オーファンワークスについて

著作物等は、原則、著作権者から許諾を得なければ第三者は利用することはできない。
許諾を得ようにも著作権者が不明、連絡が取れないような著作物のことをオーファンワークスと呼ぶ。孤児作品ともいう。

現在、オーファンワークスについて、世界的にその権利処理が大きな問題となってきている。
これはデジタル時代にネット上で流通させるための許諾すら得ることができず、ナショナルアーカイブなどの施策を行うために大きな障害となっている。

また、この問題についてはEUにおいては統一して対応するべく進捗しており、アメリカにおいてもオーファンワークス対応策が検討されつつある。

権利処理の実態

  • 著作者の死後、権利処理がどのように運用されているのかについては、実態としてかなり権利所在の確定が難しい状況にある。これは相続法による遺産相続によって、財産権である著作権が分散されることによる事が大きい。
  • 通常、相続する著作権が大きな経済的な価値を生むと思えない場合、遺産の分割協議に著作権が明記されることはまれである。一般的なひな形では、その他条項があり、特定の相続者が継承するか、または都度協議などの規定があるが、著作権継承者の明記がないために、著作権者である自覚がない場合も多い。
    特段の継承財産がない場合は、分割協議すら書面で行われないために、通常の遺産分割によって、複数の権利者に分割されていると考えられる。
    また、たとえ著作権継承者として名乗りを上げても、分割協議書などの裏付けがなく、法的にそれが正しいのかどうかは曖昧なままとなっている場合が多い。
  • このような状況が数世代続いた場合には、権利者は分割を繰り返して複数化し、実質的に許諾を得ることは困難となっている。

文化庁長官の裁定制度

相当の努力を払って著作権者を捜索しても、その著作物の権利者と連絡することができない場合、文化庁長官の裁定を受け、かつ、文化庁長官が定める額の補償金を権利者のために供託し、裁定に係る利用方法により、その著作物を利用することができる。

著作権者不明等の場合の裁定制度(文化庁サイト)

事業趣旨

現行の裁定制度に基づき、利用者に義務化されている「相当の努力」を払うべき権利者の捜索および文化庁長官への申請手続きについて、権利者団体が中心となってその作業を行う。また、これらの作業を一定期間でまとめ、集中して処理する。これにより、利用者の作業負担や処理コストを軽減し、より簡易に、かつ、権利者の権利を損なわずに裁定制度の利用を円滑化する方策について、実証的な検討を行う。

事業内容

権利者団体が保有するデータベースでの調査を中心に、裁定制度で利用者に課されている相当の探索を行う。また、この際に月次等で申請を行い、集中処理とすることで、一著作物あたりの処理コストを低減し、利用の円滑化をはかる。
更にこの実証事業から、円滑化による著作者不明著作物の利用ニーズについても各方面より現況を調査する。

事業実施団体

権利者団体(9団体)で構成する「オーファンワークス実証事業実行委員会

実施内容

裁定制度の利用ニーズを募り、相当の探索を行い、著作権者不明と判断された利用について、その利用希望を取りまとめて実行委員会が文化庁長官への申請を行う。

対象とする著作物

書籍、新聞、雑誌、学術文献、漫画、写真、美術、音楽など

事業実施時期

2020年10月~2021年1月。期間中に全2回の裁定申請を予定。

作業の流れ

作業の流れ