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JRRCマガジン
2013/2/25配信 第8号
━━目次◆◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1.著作権百夜一夜話 第8話―――――――1月1日施行の権利制限 後編
2.山本隆司弁護士の著作権談義 第5回――著作権表示
3.読者の声―――――――――――――――読者の声の投稿と掲載
4.プロムナード―――――――――――――海外出張エピソード
5.インフォメーション――――――――――ご意見・ご要望、各種手続き
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皆様、こんにちは。
日本複製権センター メールマガジン編集者です。
「東風(こち)吹かば・・」ではないですが、梅の香り漂う季節になりました。
花粉症の私ですが、梅の木の傍ではマスクをはずして、高雅な香りに浸ってい
ます(^0_0^)
今月は第2回著作権セミナーを開催した都合で、配信が遅くなりましたことを
お詫び申し上げます。
さて、今月号の「著作権百夜一夜」は先月に引き続き、「著作権法の一部を改
正する法律」のうち、1月1日施行の権利制限に係る条文解説の後編です。
山本先生の著作権談義は、米国の著作表示について、その歴史的背景から現在
に至る流れを解説しています。
では第8号をお届け致します。
▼今後取り上げるテーマについてリクエストがございましたら、
ご意見・ご要望など ⇒ https://fofa.jp/jrrc/a.p/112/
にて、ご投稿をお願いいたします。
▼ご了解ください
このメルマガは等倍フォントで作成していますので、MSPゴシックのよう
なプロポーショナルフォントで表示すると改行の位置が不揃いになります。
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著作権百夜一夜話 第8話
著作権法改正における権利制限の話 後編
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◆はじめに
今回も、昨年6月20日に成立し、同27日に公布された「著作権法の一部を
改正する法律」のうち、今年1月1日に施行され他権利制限に係る「第30条
の2」から「第30条の4」までと「第47条の9」について採り上げます。
先月号では、
第30条の2「付随対象著作物の利用」 でした。
今月号は、
第30条の3「検討の過程における利用」
第30条の4「技術の開発又は実用化のための試験の用に供するための利用」
第47条の9「情報通信技術を利用した情報提供の準備に必要な情報処理の
ための利用」
を取り上げます。
◆第30条の3「検討の過程における利用」
●条文
著作権者の許諾を得て、又は第67条第1項、第68条第1項若しくは第69
条の規定による裁定を受けて著作物を利用しようとする者は、これらの利用に
ついての検討の過程(当該許諾を得、又は当該裁定を受ける過程を含む。)に
おける利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度に
おいて、当該著作物を利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び
用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる
場合は、この限りでない。
●解説
新しいキャラクター商品の開発や販売促進ビデオの作成などを行なうにあたり、
それらの企画段階で社内関係者等への説明やプレゼンテーションを行なうこと
がありますが、実際に利用されるキャラクター等の著作物がその検討資料の中
に掲載されている方が検討し易いのは自明の理です。
そして、その企画の採用が決定して完成品中に収録する著作物に関し、利用者
が権利者の許諾を得るなどの合法的な手続きを行なう意思があれば、その決定
までの過程において著作物を利用することが、この条文によって可能となりま
した。
また、その企画が結果的に不採用になった場合であっても、採用されたとすれ
ば合法的な手続きをする意思があった場合は、本条が適用されます。
尚、本条が適用されるのはあくまで「検討の過程」に限定されているため、検
討を円滑に行なうための関連資料として既存の著作物を利用することまで許容
するものではありません。
例えば、「新製品開発に至った社会背景を説明するための補足資料として週刊
誌に掲載された関連記事をコピーして関係者に配布する」などの行為はこれに
該当するため、別途利用許諾を得る必要があります。
◆第30条の4「技術の開発又は実用化のための試験の用に供するための利用」
●条文
公表された著作物は、著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は
実用化のための試験の用に供する場合には、その必要と認められる限度におい
て、利用することができる。
●解説
著作物の新たな利用法に関する技術を開発するには、その技術によって開発さ
れた利用法が確実に機能するかどうかを検証する必要がありますが、そのため
には、実際に利用される著作物を使って試験をすることが必須となります。
しかし、改正前の著作権法にはこのような利用を許容する条文がなかったため、
実際に権利者の利益を害することにならないような利用であっても、「違法性」
が問われる危惧がありました。
このような事態を回避するため、今回の改正によって、「『必要と認められる
限度』での著作物の利用は権利侵害に当たらない」こととされました。
具体的には、映像や画像の録画や音楽の録音、それらの再生・視聴に関する新し
い技術開発、紙面上の著作物のスキャン精度の向上、自動翻訳機の性能向上な
どのための「試験」段階における利用が本条の適用範囲として考えられます。
ここでの「利用」として考えられるのは、複製、上映、演奏などが一般的なも
のだと思われますが、それ以外の利用形態でも「試験」の一環としてのもので
あれば、本条が適用されると思われます。
「必要と認められる限度」についての基準(時間、分量、利用方法など)は設
けられていませんが、試験をするために使われる映像や音声の著作物の時間や
分量については、経験則等に従って自ずと決まってくるものだと思われます。
例えば30分もの時間を必要とする「試験」があるかどうかといえば、常識的
には「ないだろう」と考えられるのではないでしょうか。
◆第47条の9「情報通信技術を利用した情報提供の準備に必要な情報処理の
ための利用」
●条文
第47条の9 著作物は、情報通信の技術を利用する方法により情報を提供す
る場合であつて、当該提供を円滑かつ効率的に行うための準備に必要な電子計
算機による情報処理を行うときは、その必要と認められる限度において、記録
媒体への記録又は翻案(これにより創作した二次的著作物の記録を含む。)を
行うことができる。
●解説
本条の規定中、1.「情報通信の技術を利用する方法により」の典型としては
「インターネットを使う」ことを意味し、2.「当該提供を円滑かつ効率的に行
うための準備に必要な電子計算機による情報処理を行う」は、「情報提供する
ための準備として、さまざまなデータをそのコンピュータ上で送信し易いファ
イル形式に変換したり統合したりする」ことを意味する、と考えれば理解しや
すいと思われます。
提供される情報としての「さまざまなデータ」の中には多くの「著作物」が含
まれると思われますが、「情報処理を行なうときは」との規定により、既存の
著作物の再利用が前提とされています。
また、ここでも「必要と認められる限度」との文言があるため、著作物全部
(例えば、投稿された動画や音楽の全部)を送信するために記録したり変換し
たりすることは許容されないのは明らかです。
今回の解説は以上ですが、これらの詳細な解説が文化庁の以下のサイトにも掲
載されていますので、ご参照ください。
■文化庁の解説
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/utsurikomi.html
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山本隆司弁護士の著作権談義 第5回
著作権表示
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◆はじめに
山本隆司先生の著作権談義の5回目です。
今回は米国の「著作権表示」の歴史的背景から現在のまでの流れをわかりやす
く解説して頂いています。
▼山本弁護士の経歴、著作物等
⇒ http://www.itlaw.jp/yamamoto.html
お断り
丸の中にCのマーク、丸の中にPのマーク、丸の中にRマークは環境依存
文字のため文字化けの可能性があり、メルマガでは使用いたしません。
ここでは、Cマーク、Pマーク、Rマークと表記しております。
◆著作権表示
前回、著作権登録についてお話ししたので、今回は著作権表示についてお話し
したいと思います。
著作権表示とは、もともと米国著作権法上の制度で、著作物の複製物に、Cマ
ークとともに発行年と著作権者名を記載する制度です。ただし、著作物が録音
物の場合には、その複製物(レコード)に、Cマークではなく、Pマークとと
もに発行年と著作権者を記載します。
米国は、1989年にベルヌ条約に加盟するまでは、著作権表示を付けずに著
作物の複製物を頒布した場合には著作権が失効するという効果を、著作権表示
に与えていました。
そのため、米国は、この制度を維持している限りベルヌ条約の無方式主義の条
約上の義務に反するので、およそ100年間、ベルヌ条約に加盟せずにいまし
た。
米国が著作権表示という方式主義を採っていたのは、米国の法制度に根ざす深
い思想的背景があります。
まずは、1602年の英国王座裁判所のDarcy v. Allein判決から話は始まりま
す。
エリザベス女王からトランプに対する専売権を与えられた者がトランプの無断
販売を行っていた者に対して訴訟を起こしたのですが、裁判所は、あらゆるビ
ジネスの競争は自由でなければならない、その例外は新規のビジネスを振興す
る場合にのみ認められると論じて、エリザベス女王の与えた専売権を無効と判
示しました。
この判決は、独禁法と知的財産権法のリーディングケースとなっています。
つぎに、この判決を受けて、英国では、1623年に専売法が制定され、これ
まで与えられた専売権をすべて無効と宣言するとともに、新規の発明に対して
期間14年の特許権を与える制度を定めました。また、1709年にアン法が
制定され、新規の発明に対して期間14年の特許権を与える制度を定めました。
このように、英国では、自由競争の思想が前提にあって、知的財産権の保護は
その例外とし、いわば必要悪として位置づけられています。
この思想は、米国に承継され、独禁法が米国で発展したように、より強固にな
りました。そのため、米国では、公衆による善意侵害が起こらないように権利
者には権利主張を表示する義務を課すという制度設計を採っています。
たとえば、米国では、特許権表示(「Pat.」+特許番号)が特許製品に、商標
権表示(Rマーク)が登録商標に付されていなければ、善意侵害者に対して損
害賠償を請求できません。著作権についてはさらに厳しく、Cマークを付けて、
権利主張を公示しなければ、著作権が失効してしまうというのが、米国の伝統
的な制度設計だったのです。
しかし、米国は、伝統的な制度設計を捨ててでもベルヌ条約に加盟した方が国
益上有利であると、1988年に至ってやっと決断しました。
Cマークを捨てはしませんでしたが、複製物にCマークが付いていなければ著
作権が失効してしまうという法的効果は、廃止しました。
あらたに、Cマークには善意侵害の抗弁(→法定賠償額の減免など)を許さな
いという法的効果を与え、Cマークを付加し権利主張を公示することを促す制
度を維持しています。
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読者の声
『読者の声』の投稿と紹介
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このコーナーは、身近な話題について、読者の方に投稿していただき、その中
から選出して『読者の声』としてご紹介するコーナーです。
◆読者の声
残念ですが投稿はございませんでした。ぜひ次回お待ちしております!
◆次回テーマ
少し趣きを変えました。
「著作物をコピーする場合、どういう目的でどんな著作物が多いですか?」
◆投稿先はこちら
⇒ https://fofa.jp/jrrc/a.p/111/
掲載された方には粗品を進呈いたします。
なお記事として掲載する場合は、事前にご連絡しご了解を頂くように致します。
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プロムナード
♪ ♪ 悪魔の調べ ∞ ∞
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ベルリン(ドイツ)
ベルリンで開催された音楽産業の国際会議に参加した2000年は、ユーロ導
入の次の年に、また、ベルリンの壁が撤去されてから約10年後に当たり、ド
イツ大変革の真只中にあるときでした。
その年5月の第1週に行なわれる会議のために滞在したホテルは、ポツダム広
場、ティーアガルテンにほど近い場所にありました。徒歩で歩ける範囲にはブ
ランデンブルク門、ベルリンの壁の保存箇所、屋上にガラスドームを配した国
会議事堂(1999年修復)などがありました。
ブランデンブルグ門をくぐった先は旧東独領のウンターデンリンデンという、
中央部に菩提樹が植えられた大通りで、その両側に立ち並ぶ歴史的な建物は、
東西統一によってもたらされた平和を謳歌しているようでした。
▼ドイツ観光局のHP
http://www.germany.travel/jp/index.html
数日間に亘る会期が終わった翌日は、主催団体の企画によるポツダムまでの貸
切りクルーズ。船上でランチをとりながら岸辺を流れる景色に見とれ、ポツダ
ムに着いて5月の清新な空気に触れながらサン・スーシ宮殿やツェツィーリエン
ホーフ宮殿などを見学したことで、シリアスな会議の内容は遥か記憶の外に...
その日の夜は、ホテルのコンシェルジュに依頼して手配した、有名な5角形の
コンサートホールでのベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサート。
プログラムは、指揮者のクラウディオ・アバドに加え、ホルンのシュテファン・
ドール、今は亡きテノールのフィリップ・ラングリッジ、ピアノのマルタ・アル
ゲリッチを迎えてのブリテンとベートーベンの作品で、この日のチケットは筆者
にとっては垂涎の的とも言うべきもの。
たまたまホテルの部屋に置かれていたガイドブックで知り、幸運にも1日前に、
しかも、Aブロック8列目の1番(日本ではS席相当)のシートが、プレミア付
きなのに、何と”86マルク(ユーロが使われる前で、当時の日本円換算で5千
円強)”で入手できたのです!(^_^)v
~ベルリンフィルの日本公演だとS席で6万円ぐらいですぅ
オケの音も演奏もホールの音響もすべてが申し分ないもので、本来であればもっ
と無上の感動を味わえたはずが、2曲目(ベートーベンのピアノ協奏曲第2番)
の第2楽章でピアノソロの演奏が静かに始まった途端、信じられないことに、携
帯電話の♪呼び出し音♪がホール全体に鳴り響いたのです!!!(@_@;)
当然、指揮者もピアニストも演奏を中断するものと思いましたが、そのまま演奏
は続けられたため、否応なしにベルを止めるべくバッグの中に手を差し込んだ携
帯の主は、何と、若い女性だったのです。
その女性は顔から火が出るような思いをしたことは想像に難くありませんが、同
情よりも興醒めの方が大きく、折角のベストプログラムにも拘らず、後味の悪さ
が残るものとなってしまったことが、10年以上経った今でも残念でなりません。
◆5◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
インフォメーション
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とりあげたいテーマ等、皆様からのご意見、ご感想、ご希望などお聞かせ頂け
れば幸いです。次号もよろしくお願いいたします。
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窓口までご連絡下さいますようお願いいたします。
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