JRRCマガジン第62号(陪審制度)

山本隆司

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   JRRCマガジン No.62 

山本隆司弁護士の著作権談義
第44回「陪審制度」

                                   2016/6/17配信
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皆様、こんにちは。
JRRCメルマガ担当です。

先日 中国でディズニーランドが開園したそうですね、「SDL(上海ディズニーランド)」とか。
報道によれば、ランドマークになる園中心にある建物は他のディズニーランドの中でも一
番高い、とのこと。
ある旅行パックには、世界にあるディズニーランドを巡る旅があるみたいですね。
当然、近々このパックに上海も含まれるのだろうな~と思いつつ、

それでは、
山本隆司弁護士の著作権談義
第44回「陪審制度」
をお送りいたします。

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山本隆司弁護士の著作権談義 
第44回 「陪審制度」
                               
 米国で、グーグルのアンドロイドOSがオラクルのJava APIの著作権を侵害するかが争
われている訴訟があります。この訴訟において、2016年5月26日、フェア・ユースに当た
るとの陪審員の評決が出たとのニュースがありました。私は「何で?」と首をかしげてし
まいました。
 2010年に、オラクルは、グーグルのアンドロイドOSがオラクルのJava に対する特許権
と著作権を侵害すると主張して、カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所に訴えを提起
しました。著作権侵害について、Java APIのプログラム構造(Structure, Sequence and
Organization略してSSO)の無断複製が争われました。2012年に、陪審員は複製を認め
る評決を下しましたが、フェア・ユースの成立については意見が分かれ評決に至りませ
んでした。しかし、裁判官は、Java APIのプログラム構造に著作物性はないとの判決を
下しました。オラクルが控訴し、第9巡回区は、2014年、地裁判決を覆し、Java APIのプ
ログラム構造に著作物性を認める判決を下しました。グーグルが最高裁に上告受理申
立をしましたが、2015年、検事総長の「プログラム構造に著作物性のあることは明白」と
の意見を受けて、申立を却下しました。そして、地裁での差し戻し審において、裁判官か
らの評決指示を受けて、2016年5月26日、陪審員がフェア・ユースに当たるとの評決を下
したものです。
 米国連邦憲法の修正7条は、「コモン・ロー上の訴訟において、訴額が20ドルを超える
場合には、陪審による審理を受ける権利は保障される。陪審によって審理された事実は、
コモン・ロー上の規範による場合を除き、連邦裁判所において再審理されることはない。」
と規定しています。
 損害賠償の救済を求める事件はコモン・ロー上の訴訟に該当します。したがって、たと
えば、侵害差止めの仮処分は、陪審の対象になりません。
 陪審を受ける権利は両当事者が持っていますので、いずれか一方の当事者が陪審を
求めた場合には、他方当事者が反対しても、陪審で審理されることになります(jury trial)。
しかし、陪審が審理するのは事実認定だけです。陪審の認定した事実に法を当てはめ、
また法を解釈するのは裁判官の職権です。両当事者が陪審を受ける権利を放棄した場
合には、裁判官は事実認定をも行います(bench trial)。
 陪審が行うのは事実認定なので、事実について当事者間に争いが無く法律上の争点
だけがある事件では、裁判官は、陪審を省略して事実審理省略判決(summary judgement)
を下すことができます。
 陪審員は、通常12名で、原則として全員一致で評決(verdict)を下します。基本的には
全員一致に至るまで陪審員間で協議することが求められます。しかし、前記の2012年の
陪審のようにどうしても意見が分かれて評決できないことも起こります。
 陪審員が事実認定をするといっても、その前提となる法律解釈が必要になりますが、そ
れは裁判官が陪審員に説示します。たとえば、陪審員に複製に当たるか否かを認定させ
るにしても、著作権法上の「複製」が表現についてのみ成立するものでありいくらアイデア
が同一であっても「複製」には該当しないことを、事前に陪審員に説示する必要がありま
す。フェア・ユースの認定についても何が「フェア・ユース」なのかを事前に陪審員に説示
する必要があります。今回の評決は、トランスフォーマティブ・ユースを認めたようですが、
裁判官が陪審員にそれについてどのような説示を行ったのか、単なる改良でもトランスフ
ォーマティブ・ユースに当たるかのような説示を与えたのではないか。その当たりに問題
があるように思いますが、そのうち判決が出ると思いますので、そのときにあらためてご
紹介したいと思います。
 著作権法上の認定においては、複製の認定のようにアイデアと表現の区別というような
素人には判断困難な問題を生じます。ついつい、素人の陪審は、アイデアが似ていれば
著作物が似ていると判断してしまう危険があります。そのため、米国では、二段階テスト
や三段階テストのように、事実認定の方法や証拠法が発達しました。裁判官が予め著作
物間の類似点からアイデアやアイデアに不可避または平凡な表現といった被保護要素を
排除して(いわゆる排除テスト)、保護される表現における類似点がなければ、裁判官が
法律判断として判決を下すことを行います。また、コンピュータ・プログラムのような技術
的専門的な事項については陪審員の認定事項から除く試みがなされています(たとえば、
1992年のアルタイ判決)。

 以上
 

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   公益社団法人日本複製権センター(JRRC)
     ホームページの「お問合せ」ページからアクセスしてください。
       ⇒ http://www.jrrc.or.jp/inquiry/

■編集責任者
   JRRC副理事長 瀬尾 太一   
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