JRRCマガジンNo.451 JRRC事務局だより 海外での仕事の思い出(アルメニア)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
JRRCマガジン No.451   2026/1/8
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※マガジンは読者登録の方と契約者、関係者の方にお送りしています

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆今回の内容
【1】JRRC事務局だより 海外での仕事の思い出(アルメニア)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
読者のみなさま、明けましておめでとうございます。

平素より公益社団法人日本複製権センター(JRRC)の活動に格別のご理解とご支援を賜り、心より御礼申しあげます。

本センターは、著作物の適正な利用を支える基盤として、契約の円滑化と利便性の向上、そして権利者と利用者の信頼関係の深化に取り組んでまいりました。 2026年は、デジタル利用の進展や国際的な著作物流通の拡大を踏まえ、契約システムのさらなる改善、 相談体制の充実、海外管理団体との連携強化を一層進めてまいります。

役職員一同、著作権制度への理解を社会に根付かせ、権利保護と利 用の調和を実現するため着実に歩みを重ねてまいります。本年も変わらぬご指導とご協力を賜りますよう、お願い申しあげます。

公益社団法人日本複製権センター
代表理事・理事長 今村 哲也

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

さて今回の連載は、当センター事務局長 林の「海外での仕事の思い出(アルメニア)」をお届けいたします。

前回の記事は下記からご覧いただけます。
https://jrrc.or.jp/category/jrrctimes/

◆◇◆━【1】JRRC事務局だより━━━
海外での仕事の思い出(アルメニア)
━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇◆
                              JRRC事務局 林宏之 

 皆さんこんにちは。事務局長の林です。前回はブータンについて書きましたが、今回はアルメニア国をご紹介します。アルメニアと聞いてすぐにどこにあるのかが分かる方は歴史か地理に詳しい方か旅行が好きな方でしょうか。
 この国は黒海とカスピ海の間にある小国で、かつてはソ連邦の一員、現在は独立して、西はトルコ、北はジョージア、東はアゼルバイジャン、そして南はイランと国境を接しています。「小国」と書きましたが、かつては黒海とカスピ海に跨る広大な領土を有していた時期もあり、西暦301年には世界で初めてキリスト教を国教とした国で、アルメニア文字という独自の文字も持っています。面積は約3万 km2(日本は37.8万km2 なので1/10以下、岩手県と福島県を合わせたくらい)、人口は約300万人(大阪市よりも少し多いくらい)です。

 アルメニア人はユダヤ人と並んでディアスポラ(民族離散)が多く、アルメニア国外にはアルメニアの人口以上の数が世界各地に住んでいると言われています。有名人はかつてベルリンフィルを率いた名指揮者のヘルベルト・フォン・カラヤン氏(異説あり)などを輩出しています。アルメニア人の男性は名前の最後が「(ア)ン」(-ian)または「ニャン」または「ヤン」(-(n)yan)」となることが多いので、名前を聞けばアルメニア系かどうかすぐわかるそうです。
 最近ではアゼルバイジャンのナゴルノ・カラバフを巡り同国と紛争が断続的に続いていましたが、アメリカの仲介により今年8月に和平共同宣言が署名されましたので、その報道で耳にされた方もいらっしゃるかと思います。

1.アルメニアと日本の縁:
 アルメニアと日本はどのような縁があるのか、私が関わった消防車のODA案件(2019年引き渡し)をご紹介します。
 アルメニアでは当時老朽化したロシア製の消防車を修理しながら使っていました。日本は2009年に首都のエレバン市向けに無償資金協力で消防車を提供しており、2016~17年に現地調査に赴いた際にも大切にメンテナンスされ活躍していました。消防隊員からの評価も非常に高かったことを覚えています。

 現地では消防車は消火活動のみに使われるのではなく、救急車の役目も果たしています。冬季には厳しい寒さとなりますので、交通事故などで負傷した方は下手をすると凍死の危険にも晒されます。そんなときに消防車が出動し、車中から負傷者を救出し、病院に搬送する役目を担うのです。
 消防士は地元のヒーローであり、消防車の修理のために町の修理工場に持っていくと、「いつも我々を守ってくれているのだからお金は受け取れないよ」と言って無料で対応してくれることもあったとか。

 そんな消防組織を管轄しているのがアルメニア非常事態省(Ministry of Emergency Situations: MES)です。この省の職員は非常に真摯に職務に取り組み、市民の期待に応え続けています。私が協議した責任者もプロジェクト終了までとても誠実に対応していただきました。
 最初にこの地を訪れた際には非常事態省のArmen Yeritsyan大臣とお会いする機会を得ましたが、この方は人格者で、お会いした時間こそ短かったのですが、強く心に残る方でした。二度目に訪れた際にも進捗状況を報告できることを楽しみにしていたのですが、現地に到着した日に逝去されてしまい、再会は叶いませんでした。

 部下からの信頼もとても厚い方でした。非常事態省の皆さんは、我々との協議の合間を縫って葬儀の準備に奔走されていましたので、協議を集中的に終わらせて、葬儀にも参列させていただきました。同時に非常事態省の皆さんとこの案件を成功させて大臣の遺志に報いようと誓って、プロジェクト終了まで日本・アルメニア双方で協力して取り組みました。
 上述した引き渡しの際には、記念切手が発行され、首都エレバンの中央広場で盛大な式典が挙行され、国内外に広く周知されました。その後各地に配置された消防車はいまも市民の生活を守り続けています。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/about/hanashi/page22_001232.html

 アルメニアと日本の縁は、さらに遡ります。1988年に同国スピタク市で発生した大地震の際に日本が国際緊急援助隊を派遣する等の協力を行いました。この恩を決して忘れなかったスピタク市民は、2011年の東日本大震災の犠牲者のために「ハチュカル」という石碑を2012年に建立し、その後も毎年追悼式典が行われています。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/about/hanashi/page22_000563.html

2.アルメニアの苦難の歴史とこぼれ話
 アルメニア人は今から100年以上前の1915年から1916年にかけて当時のオスマントルコ帝国下で100万人とも150万人とも伝えられる虐殺を受けています。これは当時のアルメニア人の人口の半分ないしはそれ以上とも言われる数であり、当時の悲惨さは想像すらできません(勿忘草(わすれな草)をモチーフとした文様を虐殺100周年時にシンボルとしましたが、2016年に現地に入った際にも町のあちこちに掲げられていました)。
   
 ディアスポラ、度重なる他国による支配、領土の割譲など苦難の歴史の中でも、アルメニア人はキリスト教信仰とアルメニア文字を守り抜き、現代に伝えています。現地調査で地方に移動する際にドライブイン代わりになっていた古い教会やアルメニア文字をモチーフにしたオブジェが置かれている場所を見る機会がありましたが、いずれも大切に管理されており、信仰と文字が民族の誇りになっていることを改めて実感しました。
 また、領土も周辺国に奪われた形になっていますので、ノアの箱舟が辿り着いたという伝承のあるアララト山は現在トルコ領となっています。それでも彼らは国を代表するブランデーであるアルメニアン・コニャックにアララトという名前を付けているように、心の故郷のような思いを抱いています。

 最後になりますが、このアルメニアン・コニャック、ぶどうの風味が強く残っていてとても美味です。第二次世界大戦末期のヤルタ会談の際に供されたのがアルメニアン・コニャックであり、チャーチルがとても気に入って以後箱買いしていたとか。コニャックという名称も本来はフランスのコニャック地方でつくられたもののみ冠することができますが、こうした歴史的な経緯もあり、呼称使用については問題にはなっていないようです。
 皆さんも、もしバーなどで見つけたらぜひ試してみてくださいね。
                                                          (了)
━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇◆
      インフォメーション
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

JRRCマガジンはどなたでも読者登録できます。お知り合いの方などに是非ご紹介下さい。

□読者登録、配信停止等の各種お手続きはご自身で対応いただけます。
ご感想などは下記よりご連絡ください。
⇒https://jrrc.or.jp/mailmagazine/

■各種お手続きについて
JRRCとの利用契約をご希望の方は、HPよりお申込みください。
(見積書の作成も可能です)
⇒https://jrrc.or.jp/

ご契約窓口担当者の変更 
⇒https://duck.jrrc.or.jp/

バックナンバー
⇒https://jrrc.or.jp/mailmagazine/

━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇◆
      お問い合わせ窓口
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━        
公益社団法人日本複製権センター(JRRC)
⇒https://jrrc.or.jp/contact/

※このメルマガはプロポーショナルフォント等で表示すると改行の位置が不揃いになりますのでご了承ください。
※このメルマガにお心当たりがない場合は、お手数ですが、上記各種お手続きのご意見・ご要望よりご連絡ください。

アーカイブ

PAGE TOP