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JRRCマガジン No.392 2024/10/31
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◆今回の内容
【1】JRRC事務局だより 国際複製権団体連合 (IFRRO)の紹介
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皆さま、こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。
今日10月31日は「日本茶の日」
1192(建久2)年のこの日、臨済宗の開祖・栄西が宋から帰国し、茶の種子と製法を持ち帰ったことから記念日が制定されたそうです。
さて今回は当センター常務理事であり国際業務を担当しております壹貫田の「国際複製権団体連合 (IFRRO)の紹介」をお届けいたします。
◆◇◆━【1】JRRC事務局だより━━━━━━━
国際複製権団体連合 (IFRRO)の紹介
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みなさんは、国際複製権団体連合 (IFRRO: International Federation of Reproduction Rights Organizations) という国際組織をご存知でしょうか。おそらく、ほとんどの方にとってはなじみの薄い組織だと思いますし、あるいは初めて聞いたという方もいらっしゃるのではないかと思います。
我々の公益社団法人日本複製権センター(以下、JRRC)は、1991年9月に日本複写権センターとして産声を上げた後、1998年10月に社団法人に、2012年4月に公益社団法人に移行しましたが、実は1993 年10月には早くもIFRROに加盟しています。
このIFRROという団体は、公的な機関から独立した非営利の会員組織として、 加盟する複製権団体(RRO)の協力により、テキストや画像著作物の複製権をはじめとした権利の集団的・集中的管理を国際的に促進しており、世界85カ国以上から150以上のRROが加盟しています。またそれらのRROは、何百万人もの著作者(文芸作家やビジュアルアーティストなど)をはじめ、書籍、雑誌、新聞等の出版社を代表しており、全体で見るとかなり大規模な組織であると言えます。
JRRCは、一言でいうと、新聞、雑誌の記事、学術論文、小説、美術作品、写真、イラスト、漫画等の著作権のうち複製権等を集中管理している公益団体ということになりますが、こうした集中管理団体は、世界中の国々に存在しています。もちろん、一言で集中管理団体といっても、著作権に係る長い歴史と文化を有する欧州各国やコンテンツビジネスが盛んな米国と、最近になって著作権の集中管理を推進し始めた東南アジア諸国といった国々とでは、その成熟度に大きな違いがあります。しかし、だからこそ、IFFROのような国際組織が率先して活動し、各国の実情に応じた集中管理団体としてのあるべき姿を模索し、その実現に向けて協働していくことが求められていると言えます。とりわけ、GAFAMといった国際的なプラットフォーマーと対峙していくためには、一国の集中管理団体だけで立ち向かうには限界があります。また、生成AIといった新しいテクノロジーが急速に進化し、国境を越えて利用されるようになった今日では、IFFROの役割はますます重要になってきていると言えます。
さて、RROの役割について、少し掘り下げてみたいと思います。RROとは、IFFROの定義によれば、「著作権で保護された著作物へのアクセスを提供し、これらの著作物の複製および特定のデジタル利用を可能にすることにより、著作者および出版者の個々の権利行使が不可能な場合に、著作者および出版者に代わって行動する組織」ということになります。
このメルマガの読者の皆さんは、著作権の機能や著作権制度のあらましについて既にご存知だと思いますが、率直に言って、著作権法を正確に理解し、著作権侵害を起こさないように著作物を利用することは、一般の人にとってはなかなかハードルが高いのではないかと思います。権利制限規定があったとしても、それらの規定の適用範囲は(大陸法系の法令を前提とする日本では)利用主体や利用目的などが限定的に規定されているため、権利制限規定にそぐわない利用を行うと著作権を侵害する可能性があります。
そのため、行政機関はもちろんのこと、一般の企業・団体が著作権を侵害しないで、安心して著作物を利用するためには、コンテンツの提供者と契約を結び、適法に利用することが求められますが、世の中にあまた存在する著作権者や団体と個別に利用契約を結ぶことはあまり現実的ではありません。このような問題を解決するべく、RROが契約のワンストップ・サービスを提供することで、交渉コストを大幅に下げ、コンプライアンス違反を回避することが可能となるのであって、RROという存在は、今日ますます欠かせないものとなっていると言えます。
話をIFRROに戻しましょう。先ほどIFFROが果たす役割はますます重要になると述べましたが、IFFROの役割を一言でいうと、世界中にあるRRO間や、創作者、出版者、およびそれらの団体間の協力を促進することにあると言えます。そのため、IFRROは日頃からメールで情報発信を行うとともに、会員相互の交流促進や情報交換などを目的とした年次総会やリージョナル会議、各種のウェブセミナーを積極的に開催しています。また、内国民待遇の原則の下、権利者と利用者の間で効率的かつ効果的な利用許諾条件や価格設定の在り方についても研究を行っています。インターネットを通じて世界中で瞬時にコンテンツが共有・利用される時代ですから、プラットフォーマーとの対峙だけでなく、利用者にとってコンテンツ流通の在り方について相応の戦略・戦術の強化と共有が求められているのです。
IFRROは、近年では特に、①アドボカシー (国内、地域、国際的なロビー活動や法改正に関する会員支援や、コンテンツの有償利用の重要性に対する認識共有のための会員の取組支援)と、②キャパシティビルディング (IFRRO加盟国および新興経済国における集中管理環境の構築・整備や、ビジネス、データ、テクノロジーに関するリソースの提供(WIPOとの協働)等を通じた会員支援)の2つを優先的戦略事項として推進しています。
前者に関しては、例えば直近の事例としてカナダのものがあります。これは、2018年にカナダ・オンタリオ州の教育委員会および教育省(ブリティッシュコロンビア州とケベック州を除く)が、著作権管理団体Access Copyrightに対して支払った教育現場における著作物使用料を返還するよう求めた訴訟に関して、2024年2月にカナダ連邦裁判所が過払いとされる約2,550万カナダドル(約28億円)を返還するよう下した判決に対し、IFFROとして遺憾の意を表明するとともに、フェアディーリング規定の適正な適用や法廷損害賠償制度の構築といった法的措置をとるようカナダ政府に要求した事例であり、このように加盟国での懸案事項に対して、IFFROのメンバーが結束して取り組んでいます。また、後者に関しては、近年では特に、東南アジア諸国における集中管理体制の構築に取り組むとともに中東各国の取組を支援するなど、既に集中管理が根付いている欧州や米国以外の地域におけるRROの強化を推進しています。
さらに最近では、生成AIを巡る議論が極めて活発に行われています。ここ数年は年次総会でも地域総会でも、必ずといっていいほど、各国の生成AIを巡る法制度の紹介や政府と民間セクターの動きに関する情報共有や、また学者や弁護士、政府職員を招いて生成AIビジネスへの対応策についての検討が行われています。
著作権を巡る産業は、先進国の国内総生産(GDP)の約4~6%を占めていると言われています。コンテンツビジネスは、多くの国において急成長している部門であり、新しい雇用を創出する最も重要な部門の一つであると言えます。加えて、日進月歩の勢いで発展しているデジタル環境下においては、商品やサービスを購入する主要なチャンネルとしてインターネットが日常生活に溶け込んでおり、テキスト、音楽、イラストなどの著作物の利用は、アナログ形式でもデジタル形式でも飛躍的に増加しています。
社会の発展にとって、芸術作品や文学作品、新聞記事、学術論文等に円滑にアクセスできる環境が整っていることは極めて重要です。著作物の利用者にとっては、円滑で容易な権利クリアランスは、許諾を得て使用料を支払うための重要なインセンティブとなる一方、権利者にとっては、書籍や新聞、楽譜、雑誌といった知的財産から重要な収入を得ることにつながります。しかし、現実には、テキストや画像の著作物の無断利用は蔓延しているといっても過言ではありません。
私は、著作権侵害を巡る状況を、よく「オセロ」に喩えて説明します。悪意に満ちた著作権侵害行為を根絶することは現実的には難しいかもしれませんが、一方で多くの利用者の皆さんは気づかないうちに違法に利用している場合がほとんどだと思います。そのため、無断利用が蔓延しており、著作権版のオセロ盤は黒だらけといったところでしょうか。しかしながら、行政機関や教育機関といった公的な機関はもちろんのこと民間の企業や団体も、コンプライアンスが厳しく求められる今日においては、適正な対価を支払った上で、安心して著作物を利用したいという気持ちは強いものがあります。
こうした気持ちを受け止めるためにも、一元的な窓口であるRROが、適切な価格設定の下、分かりやすい利用許諾条件を示していくことが求められます。集中管理を進めていくことによって、著作物の利用がより簡便に、かつ円滑にできるようになり、違法行為(オセロの黒)が適法行為(オセロの白)に裏返っていくことにつながっていきます。違法行為の蔓延を嘆くばかりではなく、どうしたらオセロの駒を黒から白に変えて、オセロ盤を白いっぱいにできるのか。そんな視点も大切ではないでしょうか。
JRRCとしても、先にご紹介したIFFROの役割がより効果的なものとなるよう取り組むとともに、 IFFROで得られた知見等を積極的に活用し、時代に合ったサービスを提供し続けていきたいと考えています。
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