお茶だけでも飲めないかと尋ねたら、
バーでなら大丈夫ということでしたので早速バーを案内してもらいました。バーは、オーク調の部屋の次の間の白で
統一された部屋の隣にありました。部屋自体はグレー系の内装でソファがあったり、4人用、2人用のテーブルが幾つかあり、
少々暗めでしたが落ち着きのある部屋でした。
2人用のテーブルに案内され、注文を聞かれましたのでアールグレイと答えました。
しばらくして運ばれてきたカップを見ると、色も丁度濃い目で香りも良く、飲んでみるととても上品な味がしてまさに
アールグレイそのものでした。濃過ぎもなく薄くもなくさすがブラウンズホテルで出す紅茶でした。
アールグレイは茶葉の量やお湯に浸す時間によって味も香りも変化しますが、このホテルでは最適の状態で
客に持ってくるようです。
なお、後でホテルの係に聞いたところ、アフタヌーンティはネットで予約を受け付けていて、特に休日の予約だと
6週間前でないと取れないとのこと。
ロンドンの高級ホテルでアフタヌーンティを考えている方は、事前に予約が必要ということをお忘れなく。
次回はビッグベンの側のテームズ川ほとりに立つロンドン・マリオットホテル・カウンティ・ホールで味わった
アフタヌーンティをご紹介します。

以上

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   山本隆司弁護士の著作権談義  第20回
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★山本弁護士の著作権談義の第20回目です。
今回は、「米国商務省報告書」です。
2013年7月米国商務省発表の報告書の内容についての紹介です。

米国商務省は、2013年7月に「デジタル経済における著作権政策、創造性及びイノベーション」という
報告書を発表しました。
米国商務省は、米国の経済発展を任務とし、米国特許商標庁もこれに属しています。前回ご紹介したとおり、
米国著作権局は、行政府ではなく立法府に属している機関です。したがって、著作権関連産業の保護育成という
行政目的は、米国著作権局ではなく、米国商務省の任務になります。著作権法は、デジタル化・ネットワーク化への
対応を目標としたDMCAの制定による改正後15年も経ちます。米国商務省は、インターネットの発達による
著作物市場の変化に著作権法が対応しているかを検討し、今後の施策の目標とするために、
2010年に「インターネット政策タスクフォース」を立ち上げました。同タスクフォースは、
関係者からヒアリングを行い、関係機関の意見を聴取し、またパブリックコメントを求めて、この報告書をまとめました。
この報告書の中で何度も繰り返し述べられていますが、そこにおける視点は、徹底したインセンティブ・セオリー(産業政策説)
です。「著作権法は、社会全体の利益のために創作的な著作物の創出を促進することを目的として、著作者に
独占的権利を与えるものである」。そして、「アメリカの繁栄に最も重要なことは革新のエンジンに活を入れることにある。
アメリカ人の創作性とインターネット経済はそのエンジンの心臓部であり、両者の関係ゆえに商務省はこの問題を
調査することとなった。」というものです。
そして、報告書は、いくつかの検討すべき課題として、以下のものを挙げています。
まず、立法上の課題として、
①録音物に対する公の実演権は、現行法上放送を含んでいないが、これを含むよう改正すべきこと、
②著作物の複製と頒布に定められているのと同じ刑事罰を著作物のストリーミング配信にも及ぼすべきこと、
③音楽配信の種類ごとに料率設定の基準を変更すべきこと、
④メカニカル・ライセンスの制度を見直すべきこと、
⑤携帯電話に掛けられたロックの解除に対するアクセス・コントロール規制の免除を付与すべきことを挙げています。
つぎに、商務省が今後検討すべき課題として、
①リミックス創作の法的枠組み、
②デジタル環境における頒布権の消尽(the first sale doctrine)、
③個人への法定賠償の適用および大規模オンライン侵害に対する間接侵害責任、
④DMCAのノーティス・テイクダウン手続の改良、
⑤オンライン侵害に対する零細な権利者による権利行使、
⑥著作権登録の促進、
⑦オンライン侵害を減少させるための教育・啓蒙活動の促進、
⑧オンライン・ライセンス促進に対する政府の役割の検討を挙げています。
また、⑨図書館に対する権利制限の見直し、孤児著作物と大量デジタル化の問題の検証など著作権局等の取り組みについて、
商務省が支援すべきことを課題として挙げています。
最後に、裁判所での解釈上問題となっている課題として、①ストリーミングが公の実演に当るか、②一時的複製の取り扱い、
③配信は頒布に当たるか、④プロバイダ責任制限の要件、⑤デジタル環境への適用における古い契約の解釈を挙げています。
 
以上

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   読者の声
            『読者の声』の投稿と紹介
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このコーナーは、「JRRCマガジン」が皆さんにとって便利な、役に立つ情報収集ツール
としてご活用していただけるよう、ご意見・ご感想をお寄せいただき、その中から選出し
てご紹介するコーナーです。
                              
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  └ ご意見・ご要望など … https://fofa.jp/jrrc/a.p/112/

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   あとがき
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先日 自宅でブロックのピースを見つけた。

思い返してみると、一時ブロック遊びに夢中になった時期があった。

年齢に応じて、簡単に遊べるものからプロ級の超ミニサイズのブロック(4ミリ四方)まで、
いろいろ取り揃えられている。
まずはオーソドックスに大小のブロックが混ざったボックスを購入するところから始め、
徐々にレベルアップ。主な作品として「T-REX」「姫路城」「熊本城」を作るに至った。
技術的にさほど難しさは感じられないものの、1つの作品は大抵2,000以上のブロック
で構成されていることとピースの微小さなどから、なかなか根気のいる遊びである。
マニュアルは添付されているから、それに従って組み立ててゆけばいいはずだが、一作
品に1か月以上費やした記憶がある。
1つ間違えば全部取り壊し、最初からやり直しは何度あったことか。。。

こんな困難(?)を乗り越えながらのゴール間近の嬉しさや完成したときの達成感たるや。

さて、今回見つかったのは「T-REX」の爪。
早いとこ修復せねば・・・(A.U)

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■編集責任者
   JRRC副理事長 瀬尾 太一   
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