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JRRCマガジン No.394 2024/11/14
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※マガジンは読者登録の方と契約者、関係者の方にお送りしています。
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◆今回の内容
【1】板東氏のコンプライアンス・企業倫理を考える
【2】【お知らせ】政策研究大学院大学で文化産業・地域創造コース(修士)開講
【3】【12/5開催】「オンライン著作権講座 中級」開催のお知らせ(アーカイブ配信あり)
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皆さま、こんにちは。
弊センターの事務所は東京メトロ日比谷線の虎ノ門ヒルズ駅のすぐそばにあるのですが、来所される皆様が異口同音に「この辺りはずいぶん変わりましたね」とおっしゃるのをお聞きし、かつての虎ノ門の街並みに思いをはせる今日この頃です。
さて、今回は板東氏の「コンプライアンス・企業倫理を考える」です。
板東氏の前回までの記事は下記からご覧いただけます。
https://jrrc.or.jp/category/bando/
◆◇◆【1】板東氏のコンプライアンス・企業倫理を考える━━━
⑥ 内部通報制度と公益通報者保護法(続き)
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日本赤十字社常任理事/雪印メグミルク株式会社社外取締役 板東久美子
前回、公益通報者保護法の概要として、同法の保護の対象となる公益通報者についてご説明しましたが、今回はその続きとして、同法により公益通報者に与えられる保護の内容について述べたいと思います。保護内容については、現行法は不十分ではないか、違反に対して民事救済によるだけでなく、罰則により保護を強化すべきではないかという議論が今回の改正時にもあり、現在消費者庁でも検討が行われているテーマでもあります。
また、企業においては、公益通報者保護法がカバーしている範囲だけでなく、コンプライアンス・企業倫理やリスク管理の観点から、さらに広く内部通報制度の対象をとらえ、その実効性を高める体制を整備していく必要があります。公益通報者保護法で求められるところを満たすのはもちろん、広く企業の問題の顕在化・是正の仕組としてどのような内部通報制度を構築・運用していけばいいのか、今回の後半では、そのポイントを考えていきたいと思います。
公益通報者の保護の内容
公益通報を行った者が、それによる不利益を受けないよう、どのような保護が公益通報者保護法によって与えられるのでしょうか。
まず、第一に、公益通報を行ったことを理由とする解雇は無効となります。第二に、解雇でなくとも、降格・減給・退職金不支給その他の不利益な取扱いを事業者が行うことが禁止されます。また、役員を解任された者は、解任を無効とすることはできませんが、解任によって生じた損害の賠償を事業者に求めることができます。したがって、公益通報を理由とする解雇や降格等の不利益取り扱いをされた者や解任された役員は、訴訟等により民事的に救済を受けることができます。逆に、その事業者は、公益通報により生じた損害の賠償請求を行うことはできません。
このような民事的な保護以外に、罰則による保護も必要ではないかということは 、今回の改正時にもホットな議論が行われました。今回、一般的な罰則導入ではありませんが、「公益通報対応業務従事者」(公益通報を受け、通報対象事実の調査をし、その是正に必要な措置をとる業務に従事する者)に関する罰則が規定されました。すなわち、公益通報対応業務従事者は、正当な理由がなく、その公益通報対応業務に関して知り得た事項で公益通報者を特定させるものを漏らしてはならないことが定められ、それに違反した場合には、30万円以下の罰金刑が科されることとなったのです。
現在、消費者庁の公益通報者保護制度検討会で今回の法改正後の施行状況を踏まえた課題の検討が行われていますが、事業者が公益通報者に不利益を与える行為や通報者を探索する行為に対する行政措置や罰則の導入の是非についても論点の1つとなっています。最近の事例でも、兵庫県知事をめぐる通報事案に関し、通報者の探索や処分について問題が提起されているところであり、罰則も含む通報者保護の強化は次回の法改正に向けての議論の焦点となりそうです。
事業者における内部通報体制整備・運用のポイント
企業内の不正にいち早く気づき、その是正を速やかに適切に行うためには、企業の内部での通報制度・体制を整備することが重要です。今回の公益通報者保護法改正により、事業者は、公益通報に適切に対応するための体制を整備することが義務づけられました(300人以下の企業の場合は、努力義務)。まず、公益通報を受け、対象事実の調査をし、その是正に必要な措置をとる業務を担当する「公益通報対応業務従事者」を定めなければなりません。そして、公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制(通報窓口など)の整備等の必要な措置をとらなければならないこととされています。前述のとおり、公益通報対応業務従事者には、通報者を特定させる情報の守秘が義務付けられ、この違反に対する罰則も規定されています。
この内部通報に適切に対応するための体制としては、まず内部通報窓口を設けることが必要です。ホットラインという名称を使う企業もあります。この通報窓口は、企業の内部に設けるものだけではありません。通報者の選択肢を増やして内部組織に通報するのに抵抗やリスクを感じる人も通報できるように、弁護士・法律事務所等の専門家・専門組織を活用して外部に窓口を設けることも有意義であり、このような社内外の複数窓口を設置する企業は増加しています。
この通報窓口で取り扱う対象となる事実の範囲をどうするかも重要です。公益通報者保護法による公益通報の対象となるものは、罰則を規定した一定の法律違反や行政罰の対象となるもの等に限定されていますが、同法の対象やその他の法令違反に限ることなく、コンプライアンス・企業倫理から見て問題になるようなルール違反・不正を広く対象とすることは、実効性ある企業の内部通報制度として必要です。コンプライアンス・企業倫理尊重の意識の強化、風土の形成にも重要な役割を果たすでしょう。
内部通報制度を構築・運用するに当たり、最も重要なのは、通報者が内部通報手続を利用したことにより不利益を被らないようにすることであり、その中でも通報者の情報の秘密保持は極めて重要なポイントです。通報者の氏名等の情報が知られること自体、通報者にとって大きな不利益・負担となり、他の不利益につながるリスクともなり得ます。先ほど公益通報対応業務従事者がこの秘密保持違反を行った場合には罰則の対象ともなりうることを述べましたが、企業として内部通報の過程全体を通じて通報者の秘密保持に細心の注意を払う必要があります。
この通報者の秘密保持に関係することとして、匿名での通報も許容する必要があります。事実の解明の便宜や信憑性の担保のため、また対応の結果のフィードバックのために実名での通報の方が望ましいとは言えますが、そうできない状況や通報者が不利益を受ける不安を抱える場合があり、コンプライアンス問題の顕在化のために匿名による通報という選択肢は必要です。そして、匿名通報の場合に、本人探しをすることは厳に慎まなくてはなりません。
内部通報された事実については、公正・公平な立場に立ち、また通報者の秘密保持に配慮しつつ、関係者のヒヤリングや文書・メール等の調査により事実認定を行い、原因究明や対応策の検討を進めることになります。これらのプロセスにおいては、事柄の性質・軽重等に応じて、担当部署だけでなく、コンプライアンス委員会、取締役会等のしかるべき組織により事実の検証や原因の究明、対応の検討が行われていくこととなります。第三者委員会のような外部者による調査が必要な場合もあります。私自身の経験でも、組織や事柄の性質に応じ、実効性あるプロセスにはいろいろなバリエーションがあることを感じていますが、いずれの場合も内部通報を契機として真摯に問題と向き合い、前向きに改善に取り組むことが軸となることは確かです。窓口に通報されるものの中には、職場のコミュニケーションがしっかりしていれば普通問題にならないような事例もありますが、そのような場合もコミュニケーションの改善という課題に向き合う重要な契機となります。
内部通報制度が機能するためには、従業員から見ても、内部通報しても秘密が守られ、不利益を受けないことが確保され、信頼して利用できる制度運用が行われていること、そして、そのような内部通報制度について徹底して周知し、積極的な利用を促すことが必要です。私が社外取締役・企業倫理委員長を務める雪印メグミルク(株)でも、内部通報窓口(ホットライン)の周知に特に力を入れており、社内・社外の窓口を書いたカードや冊子を従業員全員に配付するとともに、工場等の各職場においてもポスターやチラシを職場に掲示して利用を促しています。外国人労働者も通報できるように外国語対応にも配慮しています。
問題が早期に発見・改善できる、風通しのよい組織を作っていくことは組織経営にとって極めて重要です。内部通報制度はそのための重要なツールであることを改めてご認識いただき、積極的な活用を図っていただくことを願っています。
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【2】【お知らせ】政策研究大学院大学で文化産業・地域創造コース(修士)開講
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政策研究大学院大学では、2025年春に文化産業・地域創造コース(修士課程)を開講します。
幅広い観点から文化資源を捉え、地域の魅力づくりや観光、文化芸術ビジネス、文化イノベーションの創出などに生かす人材の育成を目指します。
詳しくは、こちらをご覧ください。(出願受付期限:2025年1月10日( 金 ))
・文化産業・地域創造コース | 政策研究大学院大学(GRIPS)
・ パンフレット
(お問い合わせ先)
国立大学法人 政策研究大学院大学 アドミッションズオフィス
E-mail:admissions@grips.ac.jp
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【3】【12/5開催】「オンライン著作権講座 中級」開催のお知らせ(アーカイブ配信あり)
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今年度2回目となる、JRRC著作権講座”中級”を開催いたします。
本講座は知財法務部門などで実務に携わられている方、コンテンツビジネス業界の方や以前に著作権講座を受講された方など、著作権に興味のある方向けです。講師により体系的な解説と、最新の動向も学べる講座内容となっております。エリアや初級受講の有無やお立場にかかわらず、どなたでもお申込みいただけます。
参加ご希望の方は、著作権講座受付サイトよりお申込みください。
※本講座はお申込みいただいた方限定でアーカイブ配信を行います。
★日 時:2024年12月5日(木) 10:30~16:50★
プログラム予定
10:35 ~ 12:05 第1部 知的財産法の概要、著作権制度の概要1(体系、著作物)
特集①著作物について(境界領域)
12:05 ~ 13:00 休憩
13:00 ~ 13:10 JRRCの管理事業について
13:10 ~ 14:15 第2部 著作権制度の概要2(著作者、権利の取得、権利の内容、著作隣接権)
14:15 ~ 14:25 休憩
14:25 ~ 15:30 第3部 著作権制度の概要3(保護期間、著作物の利用、権利制限、権利侵害)
15:30 ~ 15:40 休憩
15:40 ~ 16:40 第4部 特集②著作権の集中管理と独占禁止法
16:50 終了予定
★ 受付サイト:https://jrrc.or.jp/event/241114-2/ ★
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JRRC代表理事 川瀬 真
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