JRRCマガジン第5号(権利を制限する規定その一、アクセスコントロールの保護動向)

◆◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 JRRCマガジン
                                    2012/11/20配信 第5号
━━目次◆◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1.著作権百夜一夜話 第5話       権利を制限する規定の話 その一
2.山本隆司弁護士の著作権談義 第2回  アクセスコントロールの保護動向
3.読者の声               読者の声の投稿と掲載
4.プロムナード             雑談アレコレ
5.インフォメーション          ご意見・ご要望、各種手続き
━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆━━━━━━━━━━━━━━━◇◆

皆様、こんにちは (^o^)丿
日本複製権センター メールマガジン編集者です。

月日が流れるのは早いもので街ではジングルベルが流れる時季になりました。
先月末、当センターが面している青山通りでは、大勢の仮装をした子供と母親
達がにぎやかに店々の前に並んでいました。編者とは縁遠いハロウィンです。
「お祭り騒ぎ」で日本の重い雰囲気を吹き飛ばそうという意味で、これもアリ
だろうと思いましたが、買い物をしていると、ここぞとばかりにカボチャを使
った食品が並んでおり、秋の味覚の代表、「一体クリはどこにいったんだ!」
とつぶやきました。

先月号からスタートした山本隆司先生による著作権談義ですが、今回は先生が
国際会議でスピーチされたテーマの概要です。

百夜一夜話は、著作権の権利行使を制限する規定の話で、例を挙げて解説して
います。
それでは第5号をお届け致します。

▼今後取り上げるテーマについてリクエストがございましたら、
   ご意見・ご要望など ⇒ https://fofa.jp/jrrc/a.p/112/
 にて、ご投稿をお願いいたします。

▼ご了解ください
 このメルマガは等倍フォントで作成していますので、MSPゴシックのよう
 なプロポーショナルフォントで表示すると改行の位置が不揃いになります。

▼メルマガ配信ご不要の方
  今後メルマガを受け取りたくない方は、お手数ですが
  5.インフォメーションで、「配信停止」のURLをクリックして
  配信停止の手続きをお願い申し上げます。

◆1◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 著作権百夜一夜話 第5話  
         「権利を制限する規定」の話 その一
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇

◆はじめに
前号のメルマガでは、著作権法には「権利を制限する規定」(著作権法第30
条)が設けられている旨を記載しましたが、今月号・来月号の2回に分けて、
各権利制限規定について、考えられる利用事例を挙げながら解説いたします。

◆第30条「私的使用のための複製」
・一連の権利制限規定の最初に規定されている条文です。

 
◎著作権法に定められた各「支分権」の対象となる「行為」は、著作権法では
 「利用」とされています。これに対し、「使用」というのは、著作物の目的
 とされている接し方、つまり書籍であれば「読む」こと、CDであれば「聴
 く」こと、DVDであれば「観る」こと、写真であれば「視て鑑賞」するこ
 と、などが「使用」に当たります。

   ~ この部分は、著作権法全般にわたる共通概念です ~

・「私的使用」をするために「複製行為」を「私的」に行う場合は、権利者の
 許諾を得る必要はない、というのがこの条文の趣旨です。

・しかし「私的使用」を目的とする場合であっても、その「複製」については
 一定の制限があります。

・最初に、私的使用のための複製が許される範囲は、同条第1項で『個人的に
 又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下
 「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その
 使用する者が複製することができる。』と定められています。

・「個人的に」は、自分で使う場合に自分で複製することであることは明らか
 です。

・次の、「家庭内で使用することを目的とするときは、その使用する者が複製
 することができる」というのは、家族の誰かが使用するものを、使用者以外
 の家族の一員が、その使用する人に代わって複製することを許容するとの趣
 旨です。

・「家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」というのは、明確な基準が示
 されていないため、判断が分かれるところです。
 しかし、権利の制限規定はできるだけ狭く解釈されるべきだという原則に則
 れば、「家族同様の人間関係にある人(例えば、「親友」と呼べるような数
 人程度)の使用に供するために複製することができる」と判断するのが無難
 だと思われます。

 ■著作権法第30条
  http://www.houko.com/00/01/S45/048.HTM#s2.3.5

次回は今回の続きで、
私的使用を目的とした複製から除外される規定と第30条第2項の解説になり
ますが、重要な部分ですので、事例を挙げてわかりやすくしています。

◆2◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 山本隆司弁護士の著作権談義 第2回
         アクセス・コントロール動向について
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇

◆はじめに
前月号より「ほっとな話題」をより専門的な内容にすべく、山本隆司弁護士に
著作権談義の執筆を依頼し、今回、第2回となります。
毎回のテーマは山本先生にお任せしていますが、今回は京都で開催された
ALAI(国際著作権法学会)大会での、先生のスピーチの概要です。

    ▼山本弁護士の経歴、著作物等
     ⇒ http://www.itlaw.jp/yamamoto.html

◆アクセス・コントロールの保護動向について
10月16日から京都で開催されたALAI(国際著作権法学会)大会に参加
しました。京都大会は、アジアで初めてのALAI大会の開催でした。

京都大会のテーマはクラウド環境における著作権と関連権でしたが、私は
 「クラウド環境におけるアクセス・コントロールに対する著作権保護」
について、スピーチしました。

WIPO条約は、技術的手段の保護を加盟国に義務づけています。WIPO条
約が保護を定めている技術的手段は、著作権の行使を保護する手段、いわゆる
「コピー・コントロール」です。たとえば、音楽レコードに付されたSCMS
やマクロビジョンがこれに当たります。

コンテンツを保護するために使用される暗号化や認証という技術的手段は、「
アクセス・コントロール」と呼ばれ、「コピー・コントロール」と区別されて
います。

アクセス・コントロールの保護に対する姿勢は各国によって異なっています。
1.コピー・コントロールのみを保護しアクセス・コントロールを保護しない
  法制(今年の著作権改正までの日本)。
2.著作権の行使に関連するアクセス・コントロールのみを保護する法制(英
  国や今年の著作権改正後の日本)。
3.著作権の行使に関連するか否かを問わず、コンテンツを保護するために使
  用されるアクセス・コントロールを保護する法制(米国)。

クラウド・サービスは、ユーザがサーバにアクセスしてサーバ上のコンテンツ
を利用するものです。その形態にも、
a)サーバ上のコンテンツをダウンロードして利用する形態(例:音楽配信)
b)サーバ上のコンテンツをダウンロードせずにサーバ上でのみ利用する形態
  (例:オンライン・ゲームや各種のオンライン・ソフト)
との二つがあります。

前者a)の場合には、技術的手段としては認証や暗号化が使用されますが、ダ
ウンロードに伴いユーザの端末に複製が生じますので、認証や暗号化は、
  2.著作権の行使に関連するアクセス・コントロールのみを保護する法制
でも保護の対象となります。

しかし、後者b)の場合には、技術的手段として認証が使用されますが、複製
その他の既存の著作権利用行為を生じないので、認証は、
  3.著作権の行使に関連するか否かを問わず、アクセス・コントロールを
    保護する法制でのみ保護
の対象となります。

一言でいうと、クラウド環境において既存の著作権の支分権にはない著作物の
利用形態が登場しました。そして、その保護のためには、著作権の支分権とし
て新たに「アクセス権」を創設し、アクセス・コントロールを広く保護するこ
とが必要となります。
今後、米国だけではなく、世界中でこの論点について議論が広がるものと思わ
れます。

◆3◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 読者の声
       『読者の声』の投稿と紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇

このコーナーは、身近なテーマについて、読者の方から投稿して頂き、その中
から選出して『読者の声』としてご紹介するコーナーです。

ご投稿ありがとうございました。
本号では、投稿して頂きました1件をご紹介致します。

◆前回テーマ
 インターネット以外の日常生活の中で、「これは著作権法に違反では?」
 と思うこと(もの)

◆読者の声
 ニックネーム よしさん
  自分の企業について、メディアで紹介された記事を、無許諾で自社サイト
  に掲載することは、厳密に言えば複製権侵害になると思います。
  (ex. 新聞・雑誌に載った書籍の書評を、出版社が自社サイトに掲載す
   る場合)
  しかし、元はといえば自社の製品がなければその記事もなかったわけです
  から、自由に利用できるようになればいいと思います。
  今回の著作権法改正では導入されませんでしたが、いわゆる「日本版フェ
  アユース」によって、可能にしてもらいたいものです。

◆次回テーマ
  「著作権法に照らして違法か合法か判断が難しい!」と思うこと(もの)
  
  いろいろあるように思うのですが、お気づきになったこと、いつも気にか
  かること、迷うことなど何でも結構ですので気軽にご投稿ください。
  よろしくお願いいたします。

◆投稿先はこちら
  ⇒ https://fofa.jp/jrrc/a.p/111/

掲載された方には粗品を進呈いたします。
なお記事として掲載する場合は、事前にご連絡しご了解を頂くように致します。

◆4◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 プロムナード
       ♪ ♪     素 朴     ∞ ∞
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇

スロベニア(リュブリャナ)

2011年10月末、スロベニア共和国の首都リュブリャナでの国際会議に参
加するため、約1週間に亘って同地を訪れました。
スロベニア共和国は1991年にユーゴスラビア連邦共和国から独立した国で、
同じくユーゴスラビアから独立したクロアチアのほか、ハンガリー、オースト
リア、イタリアと国境を接しています。

  ▼スロベニア共和国
   http://www.orbe.com/slovenija/

例によって、会議以外のプライベートな時間を充てることしかできなかったた
め、首都リュブリャナ以外の地に足を延ばすことはできませんでしたが、それ
でも帰途に着く1日前は、レンタサイクルを駆って、ガイドブックに紹介され
ているリュブリャナ城、フランシスコ会協会、三本橋、国立博物館、民俗学博
物館、私立博物館、ティヴォリ公園などを見て回ることができました。

  ▼スロベニアの観光 
   http://www.slovenia.info/?home=0&lng=2&id_country=129

スロベニアの記念品を探すべく市内の土産店に立ち寄ったとき、素朴な絵が描
いてある横長の板が壁面に飾ってあるのに眼が留まりました。そこで店員さん
に聞いたところ、「スロベニアでは600年に亘る養蜂の歴史があり、気候の
関係もあって引き出し式の養蜂箱を重ねて蜜蜂を育ててきた。18世紀頃にな
ると養蜂家は、それぞれ自分たちの生活習慣や趣味を表す絵を引き出し状の巣
門のふたに描き始め、それが『巣門飾り絵』という庶民の芸術となり、今や、
スロベニア有数のお土産になった」とのこと。

  ▼巣門飾り絵
   http://tabi.com/feature/slovenia/6-radovljica/

この飾り絵は軽量でかさばらず、素朴で庶民的な絵柄が豊富であることが気に
入ったので、知人への土産として大量に購入してしまいました。

一方、音楽が趣味の筆者としては、コンサート情報をチェックして、スロベニ
ア・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートがあることを知りました。
前述のとおり、国境を接しているすべての国はクラッシック音楽の宝庫といわ
れるところで、このような環境であればこの地のオーケストラも、必ずや素晴
らしい音楽を奏でるだろうと、期待が高まりました。

  ~そういえば、スロベニアとその周りの国は、音楽の都ウィーンを首都
   とする旧ハプスブルク帝国領でしたね 

プログラムも個人的に好きな内容であったため、チケットを購入して会場に赴
きました。会場に三々五々参集してきた聴衆のほとんどを占める高齢者は、開
演前の時間、売店でシャンパンやワインを飲みながらワイワイガヤガヤ。筆者
も倣い、白ワインを一杯いただき、愈々開演時間が到来。

しかし、たまたま運が悪かったのか、残念ながら期待は見事に裏切られ、その
演奏は散々。終演後に自棄酒を飲む羽目になったことが、唯一、今回の出張の
汚点となってしまいました。(+_+)

  ~ワインも有名ですが、スロベニア名物のソバ料理で不満解消すれば
   よかったかも!(*^。^*)

◆5◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 インフォメーション
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇

読者の方から、JRRCのホームページでもJRRCマガジンが読めるように、
とのご要望を頂きました。
残念ながらすぐには実現できませんが、前向きに検討したいと思います。

とりあげたいテーマ等、皆様からのご意見、ご感想、ご希望などお聞かせ頂け
れば幸いです。次号もよろしくお願いいたします。

※このメルマガにお心あたりがない場合は、お手数ですが、文末のお問い合せ
 窓口までご連絡下さいますようお願いいたします。

※メルマガ配信の停止をご希望の方は下記の「配信停止」からお手続き下さい。

※JRRCマガジンを、お知り合いの方、同僚の方などに是非ご紹介下さい。
 下記の「読者登録」からお手続き頂けます。
 または、
   jrrc.join@fofa.jp
 に空メール(タイトル、本文なし)を送信してください。

■各種手続き
  ├ 読者登録      … https://fofa.jp/jrrc/a.p/109/
  ├ 配信停止      … https://fofa.jp/jrrc/b.p/109/
  └ ご意見・ご要望など … https://fofa.jp/jrrc/a.p/112/

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
■お問合せ窓口
   公益社団法人日本複製権センター(JRRC)
     ホームページの「お問合せ」ページからアクセスしてください。
       ⇒ http://www.jrrc.or.jp/inquiry/

■編集責任者
   JRRC副理事長 瀬尾 太一   

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆

アーカイブ

PAGE TOP